幼心の慟哭

 鈴木三重吉が創刊した児童向け雑誌「赤い鳥」に載っていそうな良質の、寂しいお話。

 子どもにとっても、親にとっても辛いのは、さらし者にされている親の惨めな姿を子どもが見ている、そんな場面ではないでしょうか。
 その村では、ごく潰しの者たちは魑魅魍魎から人々を護るために改造されてしまうのです。
 色も味も違う透き通った硝子玉のようなキャンディを意図した順番に、かつては父だったロボットの口に入れる貧しい少年。
 いいえ、もしかしたらそれは父ですらないのかもしれません。
 習い覚えたひらがなを一文字ずつ葉書に書いてポストに入れるような、この少年のいじらしさのお蔭で、残酷な人柱の物語がぎりぎりのところで童話になっています。
 幼い子どもに添い寝をしながら読みきかせてやれば、その子どもの心には、ブリキのロボットが鳴らす鉦の音色がちぃん、ちぃん……と生涯鳴り響くのではないでしょうか。

 お伽話を通して人の心に哀しみや愛惜が刻まれぬのならば、わたしたちの舌は何を乗せられたとしても味わえまい。

 キャンディ、楽器、ロボット。この三語を使った、三題噺に寄せた童話。
 すばらしいです。