第7話 ツンツンギンカのテーユーGO!!

 王国尻戦しりいくさは無事閉幕した。

 エイシーがギンカのために用意していた優勝商品は、エイシーがやれる範囲でなんでも願いを叶えるというもの。これでエイシーはギンカに結婚を申し込まれると思っていた。


 思いこむだけなら自由ですから。


 現実はユーマンの優勝。

 そして優勝したユーマンの希望はというと、大量の肉。

 変なのじゃなくてよかったと安心しつつ、ユーマンの家に肉を届けるよう、エイシーは手配をした。



 そして撤収作業が続く広場。

 陽が傾きつつある屋外を作業員たちが忙しそうに行き交い、作業を行っている。今日中に撤収作業は終わる予定だ。


 そんな祭りの後となったその広場を、寂しそうに眺める人物が一人。


「……ギンカよ」

 眺めていたその人物であるギンカに、エイシーはそっと声をかけて横に並んだ。

「終わっちゃったね。でも、意外と面白かったよ」

「そりゃあよかった。ギンカの為に企画したからのう」


 そして訪れる沈黙。

 エイシーも、優勝出来なかったギンカに、なんて声をかけていいか悩んでいた。


「――ハハッ、負けちゃったなぁ」

 そう切り出したギンカ。エイシーの目には、精一杯明るく振る舞っているように見えた。


「順調に勝ってたから、行けると思ったんだけどなぁ……」

「これで、余に結婚は申し込めなくなったな。優勝しなくても、申し込みはいつでも歓迎じゃが」

「べ、別に結婚申し込む気はなかったから、どうでもいいのよ、それは。別れたくて頑張ってたんだし」

「そうだ、ギンカ。ユーマンは言っておったぞ。ギンカが今日一番強い相手だった、と。準決勝までは相手を瞬殺していたみたいじゃからな。余は見ておらんが」

「そうなんだ。私も見てないけど。でも、私は決勝が近付いて苦戦した相手もいたから、やっぱり強かったんだね、ユーマン。そんな相手にほめられて嬉しいけど……また対戦する機会があるならは絶対勝ちたい。それまで特訓しないと。やってやるって!」


 そう言ってギンカはお尻を振った。キレのいい動きをしている。ずっと眺めても飽きないだろう。


「しかし、また尻戦を開くのはいいが……次はギンカも鍛えて硬い硬いの鋼鉄の尻になるのかの?」

「どうだろうね。特訓次第? とんがったお尻になっちゃうかも」


 ギンカがあのユーマンの獣みたいなカッチカッチな尻になるのは困る。惚れた尻は、そんなんじゃないんだ。


「でもさぁ。私負けちゃったから、これであんたとはもう少し顔を合わせないといけないみたいだね」

「余は大歓迎だぞ?」

「私がよくない! それに……嬉しくもないし」

「そんなに照れなくてもよい。では、まだまだ関係が続く記念に、ギンカの料理が食べたいのだが」

「えー……。今日はお店休みだけど……通常料金の五倍出すなら、特別に作ってあげる」

「五倍でいいのかい? それなら出す出す! 喜んで出す。ではテーユーへ行こう! すぐ行こう」

「試合で疲れてるんだから、少しはいたわってよね」

「なんじゃ? だったら、お店までおんぶがいいのか? それともお姫さまだっこか? 選んでよいぞ? 余はどちらでも可能じゃ。鍛えておるからのう」

「どっちも恥ずかしいからいいよぉ」

 本当に恥ずかしそうにそう言うギンカの顔は、にこやかなものだった。


 エイシーとギンカは軽やかな足取りで食事処テーユーに向かう。


 この二人がくっつくのは、まだまだ先のお話。

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よとしり 龍軒治政墫 @kbtmrkk

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