第64話 校外学習その十六

 温かい食べ物を食べてると、頭が徐々に回ってくる。


 身体も心なしか、元気になってきた気がした。


 ただし、相変わらず身体は軋んでいる。


 これもチャクラの使い過ぎによる弊害だろう。


「だが……なんとか動けるか。多分、明日の朝は酷いことになるが」


「はは、そいつは仕方ないさ。というより、俺だって明日はこえぇ……絶対に筋肉痛になってるわ」


「僕とセレナさんはともかく、お二人は大変でしたからね。もっとお手伝いできたら良かったんですけど」


「いやいや、ただの役割分担の話だよ。セレナの守りを気にしていたら、俺は攻撃に徹せないし」


「ふふ、やっぱり大事な女の子なんですね?」


「ひゅー、こいつは熱いぜ」


「ちょっと? 二人してからかわないでよ……まあ、大事な幼馴染に変わりはないけど」


 そんな会話をしていると、ドンドンと太鼓の叩く音がする。

 どうやら、校外学習の締めがキャンプファイヤーが行われるようだ。


「おっ、やるんだ?」


「ノイス先生も迷ったみたいだけど、ここはやった方が色々と払拭出来ていいかなって。幸いにも、犠牲者が出なかったこともありますし」


「それに生徒達の自信にもなったらしい。まあ、騎士団の連中にはお灸をすえるとは言ってたが」


「まあ、それは当然だろうね。というか、うちの親父がキレそうだ……」


「……間違いねえ」


 おそらく、死人……が出てもおかしくない。

 というか親父の言う通り、騎士団は随分と怠慢だね。

 仮にも第二王子と第一王女が遠征する場所で手を抜くとか……まさかね。


「アレク君? どうしました?」


「いや、何でもない。んじゃ、俺もいきますか」


「平気か?」


「きついが……あの跳ねっ返り娘を一人すんのは可哀想だし」


「えへへ、優しいですっ」


「それは言えてるな」


「はいはい、わかりましたよ」


 照れ臭くなり、俺はテントを抜けてセレナを探す。

 幸い、あいつは目立つのですぐに見つかる。

 というより、何やら男達に囲まれているな。


「セレナ様! どうか僕と踊ってください!」


「いや、俺と! あの戦場での振る舞い素晴らしかったです!」


「婚約破棄されたなら、我々にもチャンスを!」


「み、みなさん! 落ち着いてくださいませ!」


 普段のツンツン具合は何処へやら、珍しくオロオロとしている。

 そういや、こいつって基本的には男子が苦手だったんだっけ?

 同世代だと、俺とトール以外とは話したことほとんどないし。

 そもそも、第一王女が男とばかり話してたら問題だが。

 普段はあんなだけど、意外と箱入り娘なんだよなぁ。


「はいはい、そこまでだ。悪いが、そいつには先約があるんですね」


「ア、アレク王子?」


「お、お目覚めになられたのですね!」


「ですが、婚約破棄をしたとか」


「アレク!」


 すると、セレナが俺の後ろに隠れる。

 そして、俺の服を握りしめた。


「悪いが、そいつは誤解だ。この通り、こいつは俺に夢中なんでな。無論、俺もだ」


「っ〜!? あぅぅ……」


「そ、そうだったのですか……」


「これは失礼いたしました……」


「あんなに強いし仕方がないよなぁ」


 そう言い、男達が去っていく。

 

 あ、危なかった……テントを出てから、ずっと見られてたし。

 多分、目覚めた俺を誘おうと牽制しあっていたのだろう。


「ほら、もう平気だよ。ったく、普段の気の強さはどこ行ったんだ?」


「う、うるさいわねっ! それより……どういう意味よ?」


「いや、ああ言っておけば面倒ないだろ? というか、打ち合わせしたじゃんか」


「わ、わかってるわよ……仕方ないじゃない、それでも嬉しかったんだから」


「何をぶつぶつ言ってるんだ? ほら、ささっと行こう」


「きゃっ!? ま、待って……!」


 俺はセレナの手を取り、キャンプファイアーの前に行く。


 そして、顔を真っ赤にしたセレナとダンスを踊る。


これで作戦通り、今後は変な輩も寄ってこないだろう。








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