第23話 尋問

俺が殴り飛ばした結社のメンバー。そしてアニーの手で剣を尻に突き刺された人物。フードを外したら鋭い目つきの髭ずらのおっさんだった。


髭のおっさんの尻の傷口は浅いらしく、出血は止まっているようだ。


俺たちは、こいつ自身が持っていたロープで腕を縛り、座らせたが、ずっと無言で、とても有益な情報を引き出せそうな人物ではなかった。


「この男、おそらくここにいるメンバーで一番の手練れだ。その証拠に、こいつの装備だけ他の連中と少し違う。どれも扱うのに相当の腕が必要なものばかりだ。」


アリスの話を聞いて少し申し訳ない気分になった。


親父直伝の究極必殺技のアッパー(不意打ちバージョン)でまさか一撃で倒せるなんて思ってもみなかった。


色々訓練してきてやりたい事たくさんあっただろうに…。ごめんな…。




「まぁ、これかなり高く売れそうだわ…。アニー、これと同じやつ集めてきて。」


「らじゃー!」


リーシャとアニーが結社のメンバーの死体を物色している中、俺とアリスとジュリアスの3人で男の口をどうやって割らせるかという話合いをした。


「こういうやつは、普通のやつと違って意思が固いからな。どうせ遺物のためなら死んでもいいとか思ってんだろ。」


「しかし、どうにかしてこいつから情報を引き出さないと遺物がどこへ行ったかが分からなくなってしまう。もうすでにカンブリアを出発してから5週間が経過しようとしている。父上の事もある。また1から手がかりを探しているような時間はない。だからどうにかしてこいつに口を割ってもらう必要がある…。」


「そうだな…。う~ん…どうしたもんかねぇ…。」


考えても考えても全くいい方法は浮かばない。今のところ手がかりとなりそうなのは、こいつらが持ってた結社のメンバーの証明ともなる例の聖金貨と、十字架のネックレスだけ。


「なぁ、もういい加減なんか教えてくれよ…。」


「…。」


「はぁ…。」


男は一言も喋らない。



「なぁ史郎、お前の魔法でなんとかならないのか?」


アリスが俺に尋ねてきた。


「何の話?」


「さっきお前がこの連中に仕掛けた魔法の事だ。」


「…。」


どうやらアリスは俺の嘘で言った事が本当だと思っているらしい。


「あのなぁ、あれは敵の隙をつくための嘘だって…。」


「なに…!?じゃあ、結界は?」


「結界なんかねーよ。お前、監獄の時は結界を感じ取れたんだから、俺の言ってる事が本当かどうかわかるだろ。」


「しかし、お前は高次元の存在以外は感知できない、みたいな事を言ってたじゃないか…。まさか、あれも嘘なのか?」


「当たり前だろ…。」


それくらい簡単に分かりそうだけどな…。


「ま、そういう事だ。だから俺には魔法でこいつの口を割らせるとかはできねー…。」


「そうか…。」


アリスは俺が魔法を使えない事を知るとあからさまにガッカリしたような雰囲気を出していたので悲しくなった。


「ねぇねぇ、魔法って言えばさ、彼女に任せてみたらどうかな?」


ジュリアスが言った。


「彼女?」


「えっと、リーシャちゃん?」


「ああ、あいつか…。」


そういえばさっき、結構戦闘で魔法ぼんぼん使ってたよなぁ…。もしかしてあいつ、グランドマスターの冒険者ではないけど、そこそこ実力のあるやつなんじゃ…。


というわけで、リーシャを呼んできた。


「そういう訳だ。」


「私に期待されても困るんだけど…。」


「そこを何とか頼む。なんでもいいからさ、なんかお前の魔法でこのおっさんの口を割ってくれ。」


俺が頼み込んだら、リーシャは面倒臭そうに、「しょうがないわね~。」と言って承諾してくれた。



「それで…、こいつに何を聞きたいわけ?」


リーシャが言った。


「え?えっと…、遺物が運び出された場所だけど…。」


「分かったわ。」


リーシャはそう言って、捕まえた男のところに行って、その男の耳元で何かを喋った。


すると男は何やら頷いて、それからリーシャは戻って来た。


「ほら、聞いてみなさいよ。」


「え?お前何したの?」


「別に。」


「?」


リーシャはそう言って再び死体あさりに戻ってしまった。


よくわからないが、俺たちは男のところに行った。




「よし、いいだろう。一つだけ質問に答えてやる。」


「????」


さっきまで黙りこくっていた男が突然自分から話し始めた。


リーシャはまたアニーと死体を物色し始めた。


一体あいつ、何を言ったんだ…。


「お前たち遺物をどこに…。」


「それは答えられない。それ以外なら答えてやる。」


どうやら直接場所を聞くのは難しそうだ。


なら何を聞こう。


「じゃあ、お前らのアジトは?」


「ユーロレンシア、帝都ロンディニウムのロッキングウェイストリートにクインティンという店がある。」


「ユーロレンシア?お前らのアジトは帝国にあるのか?」


「…。」


「おい、そこが結社の本拠地なのか?」


「…。」


男はそれ以降何も喋らなかった。

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異世界に転生したんですが、トレジャーハンターになりました。 お寿司丸 @castlecrash

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