飲酒運転は撲滅できるのか?②

エテルナ(旧おむすびころりん丸)

飲酒運転は撲滅できるのか?②

前回は飲酒運転の撲滅について、アルコール・インターロックという受動的な解決方法についてのお話をしました。


呼気を検査しなければエンジンが掛からないというシステムは、罰則と違い強制的に運転を禁じる為、個々人の意志とは別角度で抑止力を発揮します。

しかし抜け道も存在する為、飲酒運転を完全に防ぎ切ることはできません。


また、罰則やアルコール・インターロックなどの縛り付けは、酒を嗜む人にフラストレーションを溜めこみます。

そして「一回くらい……」と、その一回が破滅を導く可能性が十分にあります。


罰則や装置があるにも関わらず、飲酒運転をする奴のことなんて知るか!


ええ、ええ。分かります。筆者はここ3年間で2回しか酒を飲んでません。その2回は会社と取引先の会合で、付き合いが悪いと思われるのも癪だから飲んだだけです。

だから運転してまで酒が飲みたい人の気持ちに共感はできないですし、もっと言えば、考えることが好きな筆者としては、思考力が下がり馬鹿になる酒という飲料は、人生において必要のないものです。


しかし筆者個人が酒と関わりがないからといって、飲酒者と関わりが無くなる訳ではありません。

飲酒運転者なんて勝手にくたばれ! そう言いつつ、殺されるのは自分かもしれません。

つまり真に飲酒運転を撲滅するには、飲酒をさせない世の中ではなく、飲酒をしたところで安全な世の中を作るということです。


飲酒運転を撲滅するために、まずは実際に飲酒運転の起きる地域について見てみましょう。

人口に対する飲酒運転の割合が多いのは、沖縄や茨城です。逆に少ないのは、東京・神奈川・大阪です。

飲酒運転の検挙率は地方に多く、都会に少ないことが分かります。そして地方は公共交通機関に乏しく、自家用車を持っている家庭が大半です。


公共交通機関が充実している都市は、わざわざ飲酒運転する必要がありません。車も持っていないのだから、そもそも運転ができません。

そしてここが重要な部分ですが、都市部だろうが田舎だろうが、潜在的に飲酒運転をする人間性の存在割合はたいして変わらないということです。

都市部の人間がそのまま田舎に行けば、彼らの中に飲酒運転をする者が確率的に現れますし、逆に田舎の人間が都市部に来れば、飲酒運転をしていた者も控えます。

地方の者が突然に良い子になった訳ではなく、要は厳罰化しなくても、飲酒運転する必要が無い環境下であれば、必然的に飲酒運転は無くなるという、ごく当たり前のことです。


つまり地方の公共交通機関が充実すれば当然、飲酒運転割合は減りますが、とはいえ現実はのところ、地方は過疎により廃線が進む一方です。

今さら地方の公共交通機関を充実させるのは、経営的にも採算がとれず困難といえるでしょう。

タクシーや運転代行も同じです。また、利用者にそれなりの料金がかかる為に敬遠されています。


しかし、仮に通常の運転と変わらない料金。つまり燃料代だけで使える個人個人のタクシーがあったらどうでしょう?

車両を待つ時間も必要ありません。行きたいと思えばすぐに行け、酒を飲んだ後も、同じ車両が家まで運んでくれる。

そんな夢のようなタクシーがあれば、飲酒運転の必要は無くなると思いませんか?


回りくどい言い方をしましたが、つまりは自動運転車です。

現在、ODD(運行設計領域)を自動で走るレベル4の自動運転車が世界で実用化されはじめています。公共交通機関としてが一般的ですが、レベル4の自家用車の設計も進められています。

しかしレベル4は上記の通り、高速道路などの決められた区域内でしか自動運転が行えず、居酒屋から自宅の間を自動運転のみで凌ぎ切ることはできません。


個人所有タクシーとも言うべき自動運転車になる為には、更にその一つ上、レベル5の自動運転機能が必要となります。

レベル5の自動運転であれば、ODD(運行設計領域)の概念がなく、あらゆる場所を自動で運転してくれます。

しかし、これを実現するハードルは極めて高く、常に変わり続けるあらゆる道路を記憶させるか、高精度なAIに瞬時に状況を判断させる必要があります。

ですが筆者の記事では度々ご紹介した通り、AIの進歩は人の想像を絶するものです。そんなことは人にしかできないと思っていたことが、あっという間にAIにできることになり得ます。


仮にレベル5の完全自動運転が実現したならば、そして、それが普及したならば、車の有無が飲酒の制限となることはなくなり、敢えて悪事をするような馬鹿者を除けば、飲酒運転はほぼほぼ撲滅することになるでしょう。



ルールを守るのは鉄則ですが、しかし破る者は必ず現れます。運転とは別ですが、『あなたは未成年時に飲酒の経験はありますか?』というアンケートに対し、およそ45.7%もの人が『ある』と答えてます。

およそ半数の国民が決まりを破って、お酒を飲んだことがあるということです。この45.7%のルール違反者を根絶できると思いますか? 恐らくそれは無理でしょう。


反面、最近は若年層の飲酒離れが進んでいます。2000年から2020年の20年間で、20~29歳の飲酒習慣は半分以下に減少してます。

直近で言えばコロナ渦も関わるでしょうが、何よりも娯楽が多様化したことが要因でしょう。

過去にはすることもなくテレビを垂れ流していた時代もありましたが、今では有り余るほどのコンテンツに溢れ返り、とても全てを見切ることはできません。

つまり禁酒法を設定するまでもなく、コンテンツを打ち出せば、勝手に飲酒率が下がるということです。


強制力を行使する訳でもなく能動的に、反発もフラストレーションもなくやめさせることができてしまいます。

こういった問題解決方法が健全で、完全自動運転に限らず、他に能動的な方法があれば、効率よく飲酒運転を減らすことができるかもしれません。

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