【2-2】 初顔合わせ 中
【第2章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16817330664586673465
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レイス一行を乗せた定期客船は、2週間の航海を終え、帝国本土最大の港・エリスにすべりこんだ。
【世界地図】 航跡の舞台 ブレギア国編
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330667919950277
彼等は、タラップをつたい下船するや、久しぶりの
すかさず、レイス中佐とレクレナ少尉は、ハーモニーをもって休憩・休息・休養を訴えていく。さながら安物のミュージカルのようであった。
船内では基礎トレーニングしか出来なかった鬱憤を晴らすかのように、ゴウラ少尉がランニングを始める。だが、同僚の合唱を前に、小走りは踊りのような表情を帯び、しまいにはダンスじみたものになっていく。
カムハル少尉は、弦楽器をもって即興でリズムを合わせる。ミュージカルは、次第に情熱に満ちていった。
エリス港の岸壁は、にわかに騒がしくなった。
それらを行き交う船客や乗組員たちが見つめ、足を止めていく。紅髪のズレた音程と蜂蜜頭のワンテンポ遅れた歌声に、ある者はあらあらと苦笑し、上着を脱ぎ捨てた筋肉だるまに、ある者はぎょっと驚きながら。
「……」
レイス隊副長・トラフ中尉が岸壁に戻って来ると、そこは大道芸会場になっていた。汽車の切符手配のため、彼女は先行して下船し、駅窓口に向かっていたのだ。
観客の輪の中心には、彼女の所属先の部隊が陣取っている。
ニール准尉は手品、ロビンソン軍曹はバック転、それにムーア曹長は指の間にナイフをダダダダ……同僚たちは思い思いの一芸を披露し、おひねりまで投げ込まれていた。
船客たちは、拍手や歓声を送っている相手が、帝国東部方面征討軍の参謀部 元メンバーであり、ヴァナヘイム国を滅ぼした頭脳集団とはよもや思うまい――。
トラフのやや細められた灰色の瞳は、いつもどおり沈着だった。
彼女は懐中から時計を出し、汽車の時間が近いことを確認するや、やれやれと軍靴を一歩踏み出す。
大道芸大会へお開きを告げたのは――主催者たる上官や後輩たちを力ずくで抑え込んだのは、もちろん女副長である。
電光石火の動きで上官の耳たぶを摘まみ上げ、同じく目に留まらぬ速さで後輩の額をデコピンで射抜く――コンサートマスターを相次いで失い、合唱隊は動きを失した。
片手で紅髪下の耳を押さえ、もう片手で崩れる蜂蜜頭を抱えながら、トラフ中尉の動きに無駄はない。踊る筋肉少尉には、重低音の利いた声で「気を付け」を命じ、その動きをたちまちにして封じてしまう。
ゴウラ封じの様子は、カムハル少尉をして、「
ちなみに、カムハルは危険予知能力がとても高い。自らに危害が及ぶ前に手早く楽器を片付けていた。
こうして、レイス一行は、女副長を先頭に粛然と岸壁から駅舎へと向かうのだった。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
第1部のレイス隊の賑やかさを思い出された方、
🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533
第1部部【1-2】 歓迎会
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700427140712472
レイスたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「初顔合わせ 下」お楽しみに。
お待たせいたしました💦レイス一行の道草食いで遅くなりましたが、ようやっとコナリイの登場です。
「長旅、ごくろうさま!」
レイスの祈りが通じたのか、コナリイ=オーラムはさわやかな金髪に水色の大きな瞳を持つ美少女に育っていた。
「これ、どーぞ」「うん、よろしくね」
コナリイの小さな手が、はじめにレイス・次いでトラフ、さらにゴウラ以下1人1人に差し出される。そこに握られていたのは、焼き菓子と瓶詰入りの紙袋であった。
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