天道虫とは何なのか

天道虫とは何なのかが語られないままセクサロイドのいる世界観が展開されていくのが楽しかったです。
文体が読み心地よく素敵なノリで、軽い口当たりだけれど上質に感じました。2話まで至ると多少メタ的な要素が挟まれ、何も知らずにタイトルと1話冒頭に惹かれて読み進めていたので、多少驚かされました。
主人公を取り巻く世界を楽しんだら天道虫が何かがますます強く気にかかりますが、ちょうど良いタイミングで天道虫の正体が明かされ物語は幕引きとなります。
合間に挟まれる濡場も人工物との行為に冷めないように必死な姿が世界観を反映しており、エンディングを読んでから全体を振り返ると、主人公周辺に人間はおらず、機械(セクサロイドしか登場しないので)に囲まれていたことが浮き上がり、その血が通わない状況のなかで「天道虫」を彼が探していたことも作品全体に意味を持つかに思われます。

軽妙洒脱で素敵な短編でした。