第23話 村人
「――――ただいま、異鏡君」
『っ、お、かえりなさい。美波ちゃん!!』
ここは、学校の廊下? 私は今、静稀に抱えられ、異鏡君に手を握られている。
温かい、温かいなぁ。
ん、体が重たい、頭がふらつく。
「まだ動かない方が良くないか? まともに食らったんだぞ。異鏡からの攻撃」
『うっ、それを言わないで…………』
「あ、なんか悪い」
胸を抑えた異鏡君。静稀と言い争っている瞳は、私の知っている黒色。
そうか、いきなり視界が遮られた理由は、異鏡君からの攻撃だったのか。
溢れる力が私に襲い掛かった的な感じかな。
「えっと、どんな力だったの?」
『…………』
え、何故か気まずそうに顔をそむかれてしまった。
なんで、え? もしかして、結構やばい攻撃を食らったの?
『……………………夢の中に閉じ込める、力』
「え?」
『夢の中に閉じ込め、永遠の眠りにつかせるもの』
………………………………死ぬやつじゃん!?
「私、戻ってこれたの奇跡?」
『私の”我”の部分を途中で静稀が封印してくれたから、力を弱める事が出来たの。でも、一度発動してしまった力は解除不可能だから引き上げたのさ、現実世界に』
なるほど。もしかして、あのまま睡魔に抗う事をしないで眠ってしまっていたら。声が聞こえなかったら、私は永遠に夢の中にいたって事?
こわっ!!!!!
『よかった…………』
「え?」
『戻ってきてくれて、私が君達を殺さなくて、本当に良かった…………』
私の肩に異鏡君の頭が乗る、少し冷たい。もしかして、泣いているの? 濡れているような感覚が肩に……。
――――――ぐすっ
……………………ふふっ、可愛いな、異鏡君。やっぱり、弟みたいに可愛い。
「大丈夫、大丈夫だよ、異鏡君。私は戻ってきたよ、生きてるよ。異鏡君の声のおかげで、名前を呼んでくれたおかげで。私は戻ってきた。ありがとう」
『…………わかった?』
「え?」
今の流れで何が”わかった?” なの?
『人の声は、最初は聞こえない。でも、何度も何度も呼び続ければ、届くんだよ。誰にでも、届くの。諦めなければ、何度でも』
っ、そうか。届くんだ。届ける事が出来るんだ。
私の声、異鏡君の声も、お互いに届いた。
「うん、ありがとう、異鏡君」
『…………うん!!!』
あ、朝日が昇る。
いつもの笑みを浮かべる異鏡君。私達を見て、微笑む静稀や花子ちゃん。
青空が広がる外、太陽が昇り私達を照らしてくれる。
『時間だよ』
あ、異鏡君の身体が透けてきた。花子ちゃんの体も。
幸せな時間が、終わる。
『大丈夫だよ、美波ちゃん』
「え……」
『君には沢山の村人がいる。君は一人じゃない。だから、大丈夫!!!』
私の頬を両手で挟み、異鏡君がムニムニしてくる。もう、そんな笑顔で言わないでよ。
大丈夫って、思っちゃうじゃん。
「うん、また来るね、異鏡君!!」
『待ってるよ!! 美波ちゃん!!』
終った、私の幸せな時間。でも、大丈夫。
私には手を差し伸べてくれる村人が沢山居るもん、だから、大丈夫。
またここに来る時には、たくさんの話を準備するからね。だから、待っていてね、異鏡君!!
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