第4話 帰り道《後半戦》

「……ッ、嬉しい、な」//涙声


「グスッ……ッく……」//鼻を啜って嗚咽を堪える


「ううん、何でもないよ。何でもないってェ〜」


「でもォ、詳しく聞きたいな。隣があたしだから緊張したって、どうして?」


「えェ〜、いいじゃん。そこまで言っちゃったんだから、全部いっちゃいなよォ」


「え?……。あたしが、カワイイ……から?」


「〜〜〜〜〜〜ッ!」//声にならない悲鳴


「ちょっと待って。いきなりそんな、心の準備が……」


「待ってッ……待ってッ……ストップ!」


「待ってってばッ! スリーパーホールドォ! このこのォ!」


//SE 首を締め上げる音


「……ギブ? ギブね、よーし」


「――――ふゥ……」


「え……サークル入ってから、ずっと目で追ってたの? もう2年だよ?」


「うそ……だって今までも、目が合うとすぐに逸して……恥ずかしかったから? うそ……」//信じられない風に


「声を掛けようと思ってたけど、いつもあたしの周りに人がいて、できなかったんだ……そうだったんだ……」


『じゃあさ……コーハイくん。あたしの事、好きだったんだ?』//耳元で囁くように(以降『』は耳元での囁きです)


『え? そうじゃない? フフッ、どうかなァ』


『だって2年も、あたしの事を見てたんでしょ? 声も掛けずに、遠くからさァ』


『どうして? どこが気になってたの?』


「明るくて、優しくて、カワイイ……?」


「〜〜ッ!」//息を呑む


「けッ、結構くるなァ。これ……照れる」


「顔もカワイイけど……声がカワイイ。喋りかたも……?」


「〜〜〜〜〜〜ッ!!」//声にならない悲鳴


「待って、もういい……分かったからッ! もうやめてッ! 恥ずかしいのッ!」


「照れたとこ、もっと見たいって……やだもォ〜!!」


「キミ、イジワルだよォ〜」//照れたように


「でも、それにしては、今まで飲み会とか来なかったね。どうして?……あ、未成年だったからか」


「でもさぁ、ノンアルで来ても良かったじゃん。飲み会……酔っ払いがキライ? ああ、さっきも言ってたねェ。あれ、本気だったんだ」


「――――ハッ!」//気づき


「あ、あァ〜。あのねッ! あたしはそのッ、さっきのあれは違うの!」//慌てて


「酔ってたのは違くないんだけど、いつもはあんな絡み方はしないと言いますか……今日は特別と言いますか……」


「実はね、ミドリに頼んでキミを誘ってもらったの、あたしなの……」//バツが悪そうに


「そしたら、オッケー貰ったよーって言われてね? それで、距離縮めたいな〜って思って……」


「キミの好みとか分からなかったから、とにかくいっぱいお喋りして、いっぱいくっついて、あたしに興味持ってくれたらなーって」


「だからね? さっきのは演技っていうか、あたしも緊張してたから、つい加減を間違えたというかね?」//ね?の部分は甘く


「あたし……ウザかった? でも、他にどうしたらいいのか分からなくて……ゴメン、ね?」


「本当は……本当に、あんなに酔っ払わないんだよ。信じて? ね?」


「でも、あれはあれでちょっと楽しかったし、構ってもらって嬉しかったんだけど……」


「え? 寝たフリしてたの、バレてたの!?」


「うわ、恥っず。ゴメン……みんな、あたしがキミのこと好きなの知ってて、協力してくれたんだよね。二人きりになれるように……」


「あたしがキミにあんなに絡んでるのに、誰も止めなかったもんね……分かっちゃうよね」


「―――あれ? あたしいま、何か言った?」//気づき


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ⁉」//声にならない悲鳴


「ちょっと今のナシ。ね? 聞かなかった事にして?」


「やだやだッ、お願いッ!」


「じゃあセンパイは、好きでもない男にあんなにベタベタするんですか……って」


「そ、そんな事……絶対にしないよ。するわけないじゃん……イジワル」


「あーもうッ、分かったよ。あたしキミの事が気になってたのッ! 好きなのッ!」


「ハァ〜、ハァ〜、これで満足?」//荒い呼吸


「もうッ! キミの方から好きって言って欲しかったのにィ〜〜〜! アァァァァン!」


「……え? いま、なんて?」//期待と不安


「よく聞こえなかった。もう1回言って?」


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ⁉」//声にならない悲鳴


「ホントに? あたしの事、ホントに好きって言ってくれたの?」


「嬉しいな……グスッ……スン」//涙声で


「やだ、いまこっち見ないで。泣いてないよ。ちょっと鼻が出ただけだよ」


『でも嬉しい。本当はあたしたち、両想いだったんだね。ヤキモキして損しちゃったァ』


『キミも恥ずかしい? こんなに耳、赤くしちゃって、照れてるの?』


『まだ言う筈じゃ無かったって……どれだけあたしの事、待たせる気だったの? ヒドイなァ』


『チュッ……フフッ、これは罰だよ。女の子から先に告白させるなんて、悪い男だねェ、コーハイくんは』//耳にキス


『あたしの方が、100倍恥ずかしかったに決まってるじゃん。お店では酔っ払いのフリして、その……腕とか当ててさ』


『膝の上とか、座っちゃうし……あーんとかおねだりしちゃうし……』


『なんか、思い出したらどんどん恥ずかしくなって来ちゃったよッ!』


『それに今だって、こんなに背中にちゃってるし……わざとに決まってるじゃん』


『恥ずかしい。もうやめる……ちょッ! いま抱え直すのはズルいィ〜!』


『…………もう、エッチ』//拗ねるように


『でも、こうやって耳元で囁くのは楽しいかも。こういうの、好き?』


『そんな事ない? じゃあやめちゃおっかなァ〜』


『やだッ、揺らさないでェ〜』


『さっきまでは無口で大人しかったのに……急にイジワル、するんだね?』


『ううん、イヤじゃないよ……』


『キミはあたしにイジワルするの、楽しい? フフッ』


『でも……これを言ったらあたし、キミにもっとイジワルされちゃうかも……』


『まだ何かあるのかって……そういうんじゃないけど……ちょっと言うの怖いかも』


『いいから言え……? う〜ん、でもなァ〜。聞いても、怒らない?』


『じゃあ、言うね……』//緊張


『曲がるところ……ずいぶん前に過ぎちゃった……』


「ッちょ! 怒らないって言ったじゃん〜、ウソつきィ〜! やだッ、揺らすのヤメてッ! 怖いィ〜、いやァァァ〜‼」

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