【2-1】 初顔合わせ 上
【第2章 登場人物】
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帝国暦384年6月――セラ=レイス一行は、初夏のさわやかな日差しの下、大海アロードを西へ進んでいた。
彼等は、東部方面征討軍(東征軍)・ズフタフ=アトロン大将の
第1部【16-12】異動命令 上
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突然の異動辞令により、引継ぎと挨拶回りもそこそこに荷物をまとめるや、彼等は東征軍を離れたのだった。
大型木箱10個分にまで膨れ上がったニアム=レクレナ少尉の私物によって、力自慢のアシイン=ゴウラ少尉が潰されたほかは、大きなトラブルは見られない。この珍事は、ヴァナヘイム戦役の作戦行動中の7不思議に加えられ、語り継がれることだろう。
アトロン老将の下を離れるや、彼等は一路、東岸領一の港・ダブリンへ向かった。そこで、帝国本土・エリス港行きの快速船に乗船したのである。
【世界地図】 航跡の舞台 ブレギア国編
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330667919950277
レイスは潮風に紅髪を揺らしたまま、船尾の甲板で横になっていた。
彼は、水平線の向こうへ消えて久しいイーストコノート大陸を――否、そこに置き去りにしてきた赤毛の少女の姿を探していた。妹の面影を重ね合わせてきた大切な存在を。
――未練がましいな。
レイスは苦笑する。それでも、航跡の先から視線をそらそうとはしなかった。
宰相閣下のご令嬢は、ようやく11歳になると聞く。齢70の老人から齢11の女児とは、まるで祖父から孫――上官が変わりすぎるにも程があろう。
だが、新たな上官となる童女になど、レイスはさしたる期待も抱いていなかった。
父や妹の最期――階級社会の理不尽の狭間に傷つき倒れた家族たち――を看取って以来、彼は大貴族に対して嫌悪感しか抱くことができなかった。まして、その子女などに期待することなど馬鹿げている――そう割り切っていたからだ。
第1部【9-7】舟出 上
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第1部【9-40】 落花
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先のヴァナヘイム戦役に散った、レディ・アトロン――帝国の権威主義を忌み嫌い、弱き者に最後まで手を差し伸べようとした存在など、もはや絶滅危惧種なのだ。
だいたい、「11歳の女児准将」など、大貴族特権の権化そのものであろう。レイスにとって
だが、彼は軍籍に身を置いている。まして、帝国宰相名による異動命令とあっては絶対だ。
そもそも、異教徒との血潮と砲煙にまみれた前線勤務から、ご令嬢との香気と美食にまみれた帝都勤務へとは、
せいぜい、彼に出来ることは、少女の容姿が端麗なまま生育していることを太陽神に祈るくらいであった。
彼女を遠目に見かけたのは、もう何年も前のことである。時の経過とは残酷なものだ。「歩くラード」などと揶揄される
兄将軍よりも妹将軍の方が、凶暴性が薄れていてほしいとまで祈るのは、過剰な願望だろう。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
久々のセラ=レイスの登場を喜んでいただけた方、
レイス一行との船旅を少しだけ体感いただけた方、
🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533
レイスたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「初顔合わせ 中」お楽しみに。
「……」
レイス隊副長・トラフ中尉が岸壁に戻って来ると、そこは大道芸会場になっていた。汽車の切符手配のため、彼女は先行して下船し、駅窓口に向かっていたのだ。
観客の輪の中心には、彼女の所属先の部隊が陣取っている。
船客たちは、拍手や歓声を送っている相手が、帝国東部方面征討軍の参謀部 元メンバーであり、ヴァナヘイム国を滅ぼした頭脳集団とはよもや思うまい――。
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