【1-5】 妾腹の子 上

【第1章 登場人物】

https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16817330660761303801

【世界地図】 航跡の舞台 ブレギア国編

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330667919950277

【家系図】カーヴァル家・ホーンスキン家・オイグ家

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330668065428797

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 ブレギア国では、国主・フォラ=カーヴァルの死後、その義弟・ウテカ=ホーンスキンの発言力が増した。それは、血筋・年齢・実績、何より所領規模からして自然の流れであった。


 ウテカ以下、ブランやスコローンなど、ホーンスキン本家を筆頭とする女系一族衆が、そこかしこで暗躍した。



 ウテカは、先代国主の正室――リサの実弟にあたる。


 ホーンスキン家の娘・リサを迎え入れたのは、フォラが率先してのことではない。


 帝室の血を引く貴族であり、草原の地旧ヘールタラでカーヴァル家に次ぐ規模の所領を持つホーンスキン家――その支持を得るためという、政略的な要因が大きかった。


 ウテカの先祖は隔世数代にわたり、旧ヘールタラ領主として帝都からかの地に赴任しているのだ。


 帝都でオーラム家との抗争がいよいよなりつつあるフォラにとって、カーヴァル家の所領元たる草原の地にて、ナンバー2の家柄による支えは不可欠だった。



 姉を第八皇子の室として送りこむや、ウテカとその一族は、「御親類衆」を名乗るようになる。


 リサは、嫡子・クルロフを出産後、肥立ちが悪くこの世を去った。しかし、彼女亡き後も、御親類衆は嫡子の外戚がいせきとして、権勢を振るうようになっていく。



 フォラはリサと死別後、長らく正妻を置かずにいたが、あろうことかオーラム家との抗争の過程で滅ぼしたオイグ家の娘を傍に置こうとした。


 その娘・エジンは、あまりにも美しかった。


 帝国穀倉地帯エポナの秋を彷彿とさせるブロンドに加え、帝室御用達ベリークの磁器すらかなわぬ白い肌。それでいて抱きしめでもしたら、と散ってしまいそうなもろさすらはらんでいた。


 エジンは、フォラが自らの意思で選び、愛した生涯唯一の女性だったのかもしれない。


怨敵おんてき・ネムグラン家にくみしてきたオイグ家の娘など、ねやに入れてごらんなさい。寝首をかれかねませぬぞ」


 エジンを後妻として迎え入れることに猛反発したのは、他ならぬウテカであった。


 敵対した一族の小娘などに義兄の寵愛ちょうあいが注がれることによって、ホーンスキン家の権力基盤が揺らぐことを恐れたのだろう。


 ホーンスキン家は、ブレギアの資金源であり、兵力源である。フォラも義弟の反対を押し切れず、エジンを正妻に据えることなく、側室に留めざるを得なかった。



 こうして生まれたのが、四男・レオンである。






【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


ブレギア国における御親類衆の権勢が強い理由をご理解いただけた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします

👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533


レオンたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「妾腹の子 中」お楽しみに。


男児2人は古今東西、お家騒動の火種となる。


生まれて間もなく母・エジンから引き離されたレオンは、キアン=ラヴァーダとともに大海を東へ渡った。フォラの幼馴染は、騒動を未然に防ごうとしたのである。

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