村ウダ3

水が出んのかどうか、ちょっと地形を確認したいが。


「そんちょ~、地図とかある?」


「ありませんな」


「ふーむ・・・空飛べる魔法とかないん?」


「それは・・・寡聞にして存じません」


うーん・・・あ、ジャンプすりゃいんじゃね?


「いーよっ、と!」


石持って降りたときはフカフカのマシュマロみたいに感じた地面だったが、やはり重量比のせいだったのか盤石の如き足場感で無事離陸できた。


「うおおおおお!!!!」


一気に地面が遠くなり空が暗くなってゆく。


「はぁああああ!!!!!第二宇宙速度超えてたらやべええええええ!!!!!!」


衛星の軌道には乗れるのだろうか・・・じゃがそこらへんて大気ないよなやっぱり。


下を向けば雲と大陸と海があるだけで村なんて見える所ではなかった。

つーか、雲があんな遠いんだが・・・


ふと横を見ると、宇宙の暗黒と青い海の境界で大気が白く輝いている。


「ひょっとして・・・このまま生物と鉱物の中間の生命体となって永久にこの星の周りを回ることになるのか・・・」


帰還船やガンダムが大気を燃やしながらつっこんでくるのにはワケがあって、なんでもそれなりの速度でつっこんでこないと大気に押し出されてしまうとかいうハナシをきいたことがある。


となりのオタクから聞いたのかなろう小説で読み齧ったのか忘れたが、今、体感でわかる。


だって浮いとるし。


このままフヨフヨ浮きながら宇宙に放り出され、数千年後の未来人に即身仏状態で回収されるのか・・・


聖衣だなんだつってたポンチョがフワア~と持ち上がりはじめ、慌てて押さえる。


しかしまた裾から広がってゆき、クラゲのようになったまま降りる気配がない。


これはアレか、ついに無重力のとこまで・・・


おわった・・・と思ったところで、目の前が翻ったポンチョで見えなくなる。


徐々にバサッ、バサバサッ、とはためき始め、下から風を感じるようになる。


「助かった・・・戻れそうじゃ」


あ~~~よかった。


・・・・・


・・・・・・・



・・・・・・・・・・・



「いつまで落ち続けるんじゃ・・・・・」


空が鮮烈なる青に戻ってから10分ほどか、バサバサ状態のままポンチョと大気に体を撫でられ続けている。


「風の感じからすると160キロくらいかのぉ~・・・バイクじゃ息苦しく目も開けてられんかった記憶があるが全然平気じゃな・・・」


160キロで思い出したがワシらの一回り上のオッサンらはノーヘルにゴーグルだけでカウルもついてない裸バイクで五時間くらい巡行ツーリングしてたんだよな・・・風を感じるとかいうレトリックの実態が風圧を筋肉でねじ伏せ呼吸を肺活量にまかせ維持し続けるという苦行だった世代を思い出し、ちょっとうらやまカッコいいかもと感じないでもなかった。


しかし地上まで何キロあんだ一体。


なんとなく途方に暮れかけたあたりで思い出した。


「そーじゃ、地形じゃよ地形。思い出とか浸ってる場合じゃなかったわい。えーと、雲のカタチは・・・」


雲の形から気圧の波を、地形から水の流れの予想を立てる。


「・・・うん、わからんわい。じゃけど山の方じゃこっち側に雲があんだし掘れば出るじゃろ」


なんか大陸の下の方に日本列島ぽいのが見えたのが気になるが今はどうでもいいか。



雲のカタチが見えなくなくなってちょっとしたとこで地上に到達した。


気持ち悪いくらい同じ場所に降りれた。


地面は1センチくらいへこんだだけじゃった。


そんで村長とオギュたそらが呆けて立っていた。



「・・・とりあえず掘ってみなきゃわかんねえわw」




ずっと待ってたのかこいつら・・・

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回復魔法とかで恩着せがましく助けて良い気持ちになるやつ プリオケ爺 @hanagehanage

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