第6話 王国尻戦、閉幕!
決勝戦会場へと降りてきたエイシー。
会場の興奮度は最高潮に達している。
この中で、決勝戦が行われる。
ギンカなら大丈夫と思うが、試合に出ないエイシーの方が緊張してきた。
「王子!」
司会をやっていた男が声をかけてきた。
「決勝戦は王子が司会やりませんか?」
「余がか?」
これは……ギンカの試合を自然に間近という超特等席で見られるチャンス。
コレを逃す手は無い。
「うむ。余がやろう。主催者として、シメを飾ろうぞ」
「さすが王子です。決勝戦の出場者の名前は、ギンカ選手とユーマン選手です」
ギンカの相手はユーマン。
どのような相手かは知らぬが、強いギンカが負けることはないであろう。
ギンカが勝って、余に結婚を申し込む。
うむ。実に素晴らしい流れじゃ。
エイシーは意気揚々と台の前に立った。観客の注目が集まるのが、心地いい。
歓声に、エイシーの気持ちも昂ぶるというものである。
「それでは決勝戦を行う!」
会場が沸いた。国民がこんなに喜んでいるのなら大会を開いて正解だったと、改めて思う。
「まずはギンカァ!!」
両手を振って愛嬌を振りまきながら登場したギンカ。相変わらずかわいいと思う。
結婚して欲しい。
気分を切り替える為に一回咳払いを入れて、
「その相手はぁ……ユゥーマァン!!」
一方、対戦相手のユーマンは、ギンカと正反対にムスッとした表情で登場した。
そこはどうでもいい。
それよりも、ギンカよりも二回りは大きいであろう巨体を揺らし、のっしのっしと現れたことが問題だ。
(こんな人、いたかの?)
エイシーは動揺を表に出さないように考える。
思えば、ギンカばかり見ていた気がする。ロータルに言われて会場全体を見た時はあったが、ユーマンの姿は見なかった。
(ああ、ロータルはこれを言いたかったのか)
確かに全体が見えていなかった。途中勝ち抜いているユーマンの姿なんて、一度も見たことはない。
だがすでに時遅し。
ギンカを見ると、明らかな強敵感を出しているユーマン相手に、
むしろ、気合いが入っている。やる気に満ちた顔だ。
ギンカはどんな強敵相手にも、勝つつもりで挑む。
そんな彼女を信じてあげられなくてどうする。
それよりも、
「台は壊れないかのう」
エイシーはそっちが心配だったが、
「ユーマン選手は何戦もしていますが、どの台もビクともしません。さすが王国一の腕利き木工職人です」
前司会がそういうなら、事実なんだろう。
台の心配はしなくていいようだ。
ここで試合中止には出来ないし、まだギンカが負けると決まった訳ではない。
試合を進行しなければならない。
「両者、台へ!」
エイシーの声を合図に、二人は背中合わせで台に乗る。木製の丸い台は
そしてお尻を合わせる。身体の大きなユーマンは、ひざを曲げて腰を落とし、ギンカの尻に合わせた。
こうして見ると、やはりデカい。身体だけでなく、尻も。ギンカの尻も大きいが、それよりも大きい。
ギンカが勝てるかどうか、あとはもう成り行きに任せるしかない。
「両者よいか?」
双方の顔を見るとギンカは力強く、そしてユーマンは静かにうなずいた。
「……ファイッ!!」
エイシーの声とともに、ユーマンは勢いよく尻を突き出した。
衝撃でギンカはバランスを崩しそうになるが、なんとか耐えきる。やはりバランス感覚は悪く無い。
それからギンカの反撃。だが、ユーマンの身体はどっしりと安定しており、ギンカの攻撃にびくともしない。根でも生えている、という表現がぴったりだ。
ギンカが効いているのか効いていないのか分からない攻撃を繰り返していると、ユーマンがお尻を引いた。
(大きな一撃が来る!)
ギンカは背中――いや、お尻で感じ取った。
一撃の重いユーマンのお尻がこのままぶつかれば、確実に打ち負けるだろう。
(正面がダメなら……)
ギンカはお尻を横に動かした。
勢いよく殴りかかってきたユーマンのお尻は、大きく空振りとなる。
「スキ有り!」
空を切ったユーマンのお尻が戻る時、横からギンカのお尻が襲いかかった。
「尻フック!!」
エイシーはつい叫んでしまった。聞きようによっては鼻フックの派生のように聞こえるかもしれないが、そんなことはどうでもいい。
正面が駄目なら横から! 相手もこれには……。
と思ったが、ユーマンはギンカの攻撃を横尻で受け止めていた。
(このケツは、盾かなにかか? それとも鋼鉄の尻かい? あやつの尻はどうなっておる!?)
これで駄目なら、もうどうしようもない。
「フンッ!!」
ユーマンは尻を横に振る。
ゼロ距離で尻アタックを受けたギンカ。
その勢いで宙を舞い、身体が地面に叩きつけられた。
残念な結果だが、公正な立場のエイシーは宣言をしないといけない。
「……優勝っ!! ユーマン!!」
「うおおおおおぉぉぉおおおぉぉぉおぉぉおおおぉ!!」
観客の歓声とともに、ユーマンの野獣のような叫びが広場に響き渡る。
やっぱり獣ではないか。
こうして、王国
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