飼われるのは嫌だ

花里 悠太

飼い犬からの脱出大作戦

 今日、僕はこの家に連れてこられた。


 ここまで、車に乗って狭いスペースに入れられて運ばれた。

狭いので文句を言ったら、優しくだけど怒られちゃった。


 でも、やっぱり静かにできない。


 大きく文句言ったら、口を掴まれて怒られた。

大きな声を出しちゃダメみたい。

いい子にしておこうと思った。


 家に着いたら、柵の中に入れられた。

ベッドがあり、皿に水が入ってる。

ベッドは柔らかいタオルがひいてあって、いい触り心地だ。


 僕のいる柵の先には窓がある。

窓の先には空が見える。

抜けるような青空だ。

とってもいい天気。


 くあー、っと口をあけてあくびする。

車で移動も長かったから疲れちゃった。

眠くなってきたからそのまま寝た。



 次の日。

柵の外からこの家の人が声をかけてきた。

優しく、皿にもったご飯を置いた。

ドッグフードだ。


 一口食べる。

美味しくない。

カリカリしてるこれよりも、昔食べたお米の方が美味しかった。


 でも、ご飯はこれだけ。

お腹も空いてるし、一気に食べる。

途中喉が詰まりそうになって、慌てて水の皿から水を飲んだ。


 柵の先、窓から見える空は晴れと曇りが半分くらい。

外に出たいな。

そう思っていると、家の人が首輪とリードを持ってきた。


 これ、僕につけるの?


 嫌な気持ちはあるけど、つけたら外に出してくれそうな気配だ。

大人しく座っておくと、褒められて撫でられる。

うん、怒られるよりこっちの方がいいね。


 首輪をつけたらリードを持たれて庭に出る。

走り回れそうだが、大人しく歩く。


 歩き終わったらお風呂に連れて行かれた。

お風呂は嫌いなのに、しっかりと隅々まで洗われる。

そんなに長く洗わなくてもいいのに。


 最後に柵の中に戻される。

家の人が飽きるまで撫で回してた。

 

 眠くなったので寝る。



 この家に来てから、何日か経った。

限界だ。ここから出たい。

お母さんに会いたい。


 柵の先の窓の外。

どんよりとした曇り空。


 散歩の時間に首輪をつけられた時、ちょっと緩んでいるのに気づく。

チャンスだ。


 いつもの散歩に庭に出る。

するとポツポツ、と音がしたかと思うと急にザーッと雨が降り出した。


 今だ。


 首輪を一気に外して出口に向かって走り出す。

家の人は追いかけてこようとするが、雨が味方をしてくれた。

一気に家の外に脱出。

とにかく走った。



 なんとか交番にたどり着く。

お巡りさんに事情を説明する。

伝えた番号で電話をつないでもらい、お母さんと話ができた。


 どうやら、自分の家に帰れそうだ。

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飼われるのは嫌だ 花里 悠太 @hanasato-yuta

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