ねぇ、パンケーキ先生
だらく@らくだ
(՞ . .՞)
困った時はいつも相談しに行く家がある
それは森の中心にある薔薇で覆われた平屋
ドアを開けると、まるで俺が来るのを待っていた様に家主は足を組んで、椅子に座っていた。頭には白い皿の湯気を吐き出さない三枚重ねのパンケーキが乗っている
僕はこの人を²パンケーキ先生²と呼んでいた
「明るい話では無いのでしょう。ココアでも
用意しましょう」
「先生……僕、二十超えてます。コーヒーが
良いんですけど」
「わがまま言わないの。はい、ココア」
僕はしぶしぶテーブルに置かれたココアを一口飲む。甘い、相変わらず物凄い
「それで今日は何の相談ですか?」
「実はその……好きな子がね」
「諦めましょう、あなたならきっと次が簡単に見つかりますよ」
「まだ何も言ってません!!」
「冗談ですよ」
けらけら笑いながら、先生は机から小さなカップに入った黄色の液体を頭に垂らした
「ちょっと待って、それ何ですか?」
「蜂蜜です。パンケーキがお腹減ってしまうので時たま」
「髪の毛にかかりませんか……?」
「それは無いですね。パンケーキがきちんと
食べてくれるので」
確かに先生の収穫時の小麦色した髪の毛に全く蜂蜜は垂れていない。パンケーキは何事も無かったかの如く、頭の上できつね色をしてる
「で、相談と言うのは?」
「あ、そうだ。実は好きな女の子がその」
「好きな女の子が?」
「かっこいい男とだな」
「ほう」
「て、手を繋いでたんだよぉ……嬉しそうに」
「へー」
酷くがっかりした顔で先生はティーカップの茶を啜った。パンケーキが緑色に変化した様だ
「残酷な事を告げますと」
「え?」
「奪い返せるぐらいあなたがかっこいい男に
なればいいのでは?」
「先生〜」
へなーっとなって、俺は顔を机に押し当てた
「それが出来たら苦労しませんよ。相手の男はめちゃかっこいいんです。あの子も今頃お家で裸にされてるかも」
「ホテルかもしれませんね」
「んな事はどうでもいい!俺が聞きたいのは
諦めた方がいいのか、奪い返した方がいいのかって話!」
「ん〜」
困った顔を見せながらまた先生はティーカップの茶を一口啜った
「私には答えられませんね」
「な、何ですと!?」
「だって仮に奪いなさいと言ってトラブルが
起きたとしたら真っ先に槍玉に上がるのは」
「私なんでしょう?」
「そんな事まさか……しませんよ。先生」
「します。悔しい事があると自分を守るために誰かのせいにしたがりますから。人間は」
「案外、保守的だな先生って」
俺はココアをまた一口、啜った
「しかし、奪い返すとは懐かしい」
「何だ、先生まさか奪い返した事あるのか?」
「ずっと昔ですよ」
パンケーキがまた変化した。今度は薄いピンクらしい。一体どんな仕組みしてんだ!?
「不倫された女性の元彼からパートナーを
奪う仕事をしてまして、まあ大変でした」
「なんだその最低な仕事は」
「人は案外、最低な一面を持っているものです。私も善人として生きてはいないので」
「先生がねぇ……」
今度はパンケーキが空みたいな水色に変化した。つーかさっきから思ってる事だが
「先生、そのパンケーキ落ちないんですか」
「落ちません、しがみついてますんで」
「き、気持ち悪い……」
ドン引きする俺と対照的に先生は嬉しそうに
「にんまり」笑った。それと同時にパンケーキもまた、赤色に変化する
「つまりパンケーキは生き物なんですか?」
「いいえ、生きてはいません。消費期限は
二十四時間です」
「でも色が変わりましたけど……」
「不思議な力です。生きてません」
「ダメだ、頭がおかしくなりそう」
「それは大変ですね、パンケーキ食べますか?」
「……それだけは勘弁」
そして、男が先生の家から帰った数時間後
「全く、お兄ちゃんには困ったものですよ!
突然手を繋いで歩きたいなんて」
今度は一人の女性が相談に来ていた
「ああ、もぉ……絶対誰かに見られた。明日からどうやってみんなと接すれば」
「でも楽しそうにお兄さんと会話してたのでしょう?」
「え!?そ、そんな事無いですよ!」
女性は酷く困惑した。何故ならお兄ちゃんと自分が一緒に歩いてる姿を先生が目撃してる
筈が無いからである
「まあ一つ一つ説明してくしか無いですよ。
こんな時はね」
「それが出来たら苦労しませんよぉ……」
女性は手元のココアをぐいっと飲み干した
「まあ私に相談したって解決はしませんよ。
パンケーキ食べますか?」
「あなたねぇ、パンケーキって」
女性はちらりと先生の頭上を見た。そこには
きつね色をした三段重ねのパンケーキが
「重く無いんですか先生……」
「慣れてますから〜」
「慣れるのか」
結局、
帰ってからもずっとパンケーキの事が気になって気になって夢にまでパンケーキが出てきた女性である
ねぇ、パンケーキ先生 だらく@らくだ @ujtjtmjmjmdt828
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