三章

「じゃあ、私と一緒にそんな生活しようよ!」

気づくと、そんなことを口走っていた。

──なみさんが、まるでみたいに見えたから。

「私が、普通の、いや、それ以上の優しさを、なみさんにあげる!!」

心から、そうしたいと思った。

「…本当に?みれいさん、いいのですか?私は、面倒くさいし、普通の猫として生活しているときは、何もできませんよ?」

「でも、なみさんは普通の猫じゃないんだから、何でもできるすごい猫でしょ?…私の前では、普通の猫でも、モフモフのポメラニアンでもなくて、ありのままのなみさんでいていいよ。」

そう、ありのまま。ありのままで愛情をかけてもらうのは、簡単そうで難しい。そんな事を唯一してくれるのが──しなければいけないのが──親だ。でも、なみさんにはきっと、親というものがいなかったのだろう。なんてったって、神様だから。最初の飼い主さんはきっと、なみさんを本当に愛していたんだろう。まるで、子供のように。話したり、ご飯を食べたり、そういう些細な日常も楽しめる、そんな関係だったのだろう。そんな関係を築けなかった前の飼い主さんが悪いとは言わない。世の中の全ての人が、実の子供と猫を同じ様に愛せるとは限らないから。その人は、猫か子供かしか愛せなかった。すると、当然取るのは子供。そういうことだろう。

──でも、わたしは違う。

もうなみさんに、辛い思いなんてさせない。あの子みたいなことは、繰り返さない。


それから、私はなみさんと昔からの家族のように接した。

「なみさん!?今爪当ててるの、私のベットだよ!?」

あるときは怒り、

「ちょっと美麗さん?私のアイス、食べました?」

「食べたのそっちだし、あれ私のだし。」

あるときは喧嘩し、

「めっちゃいい話…なみさん、寝てないで映画見ようよ」

あるときは悲しみ、

「日本ゆうしょーう!よっしゃあ!!」

あるときは喜び。

本当の家族のように、本当の友達のように、私は、なみさんと仲を深めていった。最近は彼女にも笑顔が増えたと思う。


でも、私は笑えない。


学校に行けば、私は“いじめっ子”。

毎日痣をつくり、心にたくさんの傷を抱えて帰路につくあの子が、笑えているとは思えない。あの子が笑わない限り、私は心から笑うことは出来ない。

「なんでかな…なんで私は、人を傷つけることしか考えられないんだろうな…」

私だって、誰かと対等に笑い合いたい。海斗くんだって、笑ってほしかったから、私が誰よりも側に居たかっただけなのに。

今は、みんなから怯えられて、主従関係しかそこにはなくて、海斗くんも、最近は私の行動に気づいてきてるし、ああ、もう、嫌だ。

「私が全部、悪い…よね。私が、私が…」

私は、何がしたかったんだっけ?

分からないまま、私は深い眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

拾った猫は、上から目線の“自称”神でした!〜もうひとつの物語〜 風花こおり @kori40kazahana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ