第五話

 ソフィアが鳴らした指の音に反応するように光の粒子は消えて、ドラゴンが動き出す。


 後ろにいたレオルも同じように動き始めたようで、服装の変わったソフィアを見て困惑したように呟いた。


「ソフィア……?」


「待ってて、レオル。絶対守るから!」


 ソフィアはレオルにそう声をかけると、ステッキをレオルに向ける。


「守って、ファイア!」


 ステッキの先が赤く光、レオルの身体を丸い球体のようなものが包む。


 そうしてレオルの無事を確認して安心したソフィアは、ドラゴンへと向き直り、ステッキをドラゴンへと向けた。


「レオルを狙う悪い子は、私ソフィアが許さないんだから!」


 すっかり口上など忘れてしまったソフィアは、クルクルとステッキを回して、ゆっくり目を閉じる。


 このドラゴンを倒すにはどうするのか、考えた結果ソフィアはあることを決めて口を開いた。


「レオルを狙う悪い子は、みんなケーキになっちゃえ!」


 甘くとろけるレオルの笑顔を思いながら、ソフィアは言葉を続ける。


 ステッキには正式名称があった気がするが、この際なんでもいいだろう。


「いっけーー! マジカルステッキ、あのドラゴンをチョコレートケーキに……なあれ!」


 ステッキの先がキラキラと輝き、ドラゴンへと光が降かかる。


 光が輪を描いてドラゴンを包み込むと、そこには小さなチョコレートケーキが転がっていた。


「終わった……」


 安心して力を抜くとソフィアが元の姿へと戻る。


 ステッキも一緒に消えてしまった。


 それと同時に、レオルを包んでいたものも消えて、レオルがソフィアに向かって走ってきているのを見た。


 そして、レオルはソフィアに抱きつくと息を吐く。


「どうなるかと思ったよ……」


「レオル……」


 レオルはゆっくりと身体を離して、ソフィアの頬についていた泥を指先で拭って微笑んだ。


 その顔を見た瞬間に、ソフィアは全身の力が抜けてへたりこんでしまった。


「どうしたの!?」


 慌てるレオルに真っ赤な顔をしたソフィアは、俯いたまま声を絞る。


「レオルかっこよすぎ……すき……むり……」


 レオルのこと好き好きメーターが限界に達したソフィアは赤い顔を隠せずに、レオルに向けて顔を上げるとゆっくりと呟いた。


「好きすぎて死んじゃう!」


「死なないでソフィア!」


 慌てふためくレオルを見て、ソフィアは少しだけ吹き出した。


 私、絶対レオルのこと守るから。


 ソフィアは新たにそう決意をして、太陽の光に照らされて輝いて見えるレオルのことを見たのだった。

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私、守ってみせます!〜火の国の姫と水の国の王子〜 澤崎海花(さわざきうみか) @umika

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