【2-12】 コナリイとその部下たち 上
【第2章 登場人物】
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帝国首都・ターラの一角を、陸軍省関連のいかつい施設群が占めていた。
それらのなかに、一風変わった煉瓦造りの建物がある。この可愛らしい建造物は、所有者名を由来とする通称で親しまれている――コナリイビル、と。
「みんな、こわい顔をしてどうしたの?」
同ビル最上階――3階・准将執務室では、可愛らしい主人の前に配下たちがいかつい顔を並べていた。
帝国暦384年の秋も深まりつつあるが、武断派の男たちが集うとやや暑苦しいものを感じる。
戦場では怖いもの知らずの彼等も、愛くるしい上官に第一声を発するには戸惑うらしい。
同僚たちのそうした様子を察して、年長者のサミュエル=ライリー大佐が口火を切る。誠に申し上げにくきことですが、と前置きのうえ。
「あの男は、兄君・アルイル公の……東海岸側の人間ですぞ」
コナル=ケルナッハ中佐、ギャリー=ケフト中佐が続く。
「さよう。遠くない将来、あの紅髪はアルイル公の
「そのような者に、重砲火器の調達のみならず、部隊再編まで任せては、我らの戦力が東海岸側に筒抜けとなります」
「……」
でも、イアン=ダーモット少佐は続かない。
隊随一の
執務用デスクを挟んで、革張りの椅子にちょこんと座る金髪の少女は、部下たちの用向きを理解した。
彼等――ダーモットを除く3名は、
大海アロードを挟んで、兄妹両派閥は
兄・アルイルとその一派は、帝国東岸領――イーストコノート大陸の西側沿岸部――に圧倒的な所領を保有していた。
妹・コナリイとその一派は、帝国本土――ミイス大陸――の片隅に地位相応の所領しか保有していなかった。
【世界地図】 航跡の舞台 ブレギア国編
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330667919950277
帝国宰相の兄妹両派の対立――それは、日に日に深刻化している。
前年、コナリイ一派が平定したミイス大陸での反乱騒動でも、賊側にターン=ブリクリウ大将――アルイルの
【2-10】 黒髪の先任参謀と紅髪の軍政監督
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沈痛な配下たちの様子とはあべこべに、コナリイは屈託のない笑みを絶やさぬようにして、口を開く。
「実は、大砲の購入や砲兵の編成だけではなく、その訓練指導まで彼に任せようと思っているの。ファディの兵・砲進退も、セラ=レイスの理論にもとづいて練り直しているわ」
言葉とともに鋭さを増していた配下たちの
だが、コナリイの本領発揮は、これからだった。
「「「な、なんですとぉーーッ!?」」」
つんのめるような形となったライリー・ケルナッハ・ケフトは、慌てて体勢を整えると、口々に異を唱え始める。
「な、な、なんと!?」
「我等に課されている3号作戦の全容まで!?」
「そこまで手の内を明かすと、本気でおっしゃられているのですか!?」
内々に命じられ、水面下で準備を進めている極秘作戦にまで、女児准将閣下が紅髪の新参者に披露しようとしている――ライリーたちはいよいよ、収まりがつきそうにない。
「だって、敵が分からないと、準備も進まないでしょ」
だが、コナリイの説明は、部下たちの耳に届いていないようだ。
そんなことをしたら、こちらの機密事項が、兄君陣営へいよいよ筒抜けになる――青年将校たちは額を集めている。
「……ファディ、どうしよう」
少女は背後へ――侍立する七三眼鏡へ視線を送る。ファーディア=モイル中佐の縁なし眼鏡は、沸騰する同僚たちなど興味がなさそうに、明後日の方向を眺めていた。
彼は、渦中の人物の副官と紅茶を飲んで以来、ますます何を考えているのか、分からなくなっている。
【2-7】 少女指揮官と女副長
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「……」
コナリイは正面に向き直る。
将校たちも姿勢を正した。上官の前であったことを思い出したようだ。
金髪の少女は、ゆっくりと両目を
「……大丈夫。兄上たちは、彼を重用していない」
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
部下たちの気持ちが分かる方、コナリイの意図が気になる方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
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コナリイたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「コナリイとその部下たち 下 《第2章 終》」お楽しみに。
コナリイが活躍(?)した第2章も最終話となります。
コナリイは、「戦闘の詳細」や「砲兵の有効活用」を知りたいがためだけに、彼に再三再四、ヴァナヘイム戦役の
彼女はそこから、兄陣営の兵馬練度、兵装水準、それに将校どうしの関係性まで汲み取っていたのである。
紅毛の将校の実体験から得られた情報と、麾下の諜報担当が得ていた不確かな情報とを付き合わせるという、器用なこともこなしていた。
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