敵対生物

日が昇り、辺りに光が差してくる。


(ようやく朝か。耐えたぞ)


夜の間ひたすらうずくまって生存できたのはただの運である。ここの住人から見たらただの自殺行為だ。


勝は自分が着ているものを見た。

長袖長ズボンのパジャマに素足。

寝ていたのだから当然である。


(うーん?寝てる時と着ているものが同じだ。。。ひょっとして夢ではないのか?身体中痛むし、、)


勝の体には小さな無数の切り傷があった。足に限っては、森の何も整備されてない地面を全力疾走で走った為、枝や石が突き刺さり相当な傷となっている。


(足が痛すぎる。このままだと歩けないぞ。それに喉もカラカラだ。)


勝は身につけているパジャマ以外持ち物がない。スマホも寝る前に充電器に差し込んでいる。今は持ってない。


(水を探さないと。。。しかし

どうやって探す?このままじゃまとも歩けないぞ)


勝は八方塞がりの状況で、どうにか現状打開するべく回りをキョロキョロし始めた。何か使えるものは無いかと。


(日のおかげでだいぶ怖さが薄れてきた。周りを見る限り普通の森だな。)


広葉樹林がひしめいており、鳥の鳴き声が聞こえる。

勝はしばらく周りを見渡していたが、そこで杖の大きさぐらいの枝を見つけた。そこまで5mほどあり、足が痛む勝は這って進んだ。

枝を掴んだ勝は、その枝を支えにして立ち上がった。そこそこ頑丈なようでで体重をかけても折れる気配はなかった。


(かなり痛いが、杖のおかげで大分軽減できるぞ。これなら歩けそうだ。)


勝はその杖にかなりの体重を預け、足の負担を軽減した。

あまりにも不格好な為、亀のような歩みであるが着実に進んで行った。


(まずは水だ。人が水無しで生きられる日数は僅かだと聞いたことがある。つまりこのまま水を発見出来なければ死ぬ。)


正確には3日ほどで死ぬ。彼は休憩しながらも3時間ほど歩き続けた。しかし何も見つけることができない。どうすれば水を発見できるのかというノウハウもない。

当てずっぽうで歩いてるだけであり、完全に運まかせだ。


(足がきつい。。。水はまだか。まだ喉は耐えられるが体力が持たない。。。)


また小休憩入る。座りながら木にもたれ掛かった。

息を整えながら休憩すると、どこからかカサカサと葉が揺れる音がした。何かが動いて葉を体にすり当てた、そんな音だった。


「!!!」


勝は杖を使いながら素早く立ち上がり、音がした方を向いた。

走って逃げれる状態でもないので、しばらく凝視する。

そうするとズルリズルリと地を這うように何かが茂みから現れた。


(なんだこいつは!!)


出たきたものは勝がこれまでの人生で見てきたことが無い生き物だった。

全身が黄色がかっおり、胴体は崩れた球の形をしている。大きさは猪ぐらいだ。しかしその生き物の特筆すべき点は、いくつもの手が身体中から生えていることである。子供の手から大人の手まで大小、長さが様々な手が胴体のあちこち20本ぐらい付いている。そして胴体に口が1つだけ付いており、まるでカミソリのような歯が並んでいる。

その生き物には足らしきものはない。体に付いている腕の中の6本ほどを使い体を支えている。


(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ)


勝は杖を放り投げ、一目散に逃げ出した。

足に激痛が走るが今はそれどこではない。もし捕まってしまったらどうなってしまうのか、あのカミソリのような歯が物語っていた。


足から血を噴き出しながら勝は全速力で走る。後ろをチラリと見ると、あいつがまるで蜘蛛のように追ってきていた。


カサカサカサカサ


(嫌だ!捕まりたくない!嫌だ!嫌だ!嫌だ!)


勝は泣きながら走る。走るスピードはやや相手の方が上であろうか。徐々に距離が詰まっていく。


カサカサした音がどんどん近づいてくる。勝は恐怖心からか叫びならが走り続ける。


「うっがっ!」


蜘蛛のような生き物の特に長い手が勝つの足を掴んだ。そのせいで勝は派手に転ぶ。地面に頭をぶつけるが土壌が柔らかいのと石のような硬いものが運良くなかった為怪我は免れた。


その生き物は、素早く勝の両手足を拘束し、口を大きく開けた。勝を丸呑みできるのでないかという大きさである。

口内に無数にあるカミソリのような歯が回転する。そして勝を口内へ引きづりこもうとする。


「あっあああああーーー!!誰かぁ!!誰か助けて!!嫌だ嫌だ嫌だ!!!」


勝は半狂乱になりながら、体を暴れさせ拘束を解こうとする。

しかしその生き物は獲物が暴れる度に使っていない手を拘束に使い、逃げないよう固定にする。


ーーーそして、今にも回転する歯が勝を削ろうとしていた










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