9800kmの恋文(ラブレター)

シンヤ レイジ

第1章

プロローグ

君と出会ったのは

寒い寒い冬の日だった。


何気ない日常に現れて

私の心をあっという間に奪い去っていったんだ。


今日も遠い異国の地で

私が目覚める朝に君は眠りにつくのだろう。


そして、街角で咲く花々や

夜空に浮かぶ月を見つけては

「君のことを思い出した」と可愛いことを言うのだろう。

この地球の裏側で。


「“みんな同じ空の下にいる”って言うけれど

私たちが見ている月も同じものなんだろうか?」


そんな君の小さな疑問から

満月の形はどこの国でも同じこと

月の欠けていく部分や模様が国によって違うことを知った。

そして私の見ている月は

7〜8時間後に君の空に昇ることを知ったんだ。


君はいつも私に新しい世界を見せてくれる。


どうして君と出会えたのか

今でも不思議でたまらない。

こんなにも違う環境下で育った私たちが

どうしてこんなに仲良くなったのかさえも。


これをきっと人は

『縁』と呼ぶのかもしれない。


君と私を繋いだ“文字”。

だから君への想いも文字に乗せてみようと思うんだ。

そしてこの季節の風にすべてをゆだねてみようと思う。


桜の咲く美しい季節を

私はあと何回見ることができるのだろうか。

私はあと何回こうして君に文字を紡げるのだろうか。

そんなことが頭を過り

体をむしばむ病に怯える夜もあるけれど

それでも君との明るい未来を信じたい。


病床で書くこの恋文ラブレター

いつか君の心に届くと願いながら。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る