ルームメイト~君は俺の婚約者~

ハル

第1話 ルームメイト~君は俺の婚約者~

「はあ~~……一人は広過ぎる…でも、お気に入りだからな~




私、御沢 悠(みさわ はるか)。23歳。


親元を離れ一人暮らしを始める事にしたんだけど、すぐには収入も落ち着くわけじゃなく、両親から手助けしてもらう事にした。


だけど、とにかく広過ぎる為、ルームメイト(ルームシェア)を募集する事にしたのだ。




【ルームメイト募集】


【男女問わず年齢問いません。

但し、面談をした上での判断で後日、返事をします】





そして─────



「…来ないな~…来る人、来る人、クセあるし、個性的過ぎるし…多分、続かない気がするし、私とは合わない…」


「そんなにクセ凄いんだ」


背後から声がするも気にも止めず私は振り返りもせずに




「そうなんだよね~」


私は普通に返事をする。



「例えば?」

「…例えば?えっとね……ん??」




バッと振り返る。



ドキッ


振り返る視線の先には、超イケメン男子が…!?



「…あの…」

「ルームメイト募集してんの?」

「はい…」

「じゃあ!俺とどう?」

「えっ!?」


「男女年齢問わないんでしょう?」

「そうですけど…」

「ちなみに俺、19歳なんだけど」

「じゅ、19っ!?」


「そう! 19。合格ライン?不合格ライン??ギリギリ?どう?どう?」



《…もしかして…チャラ系…?》




「女関係は大丈夫?」

「チャラっぽいから、女好きそう?」

「正直あります!」


「そう?で?イエスかノーか?どっち?俺、次探さなきゃなんないから今すぐ返事頂戴!」


「えっ!?いや…そんな…急に…」




そこへ、彼に1本の電話が鳴る。



「はい、もしも~し。あっ!OK~。すぐ行く。いつもの所に行っててくんね?ああ。じゃあ後で」




ピッ


電話を切る。




「で?どうなの?」

「いや…ちょっと…」

「…どっち?」

「それは…」



「……話聞いてた?俺、次探さなきゃなんないって言ったっしょ?」


「わ、私だって、そんな暇ないし。お急ぎなら他当たって下さい!」


「じゃあ、そうする」




そう言うと彼は去って行った。




そんなある日────



「はあぁ~…決まらない…」




喫茶店。


テーブルに顔を伏せる。


ここ最近、アクセスが少なく面談するもパッとしない。



「ねえ、ねえ」



ビクッ



「…ビックリした…」



私は、ゆっくり顔を上げる。


しかし姿がない。



「ルームメイト決まった?」



「…………」



私は気のせいかと思い首を傾(かし)げ、ノートパソコンとにらめっこする。


その直後、肩をトントンされ振り返ると、頬に指がツンと当たる。



ドキッ



「…あっ!…あなたは…」

「…まだ決まってない的な感じ?」



そこにはこの前の超イケメン君がいた。


すると、私の前に来てノートパソコンを取り上げる。



「あっ!ちょ、ちょっと!何す…」

「募集中の広告変えたら?」



そう言うとサクサクとパソコンを弄り始める。




「凄い」

「これで募集して、パッとする奴いないなら俺に決定な」

「えっ!?」


「俺もアクセスするからそれで検討して。19歳。裕飛(ゆうひ)って名前だから宜しく!」


「…あ、うん…分かった」




そして彼は帰って行く。


その後、アクセスはあったものの



最終的には、


彼・砂々原 裕飛(ささはら ゆうひ)君に確定となった。





「すっげー!つーか、マジ、一人で、こんな所に住もうなんて思ったね?」


「まあ…どうしても住みたいのもあったから」




そして私達の生活が始まるのだった。






そんなある日の事─────




「ちょっと!裕飛っ!あんた、19でしょう!?煙草は駄目だよ!もちろんお酒も!」


「いやいや、一応、20歳迎える身分だから」


「駄目!20歳迎えるからって言い訳だから!まだ、19なのは間違いないから未成年だってば!」




砂々原裕飛。彼は学生に良くいる不良だった。


周りの友達は20代前半の範囲であり、学生の時からつるんでいるという仲間らしいけど、まさか、そんな奴で、そんな輩の集まりだったとは……


初めて周囲の友達などを目の当たりにして飛んでもないルームメイト相手だという事に愕然とした。


既に部屋は溜まり場化している。


何度注意しても聞いてくれず結果は同じだ。





ある日─────



「先輩、聞いて下さいよ!もう今の生活よりも前の方が断然良かったですよ」


「どうしたの?何かあったの?」



私は今の現状を


職場の先輩・上司でもある


宗士 菜美恵(そうし なみえ)さん。27歳に愚痴をこぼす。




「でも、超がつくイケメン君なんでしょう?」


「…それは…でも、イケメンだからって何でも許されるってわけじゃないですからっ!」




それからしばらくして────




「悠ちゃん、飲み過ぎよ。大丈夫?」


「だって…飲まずにいられないし…明日休みだしハジけさせてください!」


「はいはい」





そして──────



「大丈夫?」

「はい…」

「本当に?」

「はい!それじゃ失礼しまーす」




フラつく体。



「先輩、送りますよ」

「いやいや大丈夫よ」



そして私達はタクシーを拾い帰る事にした。




カチャ パタン



「お帰りー」

「…あれ…裕飛…?」


「あんまり遅いから外泊すんのかな?と思って鍵かけようと思ったら帰って来たから」


「…その方が好都合だったんでしょう?女連れ込んで…Hならホテルか他の所でして!!」


「悪い!もうヤった後だし」

「はあぁぁっ!?」


「だって、ここは俺も住んでいるんだし俺の部屋でもあるわけじゃん!飲んで酔った勢いで成り行きでさ~」




「………………」




「最低……最悪…ここでするなっつーの!ここは私の部屋でもあるんです! Hする部屋にするなっ!」


「じゃあ何の為の部屋?好きな事する事の何がいけないわけ?」


「駄目!駄目!絶対に駄目!同居している以上ルームメイトなら、それくらいのルールとか限度とか、常識的な事、19歳の頭でも分かるでしょう!?」


「…面倒くさ…ルールあるなら最初から決めておけよな!今更、ルールとか限度とか…やってられっかよ!」


「今日、今から条件を箇条書きするから!それを守って!守れないなら出て行って!」




「…ふざけんなょ…だったら出て行く…俺が守られるわけねーだろ?」


「あっそ!じゃあ出て行って!」


「言われなくても出て行くよ!荷物は後で取りに来るから」





そう言うと彼は出て行く。




「あの…すみません。彼、色々あって…あなたが帰って来るまで傍にいてほしいって…私達はそういう関係じゃなくて…ただの友達で…」



「…………………」



「彼、優しいし、面倒見が良いからみんなから愛されてて…だから彼を追い出さないであげて下さい」


「だけど、私も勢いで言っちゃったし…本人が決めた事だから…私も引き止めるわけにはいかないから…」


「…そうですか…そうですよね…でも!これだけは言わせて下さい!彼は本当に良い子だし見捨てないで信じてあげて下さい」




そう言うと彼女は帰って行く。




私達はルームメイト


お互いの事は 知らない事ばかりだ


彼は私がいない間、荷物を取りに来ていた様子で、その後、合鍵も置かれていた。




「また……一人に…なっちゃった……」






それから1ヶ月が過ぎ、彼がいなくなって、ここまで淋しく感じるとは思わなかった。


気付けば、ふと彼の事を考えている。





「ただいま…」



「………………」




「アイツがいたら…お帰りって…そう返って来てたのに……裕飛……」







ある日────



「俺と付き合って下さい」



友達の・緒北 世梨(おきたせり)の誘いで合コンに参加した時、一人の男の人に告白された。


ゆっくりと付き合う事にした。


それから1ヶ月後、彼の浮気現場を目撃。


私は彼に別れを告げた。




そんなある日の事─────




「悠ちゃん合コン付き合って」

「えっ!?」

「お願い」

「…先輩の頼みなら付き合わないわけにはいかないですよ」

「ありがとー。年齢、幅広いらしくて」




そして合コンに参加。




《げっ…な、な…何故…アイツが…》




そこには見覚えのある顔があった。


そう、それは裕飛の姿。




《…確か…アイツ…19…》




裕飛は私の事など見向きもせず、他の女性と意気投合。


正直、一番モテモテだった。






合コン終了後─────




グイッ


誰かが私の肩を掴み抱き寄せられた。




「きゃあっ!」


「悪いけど二次会パス!俺、この子と全然話してねーもん。じゃあ!そういう事で」


「えーーっ!ずるーーい!」




私の手を掴むと、私達はその場を去り始める中、移動する。



「えっ!?ちょ、ちょっと…!」

「久しぶり」

「え?あ、うん…ひ、久しぶり…」

「あれからどうなの?」

「えっ?」

「ルームメイトは?」



「…………………」





「その様子じゃ募集してないって感じ?」


「募集なんてしないよ…ていうか…する気ないし。あの部屋、気に入ってるし出て行く気全くないし…」


「ふーん」


「それに…他の部屋に行く、お金の余裕もないよ。自分は、どうなの?友達の所にでも行ってるの?それとも女の所?」


「そんなの、あんたに関係なくね?」




ズキン

胸の奥が何故か痛む。



「そ、そうだね…それじゃ、もうここで良いよ。ちょっと寄りたい所あるし」


「そう」



私達は、お互い背を向ける。





あなたと再会して


こんな思いになるのは


どうしてだろう?



あなたと もう少し


一緒にいたい



そういう気持ちになるのは


どうして…?




私は振り返り彼の背中を見つめる




「…裕飛…戻って来てなんて…今更、言えないよ…」






♪♪♪~…


「…メール…?」


【まだ連絡先、そのままだったんだ】

【俺の今の連絡先 ユウヒ】





ドキン



「…裕飛…」





【またメールする。じゃあ】





携帯を握りしめる。




「…裕飛…」






そんなある日─────



♪♪♪~…


【今、何してる?】

【俺、今、超暇してるんだけど】





♪♪~…


【仕事してます!残業中】



♪♪♪~…


【えーっ!マジで?せっかく遊びに行こうと思ってたのに】



♪♪~…


【あのねー、男女問わず友達いるでしょう?その人達に当たりなよ】




♪♪♪~…


【みんな本彼、本彼女(カノ)いるんだよ。まあ良いや。また連絡する】





ある日の事────



私の部屋のドアの前に座り込んでいる、1つの人影があった。


ドキッ



「…裕…飛…?」



私は駆け寄る。



「裕飛!?ちょっと、どうしたの?その傷」

「ちょっと…」



喧嘩をしたと思われる痛々しい傷が目につく。



「…ちょっとって…いう傷じゃないよね?殴り合いする程の大喧嘩でもしたとしか…」




「………………」




「…言いたくないなら無理に聞かないけど…」

「…迷惑…かな…?」

「えっ?」

「迷惑なら、俺、帰るけど…」

「良いよ。平気。元々、一緒に住んでた部屋でしょう?」

「…悠…」



私は部屋に入れる。



「相変わらず変わってねーのな」


「変える気ないよ。一人だし。同居人いたら色々と話し合った上で模様替えとかするだろうけど…」




私は傷口の手当てをする。



その後、久しぶりに私達は会話が弾み、裕飛は泊まる事に。


次の日、裕飛はメモを置き残し既に部屋にはいなかった。




「ゆっくりすれば良いのに…」






それから数ヶ月が過ぎ、裕飛とはメールのやり取りをしながらも友達として関係を続けていた



時々、遊びに来る裕飛の姿があったんだけど────





ある日の夜────






♪♪♪~…


【悠 、今、家にいる? ユウヒ】



♪♪~…


【いるけど。ていうか、今、帰って来た所だよ】




♪♪♪~…


【お帰り & お疲れ様】

【今、近くにいるんだけど部屋に行って良い?】



♪♪~…


【うん。良いよ】




すると─────




ピンポーン…



間もなく部屋のインターホンが鳴った。



「えっ!?」



私は玄関に向かう。




「はい」


「悠ーー、俺」

「早っ!」




ガチャ

鍵を開ける。




「早過ぎ!もしかして後付けてた?」

「まさか!」

「じゃあ!近くの公園にでもいたとか?」




私は部屋に入れる。



「違うし。本当、偶々」

「ふーん」




私達は近況報告をしつつ、裕飛が眠りについた時、私は色々と用意をし休日出勤だった為、メモを残し仕事に行った。





「…あれ…?悠…?」



「………………」



「休日…出勤…か…」




お昼前、裕飛からメールが届く。



♪♪♪~…


【仕事なら仕事って言ってくれれば良かったのに。お邪魔しました。鍵はポストに入れておく】




♪♪~…


【鍵は持ってて良いよ】

【あっ!嫌とか迷惑じゃないなら】




♪♪♪~…


【分かった。じゃあ持っておく】

【仕事頑張れ】



♪♪~…


【ありがとう】







そんなある日の休日─────




自分の部屋から、トイレに行き部屋に戻ろうと思い、ふとキッチンの明かりに目が止まる。



「あれ?私…電気…」



私はキッチンの方に向かう。



ドキッ



「…裕…飛…?」



ソファーで横になっている裕飛の姿があった。


私は裕飛にかけるものを持ってきてはかける事にし、


その直後────



「…ん…あー…悠…悪い…勝手に…」

「いや…良いけど…ごめん…それより起こしちゃったね…」

「いや…大丈夫…」



起き上がるとソファーに座る裕飛。



「悠…」

「何?」



グイッと抱き寄せた。




ドキーーッ



「わ…ちょ…」

「…悠…男いる?」

「えっ?男?つまりそれって彼氏って事?」

「うん」



「いないよ」

「今まで付き合った事は?」

「ん?それは学生からとかって事?」

「そう」

「…それは…内緒♪」



抱き寄せた体を離す裕飛。




「何?どうしたの?急に」

「別に。それより、今日仕事は?」

「ないよ」

「じゃあ!デートしよ♪」





ドキーーッ



「デ、デートぉぉっ!?」


「そっ!」


「…デートって…」

「駄目?」

「いや…」

「…それは…どっちのいや?行きたくないの嫌?」

「違うよ!驚いたのと突然の事で…」



「じゃあ、つまり良いよの方って事で良いんだよな?」

「…それは…」

「じゃあ、行こうぜ」

「うん…」



夜が明け、朝になり朝食を済ませ私達は、出かける事にした。




「何処行く?」


「えっ?いや…急な話だったから…ていうか、裕飛がデートの人気スポット詳しいでしょう?…まあ…私達は付き合ってるわけじゃないけど」


「別に友達でも良くね?」


「…それは…」



私達が向かった先は、遊園地。


異性と来た事なんてなかった場所だ。


家族と来た以来じゃないだろうか?


私達は楽しむ。




その日の帰り─────



「…俺…また…戻ってこようかな…?」

「えっ?」

「一緒に住んで良い?」


「やだな~改まって。別に良いよ。だけど条件付でルール守ってね」


「ルールは話し合いな」


「…うん…」





そして、裕飛は戻って来てから私達の生活がまた始まった。





その後、先輩に報告。




「えっ!?また同居生活が始まった?」

「…はい…」

「へえ~…そうなんだ~」





夜───




「ただいま」

「あっ!お帰り!悠」




《やっぱり良いよね♪》

《この感じ》




「悠、ご飯食べた?」

「まだ」

「じゃあ、俺の手料理食べる?」

「うん!食べる!でも良いの?」

「多目に作ったから」

「そっか。じゃあ頂きます♪」

「どうぞ」


「美味しい♪ていうか裕飛、料理こんなに上手だったっけ?ここを出てから料理マスターした?……あー!分かった!転々と寝泊まりした異性の所で身体の関係条件付きで教えて貰ったとか?」


「まさか!」


「嘘だ!料理出来るなんて性格に合わない!」

「だったら食うなよ!」


「やだ!食べますーーぅっ!…ていうか容姿はムカつく程、申し分ないんだけどさ…それが逆に悔し過ぎる!」


「褒めてんのか貶(けな)してんのか分かんねーんだけど?」

「両方!」

「なっ…!ムカつく!やっぱ食うな!」

「やだ!」



私達は騒ぐ。




そして、ある日の事だった。




「ただいま」

「え~、やだぁ~、裕飛く~ん」



女の子の声が聞こえてくる。



「なっ…!女連れ込んで…」




ドタドタ…


私は裕飛の部屋に向かう。




「裕飛っ!」

「あっ!お帰りーー。悠」

「お帰りーーじゃなくて…」

「えっ?帰って来た人を迎えるのは、お帰りっしょ?」

「そうだけど!」


「あっ!それじゃ、私、帰るね」

「ああ。バイバーイ。送ろうか?」

「大丈夫。平気」

「どうぞ!送って貰って!はい!行ってらっしゃーーい」




私は追い出す様に部屋から出した。




「…プライベートとはいえ留守中に部屋に異性を入れられると…」






そして─────



「ただいま」

「お帰り。無事に送ってあげた?」

「ああ」

「そっ!」



「………………」



「えっ?それだけ?」

「そうだけど?」

「いや…異性は駄目なんじゃ…?」

「…プライベートに口出さないルールでしょう?」


「でも、あんたの部屋でもあるんだぜ?」


「そうだよ。そうだけど…ルームメイトなだけだし、別に私達は付き合っているとかじゃないし。そりゃ…ちょっと嫌だな~って思ったけどさ…と、とにかく!この話は終わり!振り返っても仕方がないし。もしかして、本カノ(彼女)だった?」



「いや友達だし」

「そっ!」

「まあ今後は部屋に入れねーよ」

「えっ?…あ、うん…」



ある日の夜──────




「ただいま」



「………………」



「あれ…?裕飛…いないのかな…?」



私は裕飛の部屋に行く。


すると、ベッドに横になっている裕飛の姿。



「…寝てたのか…」



私は裕飛に毛布をかけ、部屋を後に出て行った。





再びある日の夜──────





ドサッ ビクッ




「いってーー」



玄関先から大きい音がし驚く中、玄関先に向かう。



「…裕飛っ!?ちょっと!大丈夫!?」

「あ…悠…ただいま…」



かなり酔っているように見受けられる。




「先輩の付き合いで飲まされて泥酔……」

「…部屋…行こうか?肩貸すから」




私は裕飛に肩を貸し、部屋に向かった。



ドサッ

部屋に行くとベッドに乗せる。




「ふ~…水持ってくるね」




グイッ ドキッ


「えっ?きゃあっ!」



私の手を掴む裕飛。




ドサッ


私は勢いで倒れ込み、私を布団の中に引き摺り込ませる。



「わ、ちょ、ちょっと…裕…」



私に体重を掛ける裕飛。


至近距離にある裕飛の顔に胸の鼓動がドキドキと加速する。



「ゆ、裕飛…えっと…よ、酔った勢いとか…駄目…」



スッと離れ横になる。




「おやすみ。一緒に寝る?」


「い、良い!結構です!お、おやすみ」



私は裕飛の部屋を後に自分の部屋に行った。





そんなある日──────



「ねえ、裕飛って仕事、何してるの?」

「仕事?あれ?俺、言わなかったっけ?」

「聞いてないよ」

「俺、フリーター。特定の仕事はしてないし」

「そうなんだ」


「あっ!そうだ!悠に聞かなきゃと思ったんだけど、お金って大丈夫?」


「えっ?」

「光熱費とか、俺全然やってない事に気付いて」

「あー、うん、大丈夫」

「そう?」

「うん」




とは言ったものの正直、ギリギリだ。


最近は、数万程、借金をする事があったりして正直、自分の、お小遣いなんてないのも同然だ。


親からの仕送りも日に日に少なくなっている。


どうやら父親が会社自体、倒産しリストラになったらしく───




「本当に大丈夫?」

「うん、大丈夫だから」



「…そっか…じゃあ…これは…何?」

「えっ?」




スッと何かを見せられた。



ローン会社の用紙だ。


支払いは済ませたものだったんだけど……





「あーこれは…最近、大きい買い物をした時にちょっと足りなくて借りたやつ」


「そうか」

「うん、そうなんだ」

「…悠…嘘つくの下手だね」

「えっ?」

「ここ最近、ずっとなんだろう?」




ギクッ



「えっ?…や、やだな~、そんなわけ…」


「悠!ルームメイトとして一緒に住んでるんだから隠し事なし!後、俺、嘘つかれんのは嫌だから正直に話してくんねーかな?」




「………………」



「いつから?」

「…それは…」




私は正直に話す事にした。



「両親は大丈夫なの?」

「うん。大丈夫みたいだけど…心配ではあるかな?」

「…悠、今後、どう考えてるの?」

「今後?」

「ここにいられるのも時間の問題なんじゃ」

「…それは…」



「しばらくは俺が全て出すから」

「だ、駄目だよ!元々、私が契約してるから」

「借金してまで今後も支払うの?」



「………………」



「…なあ、悠、交換条件出して良い?」

「…えっ…?…交換…条件…?何?急に…」

「…俺、悠にまだ話してない事あるんだけどさ」

「えっ!?話してない事?…何?」


「俺、こんなんだけど」

「うん」

「財閥の息子なんだよね?」


「そう…ん??…えっ!?今…なんて?…財閥って聞こえたような…」


「財閥だけど?」




「………………」



「で?その交換条件なんだけどさ」

「…う…うん…」

「婚約者」

「はい??こ、婚約者っ!?」

「そっ!俺の婚約者になる事が交換条件」

「こ、婚約者って…裕飛、許嫁とかいるでしょ!?」

「いないけど?」


「嘘だ!だいたい、お金持ちとか、財閥とかってさ、そういうの絶対あるじゃん!私は絶対無理だし嫌だからね!」


「借金背負ってまで、ここの部屋に住むの?そのうち出て行けって言われるんじゃ?」


「住まれなくなるまで私は出て行かない」

「…出ていかないって…」

「第一、好きでもないのに婚約者って強制…」

「人間お互い、ゆっくり知っていくもんだろう?」

「だとしても婚約者は…」


「一応、仮契約の婚約者な」

「待ってよ!勝手に決めないで!」

「ここに住みたいなら交換条件応えてくれても良くね?」

「そんなの都合良すぎるよ!」



「…………………」



「でも現状は厳しいんだろう?」



「………………」



「じゃあさ交換条件は、また改めて話し合いな。だけど、俺の中では仮契約としておく。ここは、しばらく俺が払っておくから」




「………………」



「相談なく勝手な事はしないから。しばらくここは俺に甘えてろ!」



トクン


胸の奥が小さくノックした。





そして親からの仕送りは断る事にした。





ある日の夜────




「あっ!忘れた……」



お風呂上がり脱衣場に着替えがない事に気付く。



「…どうしよう?裕飛…帰り遅くなるって言ってたから…」




脱衣場にいたんじゃキリがない。


ここは帰って来ない事を祈るしかない。


裕飛の帰りの時間は未定だけど部屋に移動する事にした。




そして────



カチャ



「……!!!」



いないはずの裕飛の部屋のドアが開いた。



「裕飛ぃぃっっ!?えええっ!?いたのぉぉっっ!!」

「今帰って来た所だけど?」


「そ、そうだったんだ…えっと…ご、ごめん…よ、洋服忘れちゃって…」


「そっ?誘惑してんのかと思った!」

「ば、馬鹿っ!そんなわけないでしょう?私達は」

「ルームメイトだもんな」

「そ、そうだよ!」

「まあ、俺の中では仮契約の婚約者だけど」



「言っておくけど、本契約にはならないから!」

「はいはい。そうしておくよ。ほら!早く洋服着てきな」

「あ、うん」



私は部屋に行った。



ある日の事だった。


先輩と飲んで、1人で帰っている時だった。




グイッ

背後から肩を抱き寄せられた。


ビクッ



「……!!!」

「ねえ、彼女、1人?」



振り向く視線の先には、3人の男の人達がいた。



《…誰…?》



「…だ、だったら何なんですか?」


「今、女の子集めてんだけどすぐ終わるからちょっと付き合ってくれない?」


「えっ!?今から?」

「そっ!」

「…無理です!」

「そう言わないでさー」

「私、婚約者いるから!」




ここぞとばかりに、裕飛を婚約者である事で、名前は出さずとも婚約者としておく。



「じゃあさ婚約者に許可取ってくんない?」


「許可?どういう事ですか?許可とる理由あるヤバイ事するって事?」


「そんなヤバイ事じゃないよ。とにかく連絡取って欲しいな~」



「………………」



私は相手の手を掴み離す。



「嫌です。他当たって下さい」



私は去り始めるも、すぐに取り囲まれるように道を塞がれた。





「警察呼びますよ?」



携帯を手に電話をしようとした次の瞬間、お腹を殴られた。



「…っ…」



意識が遠退き気を失う。


私はそのまま連れて行かれ ─────



目が覚め視界に入って来たのは見慣れない部屋だった。




「えっ!?」




バッと飛び起きる。



「…ここは…何処…?」



私は記憶を辿る。


もしかして拉致られた所?




「……………」



私は逃げようと帰る支度をする。



カチャ


部屋のドアが開いた。




ビクッ



私の視界に入ってきたのは────



「……!!!」



まさかの人物だった。



「裕飛ぃぃぃっっ!?」

「起きたか。酔っ払いの眠り姫」

「何で!?」

「何で?じゃねーよ…全く…!」



私に歩み寄り手を掴み、一緒にベッドに腰をおろす。



「お前に声を掛けてきた奴等、裏社会関係。今、問題になってたから。俺の友達(ダチ)がお前見かけて助けられた。一応、俺の中では婚約者だから、お前に何かあったら困んだよ!」



ドキン



「…裕飛…」



「夜遅くなる時は迎え寄越すから、一人で帰るのは辞めろ!」

「…ごめん…」




グイッと引き寄せられ抱きしめられた。



ドキッ


「ちょ、ちょっと…裕…」



まさかの突然の不意のキス。



ドキン…



至近距離で視線がぶつかり、ドキドキと胸が加速する。



《な、何?このシチュエーション》

《ヤバイ…》



再びキスをされ倒していく裕飛。


唇が離れ、再びキスをすると首筋に唇が這う。



「…ちょ…ちょっと…待って…裕飛…私達は…」




「………………」



「…悪い…無事だったから安心して…つい…」

「…裕飛…」

「…俺…お前の全て奪いたい…」



ドキン…


かあぁぁぁ~~っ!と身体が熱くなるのが分かった。


私は両手で顔を覆い、体ごと横を向く。




「…そ、そんな言葉(セリフ)、良くサラっと言えるね?」



背後から抱きしめられた。



「言える時に言っておきたいだけだけど?」

「い、言える時って…」



私達は向き合う。





ただのルームメイト


それなのに


この密着感


裕飛にとって私は…?


私とって裕飛は…?




《ヤバイ…お酒もまだ全部抜けてないせいか》

《雰囲気に流されそうなんだけど…》



私は裕飛の両頬を優しく包み込むように触れる。



「…悠…?」

「…え…?あ、えっと…ご、ごめん…」



私は両頬から手を離そうとする。



グイッと手を掴まれた。



ドキッ


「…悠…?…どうしたいの?」

「どうしたいの…って…」



「………………」



「…分からない…でも…裕飛に触れたい…お酒がまだ抜けてないからかな…?」


「…お酒って…怖いよな?」

「…そう…だね…」



私達は見つめ合うと再びキスをされ深いキスをされた。


首筋に唇が這い、下へ下へと唇が這う。



「…裕…」



再びキスで唇を塞がれ何度も深いキスをされ吐息混じりの声が洩れる。



気付けば私の肌が露になり、裕飛も上半身は洋服がはたけていた。



ドキン…



見慣れない姿と慣れないキスに戸惑う私に、今まで見た事も感じた事もない優しさで対応する裕飛に胸がざわつく。



「裕飛…待って…私…」

「俺に全て委ねな」



ドキン



「…ルームメイトで、仮婚約者だとしても…俺にとって…悠は…最初で最後であってほしいから」




ドキン…



いつになく優しい裕飛。



「つーか…マジ抱いていい?」



ドキーーッ



「えっ!?ま、ま、待って! 初めてだから無理!」

「そんなの知ってる」

「…えっ…?」

「…だけど…俺も、こう見えて女遊びしてねーし」

「う、嘘だ!」

「嘘じゃねーし」



「………………」



「何だよ。疑ってんだろう?」

「そ、そんなの当たり前…」



ムニュと私の両頬を内側に挟むようにすると、片手でアヒル口みたいにされる。




「変な顔」

「悪かったですね!ていうか裕飛…っ…!」



言い終える前にキスで唇が奪われた。




「…悠…1つになろう」



ドキッ


そう言うとキスをされ、深いキスをされる。




本当に委ねて大丈夫?


そんな不安が脳裏に過る




だけど……



気付けば私は


裕飛に身を委ねていた


裕飛が安心感を与えるように


本当の想いを言ってくれた


初めて聞かされた裕飛の想い




『俺はお前が好きだから』




意外な告白


私は驚くしかなかった





その後、私達の関係は相変わらずで過ごしていたんだけど……




「裕飛さん。ご無沙汰しています」

「…誰?」

「やだ、婚約者の名前も顔も声も、お忘れですの?」

「婚約者?俺の婚約者は一人しかいねーし」

「私でしょ?」



「違う!」

「そんな照れなくても」

「照れてもねーし、恥ずかしくもねーから」

「もう、裕飛さんたら~」



彼女の名前は・大鳥 藍(おおとり らん)


財閥の、お嬢様だ。


彼女の一方的な想いから、一回食事会をして以来だ。


今、何故、俺の前に現れたのか?




「今、一般の方と、お付き合いされていらっしゃるみたいで」

「そうだけど?」

「どういう方ですの?この私がチェック致しますわ」

「チェック?いやいや、必要性なくね?」

「ありますわよ?」

「どうして?」


「だって裕飛さんの人生に関わる相手なんですのよ?」

「俺の人生だから俺が選んだ女性(ひと)なんだし」

「そうだとしても私だって見るくらい宜しいんじゃなくて?」




そして─────




「こんにちは」

「こんにちは」



マンションの建物の前、一人の女性がリムジンの後部座席から窓が開き私に声をかけてきた。


綺麗な人というより美人な人の方が合ってるだろうか?


何となく品がある女性。


と言うより、リムジンに乗っている時点で彼女はきっとお金持ちの人なのだろう?



「砂々原 裕飛さん、ご存知ですか?」

「砂々原 裕飛…はい」

「あなたが婚約者?」

「えっ!?」


「私、裕飛さんの婚約者なんですの」

「え…?婚約者…?」

「ええ」




《待って!どういう事?》

《だって…裕飛…》



私はアイツに全て捧げた事に一瞬、後悔の文字が脳裏に過った。


裕飛とは何度か体の関係を持ったんだけど…やっぱり遊び…?



「あの…」

「あ!ごめんなさい。お気になさらないで。それじゃ」



そう言って車は去って行った。




「………………」




その日の夜。




「ただいま」

「…お帰り…」



フワリと背後から抱きしめられたかと思うと、そのままキスをする裕飛。


そして振り返らせ、再びキスをし深いキスをする。




「…悠…抱いていい?」



ドキッ


ストレートに聞いてくる裕飛。



「…裕飛…その前に1つ聞いていい?」

「何?」

「後で話す」

「今、話して欲しい」

「…裕飛の事…信じて良いんだよね?」


「えっ?…どうしたの?」

「…今日…裕飛の婚約者が来たよ」

「えっ?婚約者?」

「本当はいるんだよね?」


「相手の一方的な想いから食事会しただけだから。それ以外何もない」


「…そっか…」



グイッと抱きしめられた。



ドキン



「…悠…気にしなくて良いから」


「裕飛…」

「婚約者は、悠、お前だけだから」




ドキン


抱きしめた体を離す。


裕飛はキスをする。



パサッ


私の足元に洋服が落ちる。



「えっ?ちょ、ちょっと裕…」



フワリと抱きかかえられたかと思うと、シャワー室に一緒に連れて行く裕飛。




「一緒にお風呂入ろ♪」




油断も隙もあったもんじゃない。


たまに突発的に裕飛は意地悪するかのように、私の心の準備が出来ていないまま行動を起こす。


一緒にせざるを得ない状況。


その後、体の関係になるのはいうまでもなく─────



それから彼女は、それ以来来る事はなく、何かを仕掛けてくるという感じでもなく、月日が過ぎる───



「…裕飛、私、このままで良いの?」

「えっ?どうしたの?」


「…いや…私…両親に、キチンと挨拶したわけじゃないし、ここの部屋にいるから婚約者として過ごしているんだけど…私が解約するなら…ていうか、体の関係だけとか…実は…本当の婚約者と…」


「悠!急に何を言い出すかと思ったら…大丈夫だから!」




「………………」



「…悠…俺の事、嫌いになった?」



私は首を左右にふる。



「むしろ逆…裕飛が私の事…」


「安心しな。悠への想いは変わらないから。もし、不安とかあるなら、何か形になるもの貰う?」


「えっ…?」

「籍だけ入れるとか。何か契約的な証のものとか」

「それは…」


「悠が何かあった方が良いなら、それはそれで構わない。第一、部屋の支払いの為の交換条件なんて良い気しないよな。今度一緒に買いに行く?」


「えっ?だ、大丈夫!気にしなくて良いから」

「気になるから聞いたんだろう?」

「…いや…気になるとか気にならないとか…別に…」

「嘘ばっか」

「本当です!」



そして休日、私達は出かける事にしたんだけど────




「で?何が欲しいんだ?」

「えっ?わ、私に振るの?」

「俺は、お前の望み通りに行動移すのみ」

「サプライズっていう考えないわけ?」


「サプライズ?サプライズは好みあるじゃん!俺が良くても、お前が気に入らないなら買った意味なくね?」


「…そう言われると…確かにそうなんだけど……」

「とにかく任せる」

「そんなの無理だよ」

「じゃあ、目についたのにすれば?」

「簡単に言わないで!」



色々な店を転々と廻るも、これといって欲しいと思うのがない。



「もう良いよ…ごめん…私が言ったばかりに付き合わせちゃったね……大丈夫!裕飛を信じていないわけじゃないから」



「………………」




「…悠…じゃあさ、一層の事、子供つくる?」

「…えっ…?…こ、子供ぉっ!?」

「そっ!そっちの方が2人の愛の証……」



裕飛が言い終える前に遮るように言った。



「ま、ま、待って!」

「何?」


「確かに、それはアリなんだろうけど、まだ私達若いし、裕飛なんて20歳だよ?お互い両親に挨拶もしていないのに…し、しかも財閥の跡取りとかって…」



「……………」



「そこまで心配しなくても大丈夫だし」

「いやいや私が気にするから」





それから数年後─────



お互いの両親に挨拶をし、トントン拍子に挙式をあげたりとバタバタではあったものの、まあ、そこまで生活は変わらないだろうけど、また改めて日々を過ごそうと──────。









~ THE END ~



読み切りで書きました。

文字数が長々で大変だったかもしれませんが、読んで下さりありがとうございました♪


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ルームメイト~君は俺の婚約者~ ハル @haru4649

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