第5話 センパイの部屋《延長戦》

//SE ドアの開閉音


「はァ〜、やっと着いた〜。めっちゃ遠回りしちゃったね〜。 あたしのせい? ゴメンゴメン、アハハッ」


「うん。もう下ろしていいよ。別に足、痛くないし――――はッ!」//気づき


「そんな冷たい目で見ないでェ〜。事情はさっき説明したじゃんん〜。それにほら、キミにだって悪い事ばっかりじゃなかった、よね? フフッ」


「もう、コーハイくんはエッチだなぁ。ムッツリ肉食系だなぁ」


「キミの背中にくっついてたから、ブラウスが汗でビチョビチョだよォ〜。ほら見て……わッ、やっぱダメ、こっち見ちゃダメ」


「透けちゃってるから、ダメダメ! もう……油断も隙もないよォ」


「え? 隙だらけ? うるさいなキミはッ! いいからあっち向いてて!」


「よいしょっと、部屋のなかあっつい。エアコンをポチッと。上がっていいよ」


//SE リモコンの音


「いくらあたしが軽いからって、おんぶで1時間以上も歩いたんだし、疲れたでしょ? ありがとうね」


「水分補給しないとね。むぎ茶でいいかな? お、お客さん、いい飲みっぷりだねぇ。はい、お替り」


//SE 冷蔵庫から麦茶を出して注ぐ音


「フフッ、落ち着いた? ホントにありがとね」


「まあ、キミならイヤって言わないと思ってたんだ……優しいもんね」


「あ、もうこんな時間になっちゃった。キミは……電車、まだある?」


「……そうだよね、無いよね。じゃあ仕方ない、ここに朝まで……いなよ」//緊張


「違うのッ、お泊りじゃないの! 朝までいるだけなんだから、ノーカンだよ」


「シャワー……先に使って? あたし、後がいい」//緊張


◇◇◇


//SE シャワールームの開閉音


「サッパリした? ゴメンだけど男物の着替無いから、バスタオル腰に巻いておいて。着てた服は、いま洗濯機にかけてるから、少し待ってね」


「むぎ茶、欲しかったら自由に飲んでね。じゃあ……あたしもシャワー浴びてくる、ね」//緊張


「覗いたりしたら、駄目だよ? フリとかじゃないからね! ホントに駄目な奴だからねッ!」


「分かった、分かったよォ〜! 信用してるから〜。アハハッ」


「そうじゃなかったら、男の子を部屋になんて上げないよ?」


『……好きな相手でも、ね?』(以降『』は耳元での囁きです)


「キャハハハ! ほら立ったらタオル取れちゃうよォ」


『じゃ、ちょっと待ってて、ね?』


//SE シャワールームの開閉音とシャワーの音


◇◇◇


「ふぃ〜、サッパリしたぁ〜」


「んくッ、んくッ、んくッ、プハァ〜‼ 美味い! むぎ茶もう一杯ッ!」//喉を鳴らして


「……ついで? センパイがグラス出してるんだから、ついで?」//甘えるように


「素直でよろしい。じゃあ……寝ようか!」


「いやだって……キミも眠いでしょ? 寝ようよ。その……あたしもお喋りはしたいけど、明日もあるじゃん?」


「はい、という訳でこちらへどうぞ。セミダブルだから平気でしょ。キミはおっきいけど、あたしちっちゃいし」


「遠慮しますって……いまさらだよ〜」


「女のコの身体ベタベタ触って、部屋に押しかけてシャワーまで使っておいてさァ〜」


「ああ、それ全部あたしだね。ウフフッ」


「でも良いんだよ? あたしが良いって言ってるんだから、おいで?」//誘うように


「信用してるから、ね? フフッ」


「何よ、背中向けちゃうの? まぁ良いけどさ。あたし、キミの背中好きだしィ」


「くっつきやすい。もう馴染んじゃった。なんか、ドキドキするけど、ホッとする……変なの」


『キミももう、慣れっこでしょ? クスッ』


『まだ慣れないの? ウブでかわいい。でも、そういう所も好き。たまにイジワルな所も、好きだよ?』


『あたしも本当はね、キミがサークルに入った時から見てたんだよ』


『身体おっきいな〜って、無表情っぽくて、ちょっと怖いかもって思ってたの』


『でもキミ、サークルの雑用とかも一生懸命やってくれてたじゃない? 要領のいいコがスルーしちゃう事も、ちゃんとやってくれてさ』


『言われた事だけじゃなくて、目端が利くというか、痒いところに手が届くというか』


『ポリポリ、お客さん痒いところありますかー?』//おどけて


『アハハッ、くすぐったかった? ゴメンゴメン』


『でも本当だよ? 頼りになるから、つい色々頼んじゃうってみんな言ってるんだから』


『でさ……この春から入って来たじゃない? 新入生。――うん、そう。キミの後輩くんや後輩ちゃんたちも、キミが優しくて頼りになるって』


『実はキミ、競争率、わりと高くて……』//不安


『後輩ちゃんの何人かも、キミの事いいって言ってて……』


『あたしがさ、最初から見てたんだから〜って思ったら、ちょっと焦っちゃって……』


『でね、ミドリに頼んで今日の飲み会、誘って貰ったの。ちょっと、その……勝負掛けようと思って……』


『ゴメンね? 変な絡み方しちゃったよね。でもあたしも、こういうの分かんなくって、アハハ……これ、さっきも言ったよね』


『ねぇ……あたし、もう全部白状しちゃったよ?』


『だからねぇ……お願い。さっきの、もう1回聞かせて?』


『こっち向いて……ねぇ、ちゃんと聞きたいの』


『〜〜〜〜〜〜〜〜ッ‼』//息を呑むように


『…………やったぁ。嬉しいな』//微笑むように


『あたしも……キミこと好きだよ。前からだけど、今日でもっと好きになっちゃった』


『ギュッてして? ……ね?』


◇◇◇


//SE チュンチュン


『んぅ……あ、おはよう。良く眠れた?』


『あたしはァ……アハハッ、寝た記憶ないや』


『えー、キミもそうなの? ウフフッ、じゃあふたりとも寝不足で講義だね』


『どこかで朝ごはん食べて、一緒に行こうよ。お腹ペコペコ』


『じゃあ、行こ? ……あたしのカレシくん? ウフフッ』

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酔っ払いのセンパイちゃんと肉食系のコーハイくん マコンデ大佐 @Nichol

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