【1-6】 妾腹の子 中

【第1章 登場人物】

https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16817330660761303801

【世界地図】 航跡の舞台 ブレギア国編

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330667919950277

【家系図】カーヴァル家・ホーンスキン家・オイグ家

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330668065428797

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 帝国暦365年5月、帝都・ブレギア領主の屋敷に、レオンは誕生した。


 しかし、敵対陣営だったオイグ家の血を引く若君である。その生誕はカーヴァル家に歓迎されなかった。


 帝都では多数のオーラム派と少数のカーヴァル派の小競り合いが続いている。オイグ家は前者にくみしていたが、後者によって滅ぼされていた。



 カーヴァル家には、クルロフという嫡男が既に存在した。


 次男は早世、三男は視覚障害によりルイド教派の僧籍に入っていたため、事実上、レオンは2人目の男児である。


 男児2人は古今東西、お家騒動の火種となる。


 血族や配下が、それぞれの男児を旗頭にして主導権イニシアティブを握ろうとするからだ。最悪の場合は共倒れ、片方が生き残ったとしても家の勢力は大いに減退する。



 フォラとその配下たちは慎重だった。長男クルロフ派と四男レオン派にカーヴァル家が割れるようなことになっては、強大な政敵オーラム家に立ち向かうどころではなくなる。


 生まれて間もなく母・エジンから引き離されたレオンは、キアン=ラヴァーダとともに大海を東へ渡った。フォラの幼馴染は、騒動を未然に防ごうとしたのである。


 こうして、新国家が生まれようとしていた草原の地で、乳母のもと乳兄弟とともに、レオンは育つことになる。


 同地の執政のため、海を渡ってくる父配下の逸材――ラヴァーダ・バンブライ等から、文武一流の教育を施されつつ。


 敵対勢力の子だからといって、逸材たちが指導に手を抜くようなことはなかった。


 金髪に大きな水色の瞳――絶世の美女たる母親の遺伝子を大きく受け継いだ愛らしさ――も、彼等の庇護欲ひごよくを刺激したのかもしれない。



 海を渡ってしばらくすると、レオンは母方のオイグ姓を名乗らされた。


 ブレギア国史に記載がないため判然としないが、かなり早い時期に改姓は行われたようだ。


 帝国歴368年の皇帝代替わりの折、各地の貴族領主から誓紙が差し出された。旧ヘールタラ領・フォラ=カーヴァルも新帝への忠誠を太陽神に誓っている。


 その起請文きしょうもんには、クルロフ=カーヴァル等兄たちに続いて、「レオン=」の姓名が見られる。


 それは、カーヴァル家御曹司としての地位を捨てさせられたことを示していた。


 レオンは長じた後、父によって滅ぼされた帝国名族――オイグ家の跡を継ぐものと内外に見なされていくのである。





【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


第1部から、ウテカ以下、ホーンスキン家の者たちが、レオンになかなか服従しようとしなかった事情が分かった方、🔖や⭐️評価をお願いいたします

👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533


レオンたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「妾腹の子 下」お楽しみに。


フォラ自身も、海の向こう――レオンが暮らす草原へ亡命を余儀なくされたのだった。


帝国本土を落ち延びる折、彼は愛妾・エジンとの離別を余儀なくされた。


別れは、一時的なものになるはずだった。

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