地球半周の歌会

✿くろの✿

地球半周の歌会


宵風よいかぜの花火の香りで振り返る

       あの日の君と僕がいた夏


手を重ね最後の花火なつかしき

       逢瀬のあかり消えし夜かな




毎日の君の送りし変顔に

       ひとり笑顔で ひとり寂しく


食べ物と一緒に届く手のひらの

       あなたはいつもすまし顔だね




満天の異国の星を仰ぎ見る

       故郷の君はいま何をせん


あの人のもとに連れてけアルタイル

       焦がれし一縷いちる、流星を描く




「WomanはProblem」という証明に

       うちは例外……とも言い切れず


「誰やねん?」お前と写るパツキンは?

       静かにツっこむ。私、カワイイっ!




回線よ。あと少しだけ、見せてくれ。

       あくび姿の彼女の顔でも


意地悪の神はZoomを固まらせ

       半目のままの君と寝る夜




不機嫌な君への距離に手を伸ばし

      「どうしたの?」以外の言葉を探さん


切りすぎた前髪つまみ凹む日の

       あなたの言葉は砂糖菓子だね




三度目のワクチン痛にうなされて

       雨音に君のダンスの夢見る


夕立の作りし虹の大輪と

       鏡の水たまりにジャンプ!




「二日後の六時半に東京で」

       既読のままの謎の沈黙


……え? 急に!? 

   ……そりゃ逢いたい気持ちはあるけれど

           前髪押さえて鏡と相談




いざゆかん! 雲海超えよ! アルタイル!

       二年ふたとせよりも長き旅路よ


「単位より大事なものがありましたっ!」

       「訳は聞かじ」と送り出す師よ




雑踏の六時三十三分は

       長針が後ろから短針に触れる


三分の遅刻に心は千々乱れ

       不意に後ろから来た静寂


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