【1-7】 妾腹の子 下

【第1章 登場人物】

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【世界地図】 航跡の舞台 ブレギア国編

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【家系図】カーヴァル家・ホーンスキン家・オイグ家

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 レオンの隔離(帝都から草原の都・ダーナへ)と改姓(カーヴァル家からオイグ家へ)を経て、ブレギア国は分裂の危機を回避した。


 ところが、それからわずか数年後――帝国暦372年、フォラはオーラム家との政争に敗れてしまう。


【1-3】 小覇王――虚像と実像と

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 そこから端を発した内乱も、カーヴァル陣営の旗色は終始冴えなかった。ラヴァーダ指揮なす局所的な勝利は光ったものの、局面全体の不利は覆しようもなかった。


 ネムグラン=オーラムは、軍だけでなく政・財までも動かし、従う者に「利」を必ずもたらした。「義」だけのフォラ=カーヴァルの旗印には、多くの者はついてこなかった。


 カーヴァル家嫡子・クルロフは捕縛され、オーラム家長男・アルイルの短慮によって首をねられてしまう。


 フォラ自身も、海の向こう――レオンが暮らす草原へ亡命を余儀なくされたのだった。


 帝国本土を落ち延びる折、彼は愛妾・エジンとの離別を余儀なくされた。



 別れは、一時的なものになるはずだった。


 だが、2人は再会を果たすことはなかった。



 草原から大海を越えての帝国本土は、あまりにも遠かった。



 エジンは対立陣営の手に落ち、あろうことか政敵・ネムグランの慰み物となった。





 草原の国で起死回生を図るしかなくなったフォラは、ホーンスキン家にはばかり、レオンを表立って後継者に据えなかった。


 他の家臣たちと同列に扱ったばかりか、初陣の機会をなかなか与えなかったのである。


 国主正妻の御親類衆は、草原に放置されてきたを後継者と認めなかった。いつまでも「オイグ家のせがれが」と、さげすんだ。



 それは、国主崩御ほうぎょ後も続いている。


 一時こそ彼等はレオンに服したように見せかけた時期があったものの、それも長くは続いていない。


第1部【12-8】君臣師弟

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 それどころか、ホーンスキン家家長・ウテカは、国主をいいことに、野望をむき出しにしていく。


 彼は独自に「ジャルグチ」という、旧ヘールタラ政権――彼ら帝国人が渡来する前に、この地を治めてきたブレギア土着の民による合議体制――の官職名を引っぱりだすと、自らその地位に居座った。


「先の国主からの遺命である」として。


 宰相・ラヴァーダが身にまとう草原ヘールタラの民族衣装――純白の外套マントを旧時代的なものだとせせら笑っていた男が、草原の旧官途かんと名を自称したわけである。






【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


第1部から、ウテカ以下、ホーンスキン家の者たちが、レオンになかなか服従しようとしなかった事情をお分かりいただけた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします

👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533


レオンたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「タテマエ」お楽しみに。


しかし、宰相によるそうした外交方針の転換に、臣下たちは心から服していたわけではなかった。


彼らは、親を、兄弟を、息子をヴァナヘイムとの戦闘で失っていた。肉親の仇たる国をどうして支援しなければならないのか――ブイクほか老将軍たちを除き、割り切ることができる者は、そう多くはなかったのである。

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