異世界への招待人、異鏡君

第24話 必ず

 朝、夜中の学校から戻り、部屋で一人で寝ていると、キッチンから音が聞こえた。

 珍しく母親が帰ってきているみたい。いつもは実家に帰っていたり、遊び歩いているのに。


 あ、もう起きなきゃいけない時間だ。リビングに行かないと……。


 欠伸を零しながら部屋を出て、リビングのドアを開けた。


「あ」


 母親だけじゃ、ない……。

 お兄ちゃんもいる。リビングでスマホをいじりながらしょくぱんを食べていた。


 誰も、私の事なんて気づいていない。私の存在はないかのような空間、家族。

 いや、これを家族となんて、呼べるのだろうか。


 やばい、心折れそう。




『必ず届くよ!! 頑張って!!』




 っ、ここで諦めるから駄目なんだ。

 頑張る、頑張るよ、私。諦めない。


「お、お母さん」


 ……………………。


「お、お母さん!!」


 ……………………。


 届く、必ず、届く。諦めなければ、必ず届くもん!!


 すぅ、はぁ。すぅううう──……


「お母さん!!!!!!!!!!」

「っ、な、なによ…………」


 届いた、びっくりしたような顔を浮かべてる。お兄ちゃんも、一緒に私を見ている。


 やっと、私の声が二人に届いた。


 ここから、私は前に進む。大丈夫、私は一人じゃない!


「私、あのね――――――」


 繋がる言葉、届いた想い。諦めなければ、必ず届く。


 何度でも、何度でも。名前を呼べば届くんだ――…………


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