第65話 校外学習最終

翌朝、きちんと片付けを済ませたら、ノイス先生の挨拶で締めとなる。


「皆さん、これにて校外学習は終了となります。色々なトラブルもありましたが、ひとまず犠牲者が出ることなく終わり正直ホッとしております。不幸中の幸いですが、皆さんにとっても良い経験なったでしょう。妖魔はこちらの事情などわかってはくれません。いつ何処に現れ、我々に牙を剥くかはわからないのです。そのことを肝に命じて、今後も励んでください」


「「「はいっ!!!」」」


「いい返事です。それでは、無事に王都に着くまでは気を引き締めていきましょう」


その言葉で解散となり、順番に砦から出て行く。

そんな中、俺たち四人は最後まで残るように言われていたので待っている。


「なんだろ? トールは聞いてる?」


「いや、知らん」


「私もわからないわ」


「僕もです……あっ、なんか兵士の方々がきますよ?」


メルルの言う通り、砦から兵士達が出てきて俺達の前に並ぶ。

そして、隊長であるイアンさんが前に出てくる。


「皆の者、若き勇者たちに敬礼!」


「「「はっ!!!」」」


「あなた方は守られるべき存在なのに、我々の手助けをしてくださいましたっ! おかげで、我々も一兵も欠けることなく生き残ることができました——誠にありがとうございます!」



「「「ありがとうございましたっ!!!」」」


……なるほど、そのために残されたってわけか。

すると、三人の視線が俺に向けられる。

どうやら、俺に返事をしろってことらしい。


「いえ、お気になさらないでください。生意気を言うようですが、王族にとっては兵士の方々も守るべき対象ですから。お互いに協力しあっていきましょう」


「なんと……諸君! 聞いたなっ! 以後も、鍛錬を重ねていくぞ!」


「「「おうっ!!!」」」


「お付き合い頂きありがとうございました。それでは、我々はこれで失礼いたします」


再び敬礼をして、兵士達が砦に戻っていく。

そのタイミングを見計らって、ノイス先生がやってくる。


「すみませんね、付き合わせて」


「い、いえ、少し驚きましたけど」


「どうしてもお礼が言いたいとのことでしたから。もちろん、私もです……本当に感謝いたします」


「いいですって。あんまり持ち上げられても、どうしていいかわからないですし」


「ふふ、そのあたりもシグルドに似ておりますな」


「うげぇ……それは嫌です」


「ほほっ、全く同じセリフを言ってましたな。さて、我々も行きましょうか」


そして俺達も砦を後にするのだった。






……どうやら、無事に済んだようじゃ。


兵士達からの報告を聞き、ようやく人心地つく。


「それでは、失礼いたします!」


「うむ、御苦労じゃったな」


兵士が下がった後、国王と二人きりになる。


「シグルド殿、良かったですね」


「ふん、別に心配しとらんかったわい」


「いやいや、ずっとイライラしてたのは誰ですか? この部屋の椅子は高いんですけどね……」


視線の先には、勢い余って儂が破壊してしまった椅子がある。

アレクいる場所が襲われたと知らせがきて、その報告を待っている間に。


「グヌゥ……」


「グヌゥじゃないですよ、全く」


「煩いわ、生意気な小僧め」


「私にそんな口を利けるのは、この国では貴方くらいですよ……」


無論、儂も他の家臣がいるときは控える。

しかし、今ここには此奴と儂しかおらん。


「なんじゃ? 今から敬語を使ったり、国王陛下とお呼びするか?」


「それはご勘弁を、逆に怖いので」


「ふん、ならいい。それで、此度の不始末をどうするつもりじゃ?」


「それですね……いやはや、困ったものです。そして、私も舐められたものですね。おそらく、騎士団の件には第二王妃の親族が関わっているかと」


「やはり、そうなるか」


何せ王女と第二王子に加えて、貴族の子供達が向かう砦。

事前に調べるのは当然のことだった。

それを、その一派が疎かにしたということらしい。


「ええ、確証はないですが。だからこそ、こちらも責めにくいですね」


「兵士達を叱り付けるのは簡単じゃ。しかし、その尻尾までは掴めんか。ったく、相変わらずせこい家じゃのう。あのカラドボルグ伯爵家の連中は」


「まあ、仕方ありませんよ。伯爵とはいえ、代々続く家柄ですから。顔も広いですし、勢力も強いです」


「しかし、何もせんわけにはいかんぞ? でないと、儂が乗り込みかねん」


こちとら、可愛い息子が狙われているのじゃ。

うちにいるマリアも、心配で泣きそうになっていたし。


「ええ、わかっています。然るべき対応はしますよ。なので、アレク君には英雄になってもらいましょう」


「ほほう? どうするつもりじゃ?」


「ちなみに、アレク君を餌にしてもいいですかね? まあ、発破をかけるという意味もありますけど」


「ふむぅ……まあ、これも彼奴の試練になるか。わかった、好きにするがいい。今のアレクなら平気だろう」


「では、こんな感じで話を……」


「ふむふむ……それは面白いのう」


ある程度、話を聞き終えた儂は、それを許可する。


アレクよ、お主はよくやった。


後は、儂等に任せておくがいい。








~あとがき~


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