読みやすくソリッドな文章と、謎めいたモチーフ

 カクヨムSF研3にご参加いただき、ありがとうございます。
 本作については以前、Twitterスペースにてレビューさせていただいたのですが、それに向けて執筆した原稿を、こちらにも投稿いたします。
 また、もしレビュー会への誘導等、不明瞭な点がございましたら、申し訳ありませんでした。
 以下、本文です。

 乾いた文章は読みやすいし、雰囲気も出ていて良かった。
 気になったのは大きく二点で、まず作中で重要なモチーフとして繰り返し出てくる「天道虫」について。第3話でそれが何を意味するのか、ということが示唆される訳だが、「脳漿ないしそれのはみ出たセクサロイドの死体」、本質的にはそれがもたらす「作家に対するインスピレーション」を示すと思われる。後者であれば、天道虫が幸運をもたらす虫であると強調するなど、段階を踏めばまだ納得が行くが、前者の場合は、天道虫とは少しイメージが結びつき辛いので、なぜ天道虫の比喩でならなかったか、ということに対する説得力にやや欠けるように思えた。
 第二点が、セクサロイドについて。主人公の記憶を読み取って、過去に殺したセクサロイドのマネをしているのか、記憶を読み取ったことで、殺されたセクサロイドの記録を照合・インストールしたのか、その辺りの理屈づけがもう少ししっかり説明されると嬉しかった。主人公がそういうものに明るくない、という記述があったと記憶しているため、仕方ない部分はあるかも知れない。
 また、個人的な興味として、セクサロイドが台頭した世界では人間の相手が贅沢品になる、という説明がなされていたことに関連して、消費者ではなく、働き手の目線からは、どういう変化が起きたのかが気になった。風俗業でも失職者が大量に出たのか、或いは却って待遇が良くなったのか、など。