#45 開幕
「へえ、貴方たちも災難だったのね。わ」
私たちはレヴィさんと共に、談笑しながら森の中を歩いていた。私たちが異形衆に行き着くまでの苦労など、そんなことを話して。
「レツハがどうかは知らないけれど、”
「勝てる…か。アレはそんなこともなかった。敵が半分自爆特攻の技をしかけてきたからな。俺たちはその技を避けるのに手一杯で、反撃のひとつも与えられなかった。自爆特攻されてなければ、あの場で死んでたのは俺たちだ。」
「ふ〜ん…でも、自爆特攻しないといけないほどまでに追い詰めた、貴方たちの強さあってのものじゃないの?」
「分からない。あの時彼女がどう感じていたかなんて、俺たちが知る由もない。…死者とは俺は話せないからな」
あの場であの子が、半分自暴自棄になっていたのは確かだ。”
「まあでも、2人で追い詰められる程の実力を持っていて、なおかつ”八獄”にも育てられた。鬼に金棒ね。」
「…そうだといいけどな」
「可愛くないわね。もっと素直に喜べばいいのに。」
「諦めろ。前からこういうやつなんだ。コイツ。てか、俺の時もあんま褒めてくんなかったのに、なんでコイツを褒めんだよ!」
「褒めたらすぐ調子乗って馬鹿の一つ覚えみたいにその褒められたことしかしなかった馬鹿はどこの誰かさんかしら?」
「ぐ…」
…なんか、レツハとレヴィさん、すごい仲良いみたい。正反対な性格の2人のように思えたけど、上手くやれてるようだ。
「…そういえば、騒音が聞こえなくなったわね」
「ほんとだ。話に夢中だったから気づかなかった」
「まぁ、もうしばらくは楽にしてていいわよ。その騒音の原因が離れているかもしれないし」
「近づいてるって言う可能性も考慮しないといけないな」
「そうね。…話題も無くなったことだし、少しだけ私の身の内の話でもしておきましょうかね」
突然、レヴィさんがそんなことを言い出した。だけど、すごく気になる。”八獄”になる前の話なんか、とても興味がある。
「私は、バラの街って言うところの出身だったの。聞いたことあるかしら?」
「ああ…確か、帝国の属国、”ブルーム”の中の街だったか?」
「よく知ってるわね。そう。バラの街はとても綺麗な街並みだったわ。私も、その町の風景がとても好きだったの。」
行ったことは無いが、ブルームには花園があり、その花園がとても綺麗である種のスポットになっているそうだ。
「でも今は、帝国の炎に包まれて消えてしまった街なの。厳密に言えば、廃墟になってる感じね。」
「花園をもう見ることが叶わないのか…少し残念だな。」
「帝国のせいでは無いのだけど、まあ故郷燃やされたら恨むし、その時の怨恨は強いわよね。そんなこんなで私に異形が発現して、リュウゲンに拾われたってわけ。」
その時のレヴィさんの恨みつらみは分からない。いや、分かったとしてもそれを私は受け止められない。風景が大好きだったとさっきレヴィさんは言っていた。だからこそ、その気持ちを理解出来る方法なんて、私たちには無い。
「その後は八獄に入って、森の警備を任された。って感じかしら。詳しくは私もそんなに覚えてないの。ごめんなさいね」
「いやいやそんな、教えてくれてありがとうございます。そんなつらかったこと」
「もういいのよ。辛かったのは事実だけれど、もう今は過ぎ去ったことだもの。踏ん切りはついてるわ」
そうレヴィさんは言うが、ブルームの話をしている時の表情は、少し寂しさがみてとれた。そこに、恨みがあるようには見えなかった。
「身のうちの話はこんな感じかしらね⋯それと、何か聞きたいことは───」
その瞬間、目の前に凄まじい轟音と共に衝撃波が起こったことがわかった。
「貴方、誰かしら。」
「名乗るまでもない。知ったところで無駄だ。お前たちはここで死ぬ。」
「話し合いする気はなさそう⋯ねっ!」
レヴィさんが突っ込んできた人を弾き返すと、初めてその姿が鮮明に見えた
「あの服装⋯!」
「”
「イレギュラー⋯?俺の登場は予想してなかったか。ならば見事な反射神経だな。後ろにいるやつらからは気概が感じられないが、確かにお前からは強者の気配がする。」
以前にも
「貴方たちはここから退きなさい。騒音の原因は恐らくこの人間よ。貴方たちでは手も足も出ず殺されるのがオチだわ」
「んな⋯!⋯いや、反発しても仕方ねえか。逃げるぞ!」
そのレツハの言葉に従い背を向けて逃げようとした瞬間に、目の前に斧が振りかざされようとしていた
「ッ!」
「ッチ!」
「簡単に逃がすと思うか?」
当たると思われたその時、もう一度その斧が弾かれた。
「私がそうさせるわ」
「ほう?面白い女だ。一度ならず二度までも、俺の斧を弾くか。」
二人の間にはピリピリとした雰囲気が流れていた
「早く逃げなさい。あなたたちは騒音の原因を突き止めた。戦果は十分よ。今ここで全員残ったところで、全滅するのがオチだわ。」
「さっき言っただろう?簡単には逃がさないと」
「さっき言ったでしょう?私がそうさせるって」
そのレヴィさんの言葉が気に障ったのか、その男の表情が険しくなる
「レツハ」
「…ああ」
そのレヴィさんの一言とともに、レツハさんがさっきのダガーを取り出して手首を切りつけ、そこにできた傷からできた血液をばらまいたと思えば、それが赤く光り、そこに小規模な爆発が起こった
「逃げるぞ!」
その一言ともに、私たちはその場から即座に離れるのだった
普通から外れた迫害種族 宇賀 狐音 @ukanokoon
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