第1部完~どうしてこうなった?~

 途中でトールやメルルを拾い、王城へ向かう。


「トール様、メルル様、お久しぶりでございます」


「よっ、カエラ。相変わらずきっちりしてるな」


「お、おはようございます。はい、カッコいいですっ」


「いえいえ、私などまだまだです」


 ……誰ですかね? このキリッとしたできるメイドさん?

 今朝、俺のパンツを嗅いでいた方とは思えませんねっ!

 相変わらず、猫かぶりが激しいこと。


「アレクは良い従者を持ったな。そういや、体は平気か?」


「まあ、どうにかね」


「それなら良かったですっ」


「二人とも、ありがとね。さてさて、面倒だけど行こうか」


「……謁見を面倒とか言えるお前はすげぇよ」


「ほ、ほんとですよっ! 僕なんか緊張しちゃって……」


「うーん……緊張はしないかなぁ」


 俺が第二王子ということもあるけど、多分前世の記憶があるからだ。

 王様が偉いと言われてもピンとこないし、前世で御偉いさん方と接してきたし。


「ははっ! やっぱり、お前は大物になるな」


「ふふ、そうですね」


「そうかな? 俺としては静かに過ごせれば何も言うことないんだけど」


 すると、三人が俺をじっと見つめて……。


「「「それは無理」」」


「ちょっと!?」


「そいつは無理があるってもんだ」


「やれやれ、これだから御主人様は」


「ぼ、僕でもわかりますよっ」


「……いや、俺は負けない」


 ほどほどに立ち回って、ほどほどに静かに過ごすんだい。

 そして王城の前でカエラを残して馬車を降り、城の中を歩いているとセレナと出くわす。


「よう、セレナ」


「アレク……! 身体は平気なの?」


「ああ、二人にも言われたけど平気だよ」


「ほっ、よかったわ」


「これで揃ったかな……んじゃ、いきますか」


 四人揃ったので、そのまま謁見の間に向かい……赤い絨毯の上を進んでいく。

 周りには王太子と母親、それに役職付きの貴族の方々がいる。

 本来は決まりとして顔を下げなくてはいけないが、今回はそういうのは気にしなくて良いと言われた。

 メルルもいるし、そっちの方が助かるね。


「いらっしゃい、アレク君よ」


「はっ、国王陛下」


「そうかしこまらなくて良いよ。私と君の仲じゃないか」


 はて? どういう仲だろう?

 なんだろ……何か途轍もなく嫌な予感がする。


「は、はぁ……?」


「まずは、ご苦労だったね。こちらの騎士団の不手際で申し訳ない。彼らには、然るべき罰を与えたから」


「わかりました。それならば、俺からいうことはありません。不幸中の幸いですが、犠牲者も出ていないので」


「そうだね、そこは大きい。何より、国際問題に発展しかねなかった。いやはや、アレク君には感謝するよ」


 あんまり褒めないで欲しいんですけど? ……王太子と母親の視線が痛いので。

 周りの貴族達も、やたら俺を見てくるし。


「いえ、俺の力ではありません。それもセレナ様やトール殿、そしてメルルさんのおかげです。俺一人の力などたかが知れてますよ」


「……ククク」


「国王陛下?」


「いや、すまないね。期待通りの答えが返ってきたから。さて、長々と話しても仕方ないか。端的に言うと、君に褒美を与える。そこの三人に事前に確認したところ、アレク君にあげてくださいとのことだったから」


 俺はとっさに、後ろにいる三人に視線を向ける。

 セレナは嬉しそうに微笑み、メルルはキラキラした目で見て、トールはこっそり親指を立てている。

 ……いやいや! 聞いてないんですけどォォォ!?


「い、いえ、それは四人が……」


「君には魔剣ミストルティンを授けよう」


 魔剣ミストルティン。

 それは世界にある、六の神器の一つ。

 魔法のない世界において、超常現象を起こすことができる唯一の武器達。

 それを授かった者は、何かしらの偉業を成し遂げているとか。


「い、いやいや! そんなものはもらえませんって! というか、そこまでのことは……」


「ほほう? 我が娘の命がそこまでのことじゃないと? それに他国の姫に、次代を担う侯爵家の者もいる。生徒の中には、ここにいる貴族の子息達もたくさんいた」


 ふと周りを見ると、貴族達の一部が微笑んでいた。

 どうやら、彼らの息子や娘もいたらしい。

 もちろん、王太子達は凄い顔をしてるけど。


「そ、それはわかりますが、そもそもミストルティンが認めないですよ」


「ふむふむ、その可能性はあるね」


 神器は持つ者を選ぶと言われている。

 人によっては、触れただけで痛みを感じるとか。


「決まりだね。それでは、ロラン」


「はっ」


 すると、近衛騎士であるロランさんが、俺の前に鞘に入った剣……というより、刀を持ってくる。

 それは箱に入った状態で、ロランさんも触れていない。


「さあ、アレク殿」


「い、いやぁ……」


「ここまできたら無駄ですぞ」


「で、ですよねぇ〜」


 仕方なく刀に触れると……刀が光り輝く!


「くっ!?」


「さて……どう見ても認めているね」


「へっ?」


 いつの間にか俺の腰には、ミストルティンが収まっていた。

 俺が呆けていると、ロランさんが俺の耳元に近づき……。


「我が王は、王太子を定めているが決めてはおりませんからね?」


「はい? それってどういう……」


「おおー! ミストルティンが選んだぞ!」


「やはり、天賦の才があったのか!」


「これはこれは……」


 貴族達が騒ぐ中、ロランさんが去っていく。

 そして国王陛下が手を叩くと、あたりが静まり返る。


「気持ちはわかるが静かに。さて……よく似合ってるね。では、そのミストルティンはアレク君に預ける。気に入らなければ、魔剣は勝手に帰るから。それでは、これにて終わりにしようか」


「は、はぁ……」


 はっきり言って、何がなんだかさっぱりわからない。


 一つだけ言えるのは、何やら面倒な予感しかしないということ。


 ……どうしてこうなったァァァァ!?











 ~あとがき~


 皆さん、おはようございます。


 読者の皆様、最新話まで読んでくださり、誠にありがとうございます。


 さて、これにて第1部が終了となります。


 ひとまず、ここまで書けてホッとしております。


 皆さんお気づきでしょうが、この作品のテーマは『どうしてこうなったァァァァ!?』でした。


 それを意識しつつ、毎日更新を続けて二ヶ月半くらいですか……いや、中々大変でした。


 少しオーバーしてしまいましたが、私は10万字がプロローグだと思って物語を作るタイプの作家です。


 書籍にすると、約1巻分の文字数です。


 故にコメディから、終盤にかけてはシリアスにならざるを得なかったり……まだまだ、色々と勉強ですね。


 これが受賞なり打診がくるかはわからないですが、とりあえず更新頻度を下げさせて頂きます。


 書籍化作業が、いよいよ大詰めを迎えるおりますので……申し訳ない。


 最後に……少しでも面白いと思った方、よろしければフォローと下にある評価ボタン(⭐︎)を三回押してくださると嬉しいです。


 それでは、第2部が投稿される際はよろしくお願いいたします。







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アラフォーの俺、公爵家嫡男に転生 おとら @MINOKUN

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