【1-8】 タテマエ

【第1章 登場人物】

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【世界地図】 航跡の舞台 ブレギア国編

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 草原の広がるブレギア国は、西をヴァナヘイム国、東をシイナ国と隣接している。


 東西両国と争いを繰り広げ、国土の維持・拡張を図ってきた。だが、宰相・キアン=ラヴァーダの絶妙な外交駆け引きにより、東西両国から一斉に攻め込まれることはなかった。


 この数年は、シイナ国との関係を安定させ、ヴァナヘイム国の侵攻を打ち払う状況が度々続いていた。



 ところが、帝国暦381年、帝国による圧迫の前にヴァナヘイム国が暴発。報復として帝国軍がヴァ領に侵攻する。


第1部【5-18】梟

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 巨大国家による浸食は、イーストコノート大陸諸国の関係を大いにかき乱した。


 そして、帝国暦383年5月、ヴァ国の風変わりな軍務次官が首都・ダーナを訪れるや、宰相・ラヴァーダの献言のもと、ブレギア国は30年来の方針を改めたのである。


第1部【7-12】貴婦人 上

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 ヴァナヘイム国がついえた場合、次に帝国の矛先ほこさきを突き付けられるのはブレギア国である――草原が多くを占めるこの国には、帝国正規軍と剣を交わすだけの力はなかった。


 国家としての体を成すまで、ブレギア国を育てたのはラヴァーダである。その国力を知り抜いていた彼は、騎翔隊を派遣しヴァナヘイム国をかげながら支援する方針を採用したのである。


 ヴァ国滅亡に至った場合、帝国に遺恨を残すことは避けたい――そうした事情から、あくまでも帝国軍の輸送路を分断した。


第1部【7-5】蹄の印 中

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 しかし、宰相による外交方針の転換に、臣下たちは心から服していたわけではなかった。


 彼らは、親を、兄弟を、息子をヴァナヘイムとの戦闘で失っていた。肉親のあだたる隣国を、どうして支援しなければならないのか――割り切ることができる者はそう多くはなかったのである。宰相を敬慕する宿老衆を除いて。


第1部【12-5】一羽の白い鳥 1

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 外交方針変更後、ほどなくしてフォラ=カーヴァルは身罷みまかった。


 国主没後、ブレギア国のタクトを振るったのは、その義弟・ウテカ=ホーンスキンである。


 彼は、権威を身にまとわんと旧官途ジャルグチを名乗るや、手始めに外交方針の原点回帰を図ろうとした。


「ヴァナヘイム国が帝国に併呑されようとしている。積年の恨みを晴らす機会が巡ってきたではないか」

 臣下たちの本音を、ウテカは上手くあおっていく。


「何故、親の仇のために、兵馬を傷つけているのか」

「我等も奪え、帝国に奪いつくされる前に」

 御親類衆は、臣下たちを焚きつけていった。


 その言葉は臣下たちの本音を代弁していたため、驚くほどあっさりと受け止められたのである。


 こうして、国主崩御をきっかけに、ブレギア援助のための派兵は中止となった。


 もっとも、御親類衆は、最前線に血族を送らず、身内に負傷者すら出してこなかった。彼らにとっては、臣下たちの心情など方便でしかなく、自領の拡大という狙いがすべてだった。


 ヴァナヘイム国の支援など続けていても、一寸の領土加増にもならないのだ。







【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


ラヴァーダ宰相の方針は正しいとは分かっていても、感情としては割り切れない――臣下たちの気持ちを分かっていただける方、🔖や⭐️評価をお願いいたします

👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533


ブレギア家臣団が乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「【席次】ブレギア国 国政の間」お楽しみに。


若君と補佐官衆、先代から仕える宿老衆、先代国主妃の御親類衆――3つに割れてしまった草原の国の有力者たちの様子を体感ください。

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