雨の姫は誰がために涙を落とすのか

五音七音の組み合わせで綴られた、日本語の美しい、神話のような物語です。

渇いた大地で雨を希う人間。
神々へ祈りを届かせるために取った方法は、雨の姫を涙させるものだった。
心優しい姫と、天上界の神々と、地上で恵みを待つしかない人間と。
遥かな眼差しで天地の来し方を眺めるような、悠久の時の流れを感じさせる作品です。

作者様の想いとしては、「驟雨」という別の作品とセットであるそうです。
こちらは現代の地上が舞台。雨を救いと感じる人物の独白形式で、心をすり減らす毎日に疲れきった人間の心の機微を、美しく格調高い文章で綴られています。

物語としての繋がりはありませんが、天上と地上で雨を媒介とし、苦しみ、悲しみと同時に救いが語られる物語です。
ぜひセットで読んでいただきたいと感じました。