静かで独特の語り口により世界全体に不思議な雰囲気を醸し出す本作。
紙の町を舞台にしたシリーズですが、今回は紙の町を出て都の教会へと二人の小坊主が勉強に行くお話。
元魚屋の小坊主と、学校では秀才の小坊主。
道中では親切な老人に出会うも、その人は実は……。
都ではサーカスが開かれ『犬の先生』や『軽業坊や』が演目を披露。
喧騒のなかで二人の小坊主は仲間とともに、結婚式の手伝いなど徳を積む勉強を始めるが、怪しい影も蠢いて……?
登場人物は『魔女』や『けだもの』、『活字拾いの親方』など固有名詞がありません。
そこには名も無き人々の日常を描くという姿勢があるようです。
何でもない人々かもしれませんが、その人達は確かに世界で生きているのだと思わせてくれる優しく不思議な描写が魅力的。
シリーズもので過去作は短編で読みやすいため、合わせて読むと「この人ここで出てくるんだ!」という楽しみ方もできます。
不思議な世界に浸りたいならば最高の一作です!