懐古書架① 「二十歳の原点」(高野悦子著)

 高校三年のときに初めて手にして、その後何度も読み返した本。

 二十代の終わりになるまで最も影響を受けた一冊だと思う。


「独りであること、未熟であること、これが私の二十歳の原点である」


 この美しい一文が十八歳の自分の目を覚まさせ、同時に長く苦しい迷走の始まりを告げた言葉だった気がする。精神的な成長を自分の意志で掴み取らないと未来がないと教えられた。


 著者高野悦子さんは大学三年の六月に自死した。彼女が死の二日前に書いた「旅に出よう」で始まる詩を初めて読んだときは、全身が震えてしばらく自失状態になった覚えがある。


 彼女が感じた悩みや苦しみ、あるいは日常の出来事に直面した時の想いには、当時の自分では及ぶべくもない深い考察と広い視野があった。だから今の自分のままでは駄目だ、もしもこのまま幼稚で未熟で未発達な精神のまま年齢だけを重ねてしまったら、自分の未来には寂しさしか残らないと思ったものである。


 若い時に読んでおくといいかもしれない。


2023/09/11


 


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