第3話 帰り道《前半戦》

「スゥ……スゥ……うぅん」//寝息


「スゥ……スゥ……ウフフッ、くすぐったいよォ」


「んァ……あれェ? みんなはァ? 帰っちゃたの?」


「どうして起こしてくれなかったのォ。え? 起こしたのに起きなかった?」


「ええ? あたしが、キミの膝の上で寝ちゃってた? う〜ん、記憶がないや。ハハハ……」


「あたし、キミに何かした? どこからか分からないけど、何にも覚えてないよ。エヘヘェ〜」


「じゃあキミは、あたしに何かした? 膝の上で眠るいたいけな美少女に」


「え? 何もしてないの? つまんない男だなぁ〜」


「でも、とってもいい夢は見ていた気がするんだよね〜。どうしてだろうね。ウフフッ」


「だからァ、もう1回、寝るゥ〜」


「いたたッ! 痛いなもゥ〜。肩抓つねらないでッ。起きるからァ」


「ひゃッ! 腰ッ! 腰はもっとダメッ! 下りる下りる! もうッ、いじわるなんだから」


◇◇◇


//SE 自動ドアの音


「外、あっついねェ。あららッ……バランスが……」


//SE よろけた靴のなる音


「あぶなー、支えてくれなかったら、コケる所だったよ……アリガト」


「でも、足、痛い。立てないかも……」


「おんぶ……おんぶして……足、痛い」//少し恥ずかしそうに


「嘘じゃないよォ! 立てないィ! あたしがまた転んでもいいの?」


「駄目でしょ? 危ないでしょ? それにもう夜遅いでしょ? だから、おんぶしてェ」


「意味分からなくないじゃん。明朗じゃん。コーハイくん、筋肉スゴイだし。あたし、ちっちゃいだし。よゆーでしょ?」


「本当ならね、あたしみたいに可愛い子をおんぶするにはお金が掛かるんだよ。有料だよ?」


「それをこっちからお願いしてるのに、その態度はおかしいじゃない? これは光栄な事なンだよ」


「分かればよろしい。そこへひざまずき給え、こちらへ背を向けて。なんてねッ」


//SE おんぶする


「うわッ、高いィ〜! 出発〜シンコ〜」


「進む方向はね? キミの耳を引っ張って指示するシステムなの。手綱が無いから仕方ないね?」


//SE 耳に触る


「ダメなの? 口で言うの? じゃあ分かった」


『こんな感じでいいかな……』//耳元で囁くように(以降『』は耳元での囁きです)


「アハハッ、いまブルッてなった! おもしろ! 耳、弱いんだ? これは良いことを知ったなァ」


『このまま直進して、コンビニの先を左だよ』


「いいじゃん、これ凄く愉しいィ〜。キミだって……」


『本当は、イヤじゃないでしょ? ンフフッ』


「わ、耳真っ赤。ではでは、納得ずくと言うことで……」


『あたしの部屋まで、お願いね?』


◇◇◇


「ゴメンねコーハイくん。いつもはあたし、あれくらいじゃ酔わないんだよ? 今日のあたし、ちょっと変みたい」


「ううん、疲れてないよ。ちゃんと寝てるし、ちゃんとご飯も食べてるもん。自炊してるんだよ。偉いでしょ」


『今日は……ちょっとね。楽しみ過ぎて、はしゃぎ過ぎたかなぁ〜』


『何かあったのかって? うん、ちょっと……ね』


『ちょっと汗ばんできたね……でも、こうしてくっついてないと、バランスが悪くて疲れちゃう、でしょ?』


『背中、おっきいね。硬いけど柔らかい、不思議な感じだね』


『恥ずかしい? この辺り、道を1本入るとすぐに住宅街だし、ほら、こんな時間じゃ誰も歩いてないよ』


『いま、コーハイくんとあたしを見ているのは、お月さまと街灯だけ、だよ?』


『それにさ、人に見られて恥ずかしいのは、どっちかというとあたしの方だし』


『ねぇ、コーハイくん。ちゃんと脚、抱えて? お尻でもいいから。そうしないとあたし、ズリ落ちちゃうよ?』


『生足なのは仕方ないじゃない? 今日あたし、ショートパンツなんだから。おんぶしてるんだし』


『やだァ、触り方やらしいィ〜』//からかうように


『今度はお尻? エッチィ〜』//からかうように


「なら下りろ? うそうそ冗談だよォ〜。あたしがお願いして、おんぶして貰ってるんだもんね」


『コーハイくんの、好きな方でいいよ。ウフフッ』//思わせぶりに


「やだやだッ! 降ろさないでェ〜! もう、イジワルなんだから」


「え? イジワルはそっち?」


『あたしはァ、イジワルなんてしないよ? サービス、してるつもりなんだけどなァ』


『ほら、だってキミもドキドキしてるじゃない? Tシャツも汗ばんで。ほら、こんなにドキドキしてる』


//SE シャツを触る音


『いいじゃない。胸、触るくらい。それにしても胸板、厚いね』


『それに……キミも、背中に感じるでしょ? あたしの……』


『ほら、あたしもドキドキしてるよ? 分かるでしょ?』


//SE 鼓動音


『分からない? じゃあこれなら……どう? 感じる? ほら、こんなにドキドキしてるんだよ?』


//SE 鼓動音


『嘘、バレバレだよ。だってさっきから何度も抱え直してるじゃん……』


『……エッチィ』//少し責めるように


『ううん、謝らなくていいよ。怒ってないよ』


『逆に、ちょっと嬉しかったりして……ううん、何でもないッ』


『だってキミさァ、お店であんなにくっついても反応薄いし、あたしに興味ないのかと思って』


『女のコにあれだけされて、ニコリともしないし……』


『ちょっと……凹みかけてたんだぞ……』//独り言のように


『緊張してただけ? 本当に? じゃあ、本当はどう思ってたの?』


『ねェ、教えて?』


『ウソ……本当に緊張してただけなの? あたしが隣にいたから……? ウソ、本当に?』


『……ッ、嬉しい、な』//喜びに息を呑んで

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