第66話 その後の話
校外学習を終えてから二日後、ようやく身体が元の状態に戻った。
帰りの馬車辺りから痛みがきて、それから家に帰ってからも酷かった。
マリアには泣かれるし、親父にはまだまだ甘いとか言われるし。
幸い、学校は三日間の休みがあったのでどうにか間に合ったけどね。
「ふぅ……よし、大体元通りかな」
「ふふ、おはようございます。お手伝いした甲斐がありましたね?」
「……お手伝い? あれか? まさか、身体が動かない俺を襲おうとしたことかな?」
俺の身体が動かないことをいいことに、アレコレと世話を焼いてきて大変だった。
なんとか、俺の貞操は守り抜いたけどねっ!
抜かせてもないからねっ! ……アブナイアブナイ、下ネタ厳禁。
「いえいえ、多少は動かないと筋肉はほぐれませんから。ああして襲えば、動かざるを得ないでしょう?」
「相変わらず。ああ言えばこう言う奴だなぁ……はぁ、まあいいや。んで、何か知らせが来たんだっけ?」
「はい、王城から招待状が届きました。今回の事件についての説明かと。群のボスを倒したし、ご主人様が当事者ですから。そして、第二王子なので国王陛下と謁見する手間が楽なので」
「うげぇ……めんどい。そういうって、ノイス先生とかセレナでよくない? あの二人だって、楽に謁見は……出来ないか」
「そういうことです。そういうのにうるさい人たちはいますからね。ご主人様がいるなら、その他としてついては来れますが」
前も言ったが、王女の立場はそこまで強くない。
ノイス先生も引退した身で、今はただの先生だし。
これがプライベートだったら、全然構わないんだろうけど。
「んじゃ、面倒だけど行きますか」
「まずは、朝ごはんを食べてからですね」
準備を済ませたら、食堂に行く。
すると、マリアがタタタッと駆けてくる。
「お兄様!」
「ゴフッ……妹よ、朝からタックルはキツイ」
「あっ、ごめんなさい……えへへ、お兄様だぁ」
「……へいへい、好きにしなさい」
俺が家に帰ってきてから、マリアはこんな感じである。
家族を亡くすことを恐れているこの子からしたら、連絡が来るまで生きた心地がしなかっただろう。
という訳で、可愛い妹のタックルは受けとめる……それが兄の義務っ(キリッ)
「ほほ、良かったですな」
「ぐぬぬ……もう一度ベッドに沈めてやろうかのう」
「やめてっ! 死んじゃうからっ! 妹よ離れてくれ、兄はまだ死にたくはない」
「もう、仕方ありませんわ」
そして、全員で朝食を食べる。
セバスと親父もいて、久々に家族が揃った形だ。
俺は二日間、ほとんど寝たきりだったし。
「アレクよ、改めて良くやった。王族としての義務を果たしたそうじゃな」
「急にどうしたの? 気持ち悪いんだけど……」
「なんじゃと!?」
「わぁー! ごめんなさいっ! 」
「旦那様、落ち着いてくださいませ。アレク様もお気持ちはわかりますが、今は我慢してくたさい」
「セバスよ? 一言多くないか?」
「ご自分の普段の行動を思い返せばいいかと。では、お食事も終わったのでお茶を用意しますか。そのあとで、ゆっくりお話しすればいいかと」
「ぐぬぅ……わかったわい」
そして、カエラとセバスがお茶を持ってくる。
それを飲んでから、一息つく。
「んで、どうしたの?」
「別にそのままの意味じゃ。ノイスから聞いた、お主がいかに勇敢に戦ったかと」
「別に大したことないよ。俺は大切な人達を死なせたくなかっただけ」
「ふんっ、生意気言いよる……アレクよ、お主にそんな気概があったとは知らなんだ。いやはや、儂も歳をとるわけだ」
そういい、なにやら上を見上げてしみじみしている。
なんだ? 何かがおかしい気がする……。
「まだまだ元気なくせに」
「もちろん、まだまだ現役だわい。さて、お主の覚悟はわかった。この後の謁見も楽しみにしている」
「はい? どういうこと?」
すると、セバスが扉から入ってくる。
いつの間にか、外に出てたみたいだ。
「アレク様、王城より使者が参りました。そろそろ、行った方がよろしいかと」
「はぁ……わかった。んじゃ、とりあえず行ってくる」
「お兄様、頑張ってくださいね」
「うむ、しっかりやるといい」
三人に見送られ、俺は護衛のカエラを伴って馬車に乗り込むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます