マクナマラの誤謬 🎞️

上月くるを

マクナマラの誤謬 🎞️





 録画しておいて欠かさず観ている『映像の世紀バタフライエフェクト』の最新版はアメリカ国務長官としてベトナム戦争を指揮した天才「マクナマラの誤謬ごびゅう」でした。


 なぜいまベトナム戦争なのか、ドキュメント映像を淡々と報じるだけの番組の主旨は今回も遵守されましたが、ロシアのウクライナ侵攻と無縁でないことはあきらか。


 すなわち、緻密な計算を積み上げ絶対的な勝利を確信していても、もっとも大切な民衆の心を忘れていると、真逆の結末を招く……警告としての報道と推察されます。




      💚




 この場合の民衆とは、まず共産ドミノの砦とされた北ベトナム人民のそれであり、ついで無差別爆撃等により多くの犠牲者を出した南ベトナムのそれでありましょう。


 北はもとより侵略者への憎悪と復讐に比例して拡大増幅する愛国心に支えられた「ベトコン」(南ベトナム解放民族戦線)、嘘に騙されていた米国本土の反戦運動。


 それらの熱い人心が予想外の化学反応を起こして米軍を撤退に追いやったのです。

 現在のウクライナ情勢にも、まったく同様なシチュエーションが当てはまるはず。




      🗾




 生まれついての神童で、母校ハーバード大学に招かれたロバート・マクナマラは、1945年、28歳のとき、日本の上空にB-29機の大量投入を提案したそうです。


 上空からの爆撃は命中率が低いので、綿密な計算で、コストを抑えて最大の効果が得られる無差別爆撃を推奨した……その結果、46万の日本人が犠牲になりました。


 その太平洋戦争後はフォードに入社、社長の椅子が決まった直後にケネディ大統領の要請で国防長官に就任すると、まずベトナム駐留米軍兵を大幅増員したそうです。


 そして、得意の計算で勝利への策として打ち出した「ボディアカウント作戦」は、米軍1に対してベトナム軍10の死者数のキープという、なんともシンプルなもの。

 

 自らの作戦に固執するあまり部隊対抗コンテストまで行ったので、いきおい将兵は手軽な民間人の殺戮に走り、ベトナム人民の愛国心をさらに煽ることになりました。


 


      🗽




 ケネディ大統領のあとを継いだジョンソンが、遅まきに撤退を決意したマクナマラの進言を受け入れなかったのは「敗戦の将になりたくなかったから」だそうで……。


 最終的に、機密文書公表による米国内の反戦運動膨張がベトナム戦争を終結させたのですから、1:10に拘泥した天才マクナマラの誤謬を思わずにはいられません。


 にも関わらず、のち世界銀行総裁を務めた天才は93歳で死去するまで自分の過ちを認めなかったそうですから、まさに天才と☆◇は隣り合わせなのかも知れません。


 さらに、ご無礼ながら極めてシンプルなお顔立ちから思うのです、決して思慮深い人物ではなく、むしろ煽てや調子にのりやすい、中身の軽いタイプだったのでは? 




      🦎




 あの手の男性には気をつけなきゃね……あらためて気を引き締めました。(笑)




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マクナマラの誤謬 🎞️ 上月くるを @kurutan

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