第25話 七不思議

「行くか」

「うん!!」


 学校の階段にある鏡にはね、うわさがあるの。


 四時四十四分に、体全体を映すことが出来る鏡の前に立つと、自分の望む異世界に招待されるみたい。



「時間は?」

「残り一分」



 招待人は、時間になると鏡の中から姿を現し、目の前に立つ人を鏡の中に引きずり込もうとするらしいよ。



「三、二、一!」


 目の前にある鏡が歪み出す。そこから伸びてきたのは少年の両手。私の手を掴み、肩、頭、体、足。どんどん姿を現す。



 この噂はね、本当だった。嘘ではなく、ただの噂ではなく。本当に、存在する七不思議。



『――――――待っていたよ!! 美波ちゃん!!』

「うん!! こんにちは! 異鏡君!!」


 鏡から姿を現したのは、燕尾服を着た一人の少年。黒い瞳、満面な笑み。

 階段の下や上からは、花子ちゃんやベートーヴェン、百目さんやモナリザが顔を覗かせている。


『今日も沢山お話しようよ!!』

「うん!! 今日もたくさんお話を持ってきたよ!! 今日はね――………」


 今日もまた、たくさんのお話をしよう。例えば、私の言葉が、初めて家族に届いたこととかね!


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異世界への招待人、異鏡君 桜桃 @sakurannbo

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