【3-11】 アトロン防御網
【第3章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16818023211874721575
【地図】ヴァナヘイム国 (第1部16章修正)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330656021434407
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ブレギア軍の砲撃が功を奏しないのは、ひとえに「寒さ」にあった。ウテカ=ホーンスキン以下、各隊領主の砲弾出し惜しみだけが理由ではない。
季節は冬の峠を越したものの、春まではまだ遠い。連日氷点下15度近くまで下がる外気は、ウルズの土壌深くまで凍りつかせている。
そのため、城壁の外部に設けられた分厚い土嚢・土壁にブレギアの小型砲弾が落下するも、土砂をえぐることなく弾かれてしまうのであった。
帝国軍
この老将は、昨年ヴァーガル河での敗北後、旧都へ戻る途中でウルズ城塞に立ち寄っている。その折、次のように予期していた。
勝利の余勢を駆って、ブレギア軍はこの地に押し寄せてくるだろう。攻略戦法については、同国宰相・ラヴァーダが披露した昔日のやり方――ビフレスト水道橋を占拠した上で、水の手を絶つ――を模倣してくるに違いない、と。
【地図】ヴァナヘイム・ブレギア国境 第2部
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330668554055249
そこで、アトロンは、水道橋の足下に防御網を
完成した複雑な土塁群を満足そうに見届けると、彼はノーアトゥーンへ引き揚げていった。
城門の先まで老将軍一行を見送りながら、城主・ドラル=ウルズや城塞防御指揮官・ノルフ=ビフレストは驚きを禁じ得ないでいた。
アトロンの白い口ひげをもそもそと動かす話し方やワンテンポ遅れた緩慢な動きは、いかにも敗軍の将にふさわしい野暮ったさであった。
ところが、冴えない立ち居振舞いの老軍人が、これほどの
だが、老将に対する敬意の熱量は、城塞主従の間で大きな開きがあった。
「これほどの防御網を築いていただけたのです、今度はラヴァーダ宰相不在のブレギア軍――必ず守り抜いてみせましょう」
防御指揮官の揉み上げから
「いざとなったら、またブレギアに降ればよい。草原の蛮族どもはどうせ長逗留できぬのだからな」
【3-3】 兵農未分離 上
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アトロンが構えた複雑な防御陣営に、ブレギア軍は手を焼いている。
2月27日には、レオン自らが最前線に立ち将兵を督励するも、城塞に致命傷を与えることは出来なかった。
そればかりか、城内からは予想以上の砲弾が飛来し、轟音と爆煙は騎翔隊の軍馬という軍馬を翻弄した。
ブレギア軍も布陣を整えると同時に防御陣営を設けようとしたが、鍬もシャベルも工兵たちの手をシビレさせるだけであった。
凍土は30センチ掘るのも1日がかりとなり、ブレギア将兵軍馬はほとんどが露天にその身をさらしている。
そうした好機を防御指揮官・ビフレストは見逃さなかった。土嚢の後方にいる砲兵たちに、積極的な射撃を命じたのである。
その結果、2月28日の午後などは、どちらが攻め手なのか分からないような状況も生じている。
アトロン老将は、ヴァーガル河で敗れた後、軍事顧問としての防御網構築を指導しただけではなかった。
ヴァナヘイム旧都に引き揚げる折、ウルズ城塞に砲兵と野砲30門を惜しげもなく残していったのである。
余談だが、過日リューズニル城塞で非戦闘民たちが扱った大量の小銃も、彼の置き土産である。
再掲:【地図】ヴァナヘイム・ブレギア国境 第2部
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330668554055249
【3-2】 馬糞の剣舞
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16817330662302056478
凍土を生かした守備陣や、田舎城塞には過剰な数の砲門は、ブレギア軍を散々苦しめている。
それらの采配を、城主ウルズから任されたのが、顎からもみ上げにかけて豊かな髭を持つ防御指揮官・ビフレストである。
彼は塹壕内の銃兵と土嚢裏の砲兵をよく用いて、ブレギア軍を
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
アトロン老将の置き土産は、なかなか厄介だと思われた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
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レオンたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「降将の悲哀」お楽しみに。
ブレギア軍総司令部の置かれた天幕にも寒風が吹きつけていた。ブレギア大帥旗も飛雪にはためき、濃紺の地に描かれた金色の馬も凍えている。
「……ラヴァーダは3週間だったな」
周囲からの視線を気にする様子もなく、レオンは白い息を吐いた。
「は?は……」
突然の若君のつぶやきに、宿将・ナトフランタルは、返答に詰まった。
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