武士

その生き物の歯が今にも勝の体に触れそうなその時、


ぶんっと音がした後、その生き物は上下にふたつに割れた。

断面から赤い血が噴き出す。


勝は何が起きたのか分からずしばらく呆けていた。


(助かったのか...?)


勝は目の前に全身が黒色の甲冑に包まれた武士風の人物を見つけた。面を被っており素顔を見ることはできない。甲冑はかなり使い込まれていてボロボロだ。


勝はとりあえずお礼を言った。


「あっ、助けていただきありがとうございます」

「...........。」

武士風の者は何も答えず、じっと勝の方に顔を向けている。


「あの...ここはどこなんですかね?俺気づいたらここにいて...あはは

「.........。」

またも何も返って来ない。勝はこの状況で唯一の希望である者とここで離れたくなかった。ここで1人になればすぐに死んでしまう自信がある。


(話せないのか?俺を助けてくれたってことは味方なんだよな?)


勝がどうしたもんかと悩んでいたら、その武士は剣を振り上げ、何も無い虚空を切った。


「!!!」


何もなかった空間はさけ、その裂け目からは虹色のバグのような空間が広がっている。人1人分通れる大きさだ。


武士は裂け目を指さした。


(入れってことか?)


どう見てもやばそうな空間である。しかしここにいるよりはましかと考え直し、意を決して飛び込んだ。


勝が裂け目に飛び込んだ後、静寂となった場所で1人残った武士が呟いた。


「原罪.......」


そう呟くと、武士は森の中に消えていった。


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