【4-17】 帝国正規軍との殴り合いを欲す 上
【第4章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16818023213408306965
【世界地図】 航跡の舞台 ブレギア国編
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330667919950277
====================
キアン=ラヴァーダは、手にした便箋へ
帝国暦386年3月、ヴァナヘイム領へ侵攻中のブレギア軍――この夜も底冷えに沈む宰相の天幕には、カンテラが1つ灯されている。春の到来は、まだ先のようだ。
灯火の傍らには蓋の開いた通信筒――彼が読み込んでいるのは、子息からの手紙だ。
帝国陸軍の検閲を経るため、挨拶と簡単な近況程度しか記されていないが、それでも帝都に暮らす我が子からの文は、何度も読み返してしまう。
子息・ルフは二十歳を過ぎたばかりだが、帝都のオーク大学にて早くも助教の地位に就いていた。
信じがたいことに、飛び級を重ね学問を修め終えた頃には、史学と兵法学の2つにおいて、「オラヴ」の称号を得ている。
オラヴとは、「博士」や「学問の長」を意味し、その称号を有する者は多額の研究費の支給に加えて、租税のほか鉄道船舶運賃・関所通行料等すべてが免除された。軍籍に入れば、たちまち大佐相当官の地位となる。
ちなみにルフは、「最年少オラヴ」の記録を十数年ぶりに塗り替えたと、帝都をざわつかせたことでも知られていた。親のひいき目を差し引いても、海を渡った我が子は偉業を成し遂げたと言って差支えなかろう。
【9-29】 最年少オラヴ
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16817139556736868765
先日は、ブレギア国史も担当したと記されている――自分も歴史講義に登場するような年齢に至ったものか、とキアンは思わず苦笑する。
もっとも、この
***
領主連合国家体制を敷くブレギア。その頂点に立つ国主を便宜上、大国主とする。
頂点と言いながらも、大国主もいち領主であり、各領主たちのなかの最大勢力であるに過ぎない。
一方、領主たちも、各々の所領に戻ればそれぞれが
大国主は従属する小国主たちを押さえつけるだけの物量とともに、外敵から小国主たちを守るだけの力量を常に求められた。
2つの力を失ったとき、大国主はその資格を失い、滅び去る。たとえ生き延びたとしても小国主の並びに戻ることになった。
そして、大国主の座には、次に力を有した小国主がとって代わる。
ルフ=ラヴァーダによる先の講義では、「帝国式権力構造をフォラ=カーヴァルが草原に持ち込んだ」とした。
だがそれは、海の向こうの大陸と同じく、
【4-15】 銀髪の若者の自嘲――離合集散
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16818093073461720988
草原の民は、押し頂く主人が彼らにとって、己とその一族を任せるに足る人物なのか、常に品定めを続けてきた。
その判断の間違いが血族の破滅に直結するものであり、主人を見抜く眼は動物的な鋭さすら帯びていた。もはやそれは、生存本能ともいえる。
主が頼むに足らぬ人物であれば、早々に見限り新たな従属先を探さねばならない。
それが草原のほか寄る辺のない者たちの、生き残る術であった。
だからこそ、フォラ=カーヴァルは、己の気性とは真逆ともいえる「小覇王」の鎧を身に着けて、生涯戦い抜かねばならなかった。
【1-3】 小覇王――虚像と実像と
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16817330661486008861
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
舟を漕ぐコナリイへ振り下ろすモイルのハリセンをルフが止める――個人講義だったとは、さすがの名宰相・キアン=ラヴァーダも知るまい、と思われた方🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533
レオンたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「帝国正規軍との殴り合いを欲す 下」
先のブレイザ城やバルドル城攻略の折、帝国軍の背中――遠く剣を収め、旗を丸める後ろ姿――をレオンは見送るしかなかったそうだ。「戻って、我等と一戦交えよ」と、大声を出したい衝動にさいなまれながら。
目前で足を止めるや、さっさと引き揚げていく帝国軍を眺める度に、レオンとしては
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます