【3-10】 戦費負担と空手形
【第3章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16818023211874721575
【地図】ヴァナヘイム国 (第1部16章修正)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330656021434407
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帝国暦385年2月24日、ブレギア軍8万は風雪をかいくぐり、ウルズ城塞を前に展開を終えた。
城塞というよりも、その後方にある水道橋を狙っての布陣――その表現の方が正しい。
【地図】ヴァナヘイム・ブレギア国境 第2部
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330668554055249
リューズニル城塞にくらべて標高が低く、冷え込みが和らいだとはいえ、凍てつく風は容赦なく吹きすさんだ。
城塞司令官・ドラル=ウルズは、幾重にも防御陣を構えるなど、水道橋へのルートについて守りを固めていた。
そうした備えは、ブレギア国主筆頭補佐官・ドーク=トゥレムの予想していたとおりだった。
【3-9】 水道橋
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16817330662304268874
翌早朝より、レオン=カーヴァルは総攻撃を命じた。
ウテカ=ホーンスキン以下、御親類衆は砲弾の消費を嫌がり、緩慢な射撃が続く。
しかし、それはブレギア各隊とも共通する特徴であった。ヴァーガル河の会戦以降、連戦に次ぐ連戦……否、激戦に次ぐ激戦に、ブレギア各隊とも弾薬兵馬の消耗が著しいものとなっていたのである。
総攻撃は2日間にもわたったが、ブレギア軍の騎砲は、城塞守備兵に大きな損害を与えている様子は見られなかった。
ブレギアの主力は騎兵である。火力強化を目的に騎砲が導入されたものの、軍馬で引きやすい小型で軽量な山砲が好まれた。
さらに、帝国やアンクラ王国のように硝石をはじめとする鉱物に恵まれなかったブレギアでは、火薬にいたっては輸入に頼り切りであった。
動物の糞尿を用いる
砲身も弾薬もすべて国外産という状況は、各領主の軍役をいっそう重いものにした。
領主たちは、整えるのに金銭も手間もかかる砲兵の割り当てを露骨に嫌がり、何かと理由を付けて、規定数を満たさずに参陣する者が後を絶たなかった。
また、ブレギアの主力は騎翔隊であるが、その破壊力――戦場での開花――こそ着目されるが、防御力の非力さ――戦場での落花――は見過ごされがちであった。
過日のヴァーガル河流域での完勝の折ですら、騎兵軍馬のおびただしい数の亡骸が大河に流されていったことは、各国記者に取り上げられていない。
進化の著しい銃砲火器の前に、生身の人馬を
この時代、砲弾の破片ですら
先代国主は、自身の演出のため一部防具を着けたが、騎馬民族たちは俊敏性を損なうことを嫌い、伝統の白
【1-3】 小覇王――虚像と実像と
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16817330661486008861
そうした
金のかかる大砲に消耗の激しい軍馬(馬も消耗品として扱うには、高価すぎるブレギア産なのだが)――。
程度の差はあれど、ブレギア各領主は戦場において、武功よりも勘定に意識を払わずにはいられなかった。それが露骨に見られたのが、ウテカ以下御親類衆であったに過ぎないのである。
この度の遠征で得られた土地・城塞・支城は、当初こそ国境周辺地域であったが、ブレギア軍は西へ西へと踏み込んでいった。
ヴァーガル河会戦以降に切り取った領土は、旧ヴァナヘイム領――現帝国領――真っ只なかである。
ブレギアの将軍たちの間では、それらの土地を維持することは難しいとの懸念も生じつつあった。
主力が草原へ引き揚げた後、四面楚歌となる領土や城塞では、空手形になる公算がきわめて大なのだ。そんなものを恩賞として分け与えられたとしても、戦費
それでは、加算されていくばかりの各領主の遠征費用を一体どこで補えばよいのだろうか。
射撃を躊躇するのは、ブレギア国内の地域領主として――御親類衆でなくとも――当然の反応であった。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
イーストコノート大陸最強とされるブレギア軍も、その実情は切実なのだなと思われた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
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レオンたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「アトロン防御網」お楽しみに。
完成した複雑な土塁群を満足そうに見届けると、ズフタフ=アトロン大将はノーアトゥーンへ引き揚げていった。
城門の先まで老将軍一行を見送りながら、城主・ドラル=ウルズや城塞防御指揮官・ノルフ=ビフレストは驚きを禁じ得ないでいた。
ところが、冴えない立ち居振舞いの老軍人が、これほどの
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