ペンネームのこと 🪶

上月くるを

ペンネームのこと 🪶





 ふざけた筆名(俳号)を名乗ると、「はぁ?」むずがゆそうな顔で訊き返される。

「じつは亡き犬の名にちなみましてね……」なるべく生真面目な口調で補足すると、さらに、いぶかり度数が増すので、相手の表情の変化のウォッチングが愉しい。🥳


 タネを明かせば、犬の名前に加え、本名の漢字の画数の多さが疎ましかったから。

 ちなみに、自分の名前に「直」がある父は、ふたりの娘に「品」「格」を付けた。

 ここまで書いて来て、ふと気づいた、ごちゃごちゃは、苗字だけだったんだね~。


 見るからに謹厳実直そうな本名に合わせて生きようとしたが、無理だった。(笑)

 その反動で、せめてペンネームは思いきり自由、なおかつ性別不詳にしたかった。

 姓に当たる漢字にも最小限の画数を選んだら、宝塚の月組🌙っぽくなった。(^-^;


 

 

       🥏




 ところで、ここでひとつ、いまさらながら、はたと分かったプライベートがある。

 どうしていままで気づかなかったのか、ご都合主義にほとほと呆れるのだが……。 


 事業を放り出した元夫にファミレスに呼び出され、緑色の行政用紙をわたされた。

 その衝撃やら屈辱やら差し迫った資金繰りやらで頭がへんになっていたのだろう。


 繊細な年頃のむすめたちの意向を訊くという最低限の配慮に思いを致すことなく、こういう経緯だから当然だよねと言わんばかりに、母親の一存で苗字を変えさせた。


 学期の途中で姓が変わることをクラスメイトや部活動の仲間にどう説明するのか、そんな大事を察してやる余裕もないほどに状況が逼迫していたと、言えば言える。


 ふたりがまったく抗わなかった事実こそ、とことん追い詰めた証しかも知れない。

 本当にいまさらだが、一生かけても償えない罪業に、うなだれるばかり……。💧



    

     🗾




 話をもどすと、かつて合併した市町村名に仮名が遣われたと知ったとき、なぜあれほど違和感を抱いたのか、自分の保守性に呆れるが、いまはむしろ、うらやましい。


 片仮名の南アルプス市が誕生したとき、うわ、大胆!! と思ったのもいまはむかし。

 順番からすると、つぎはローマ字名称だろうが、どこが先鞭をつけるか楽しみだ。




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