来年に向けて

■これまでの受賞の傾向


・大賞

 二〇一七年 恋愛

 二〇一八年 現代ドラマ

 二〇一九年 現代ドラマ

 二〇二〇年 恋愛✕ホラー

 二〇二一年 現代ファンタジー

 二〇二二年 恋愛

 二〇二三年 現代ドラマ

 

 恋愛要素、あるいは現代ものが選ばれている傾向がみられる。



・読売

 二〇一七年 現代ドラマ

 二〇一八年 恋愛✕ミステリー

 二〇一九年 恋愛ミステリー✕ホラー

 二〇二〇年 現代ドラマ

 二〇二一年 現代ファンタジー✕ホラー

 二〇二二年 現代ドラマ

 二〇二三年 現代ドラマ✕LGBT恋愛


 現代もの、時代性や時事、話題になったものなど選んでいる。



・協賛

 二〇一八年 恋愛

 二〇一九年 現代ファンタジー

 二〇二一年 恋愛

 二〇二二年 現代ドラマ

 二〇二三年 現代ドラマ


 ※二〇一七年と二〇二〇年は協賛企業はなかった。


 毎年テーマは変わるが、高校生らしい青春を感じさせるものが選ばれている。



 これまでのロングストーリー部門の受賞傾向を見ると、大賞は現代を描いた作品が選ばれている。昨年は恋愛ものを選んでいたので、今年は恋愛ものを外したとも考えられる。

『一夏の驚愕』は恋愛ものではない。少年が喫茶店という大人の香りのする場所でひと夏を過ごし、共に過ごしてきた変なおじさんが憧れている作家だと知ることで、少年がちょっと大人になったような、ジュブナイル小説に感じられた。これを高校生が書いたところも、すごいなと感じられる。


 読売新聞社賞の選考委員は自社の人であり、カクヨム甲子園の結果を読売中高生新聞に掲載することもあって、記事にふさわしいことも考慮に入れているのだと考える。

 だから、時代性や時事、話題になったもの、あるいは新聞社として発信したいメッセージを代弁するような作品を選ぼうとする考えを持っているかもしれない。

『僕は男の子だけど王子様に愛されたい』はLGBTを題材に書かれている。読んでいたときから、読売新聞社はこういう作品は好むだろうと思った。


 協賛企業は今年、テックウインド株式会社さん。テーマは『集中力』でした。

 毎年変わるのだけれども、「 高校生の皆様に瑞々しい感性でひたむきに打ち込むことの大切さを物語に描き出してくれることを期待し、AKRacing賞では『集中力』をテーマにいたしました」とあるように、高校生が持っている感性を感じられる作品を期待していると思います。

『グリッサンド』は高校を舞台にした物語。読書する姿から集中力を感じられ、直接的よりも間接的に、エピソードとして伝わってくる作品が良かったと思われる。


 奨励賞に、体験談の『きっと繋がる』が選ばれていたのも特徴的だった。選ばれるのは小説だけではない、内容や書き方次第で受賞できることを表している。

 また、史実を扱った『春の標に、朧月。』も選ばれている。

 カクヨム甲子園にはそれだけ、さまざまな作品が応募されていることも意味し、間口が広い証でもある。


 毎年のことなれど、今年はとくに死を描いた作品が多かった。

 いつもの恋人や幼馴染、友人や家族、自分自身などが死ぬだけでなく、幽霊やいじめによる自殺、レモンティーが自殺したり、水槽に入れた恋人の死体を眺めたり、自殺の名所に殺した彼氏を捨てに行く、農業校の鶏の屠殺だったり、人類が滅亡した電脳世界などなど。ホラーやSF、ファンタジー作品でも見られ、まだこんな描き方があったのかと、種類の多さに驚き、感嘆させられた。

 死を描くことで生を描く手法もあるし、現代の高校生は少なからずネガティブな一面を持っている証でもけれども、読み手側がもとめているニーズは果たしてそうなのか。

 作るときに考えてほしいと思う。


 来年はどうなるのだろう。

 わからないながらも受賞作を読めば、カクヨム甲子園がどのような作品を求めているか、目安になるだろう。 

 一次選考を通過した中間選考作品を読んでも、小説として最低限の出来であることが求められているのがわかる。

 多少の誤字脱字、文章の書き方がおかしくても大丈夫。

 文字数を守り、カテゴリーエラーを防ぐこと。 

 三幕八場構成であり、客観的状況説明の導入、主人公の主観である本編、客観的視点のまとめである結末であること。

 興味が持てる面白い書き出しをし、文法は正しく読みやすく、伝わりやすくて、終わりは盛り上がっていること。

 読み手にも心情や状況が伝わるよう描写すること。

 時代性やキャッチーさ、目新しさがあること。

 前年と似た作品を書かないこと。

 作者のエゴを抑え、こだわりが感じられるもの書いてみてください。


追記

 ロングストーリー部門は、四百自詰め原稿用紙換算枚数五十枚くらい。ロングといえども短編小説なので、物語内の時間軸を長くしないこと。長くても数カ月位を目安にしてみてください。(過去に「こんなことがありました」という部分は省く)

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「カクヨム甲子園2023」の作品を読んで:ロングストーリー部門 snowdrop @kasumin

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