第4話 クロムハーツ 後編
目の前の下半身だけで立っている化け物を見て少し、やり過ぎを感じてとまどう。
崖から飛び降りた勢いそのままにキック衝撃は数トンにも及ぶのは解るが、攻撃力が高過ぎたか?
見た目どおりの雑魚か?
まぁ良いさ、初見で相手を舐めるのは、プロとして失格だからな。
「何のプロ何でしょうね?」うるせえな、そのツッコミ、まるで、あいつと話してる見たいでイラつくわ。
そう言いながら、仮面の下でニヤついてのを感じて更にイラつく。
「ヒーローのプロに決まってるだろうが?」
頭でそう呟くと、「はい、はいそうですね。」と返す。
慣れよう、あいつじゃないんだ、
俺が、そんな下らない事を考えている間に、化け物の一匹が、突然の来訪者に慌てていたが、このままでは不味いと感じたのだろうか、錆びた剣を振りかざし、俺に襲い掛かってきた。
ギリッと、鈍い火花を上げる。
錆びた剣が俺の装甲を擦った。
「カイリ圧力計測、今の敵の攻撃力から、敵総数の攻撃力を推測。」
「計測の必要も無し、ザコ。」おぃ、厳しいな。
「となると数だけか?」
「そうね、たたかうコマンドを100回お願い。」…つまり、普通に戦えと。
面倒臭いし、他に被害があると嫌だな。
「危ない、後ろだ!!」護衛の騎士の一人なのだろうか、フルフェイスの兜を被った男が
大きな声で叫ぶ。
背後から、俺の隙を奪ったと勘違いした化け物が錆びた剣で切りかかって来ていた。。
「何だと!?とか言った方が良かったのかね?」裏拳をカウンター気味に食らわせる。
化け物は、10メートル程吹き飛び、そのまま動かなくなった。
「加減も何も無いな。」所詮、その程度の敵なのだろう。
「貴方は、味方か?それとも悪魔の騎士か?」化け物達を呆気なく屠っていく異形の鎧の戦士など、味方で無ければ恐怖の対象でしか無いだろう。
「あんた達の味方かは解らない、だが、少なくても、そこの化け物達の味方ではないな。」化け物達が広がり過ぎない様に立ち位置で牽制する。
「ならば、貴殿が正義に属する者ならば、助けて欲しい。」
「ここには 守らねば、ならないお方がいる。」騎士は、何匹もの化け物をしたのだろうか?鎧と盾は傷だらけ、その剣は浅黒い血で染まっている。
俺は、皆を守る様に、前に出る。
「騎士さん良かったな、今、俺があんた達の味方である事が確定した。」
「で、では?」
「俺は正義だ、正義のヒーローだ!!」
「正義のヒーロー?」さぞ、自分で正義の味方を名乗る俺を胡散臭く思っただろう。
それでも、この
「我が名はホーリーアーク。」
「我は、闇断聖なる光。」紅きマフラーが、風に舞う。
言葉が解るとは思わないが化け物達は只今の言葉を聞き気付いたのだろう、こいつは敵だと。
俺から距離を取り、包囲しようとしている。
「カイリ質問だ。」
「了解、魔法の使い方ね?」それを聞いて、俺は思わず口調を荒げる。
「俺の思考を読む様な事は言うな!!」俺は確かに魔法の使用方法を聞こうとした。
多分、それも俺の思考の最適解を考えた上での答えなのだろう。
だが、それは俺の心を読まれている様で、あえて子供っぽく言おう。
ムカついた。
「子供ね?」うっさい、こう言うのは理屈じゃないんだ。
こうしている間にも敵を1匹2匹と屠っていく。
だが、いかんせん数は多い。
「魔法の使い方だ!!」カイリには、すまないが、拗ねたヒーローの相手をしてもらう。
「はいはい、簡単に言えば、私が解析した物質、事象を魔力で体現する。」
「それが、あなたの言う魔法的な物と言えば良いのかしら?」
「実際の使い方とは違いそうだな?」
「まぁね、でも1から勉強したってしょうがないでしょ?」勉強ねぇ。
「大体、あなたは魔法の根源である、魔力の流れは把握しているのよ。」
「魔力の、力の流れか?…あぁ、もしかしたら。」
「そう勇者の力クロムハーツよ。」
クロムハーツ、俺の体に埋め込まれた俺を改造したミスターゾディーアークさえも、把握する事が出来なかったブラックボックス、己れの感情を力にして増幅する。
そうか、以前の世界ではあり得なかった物質、魔力。
魔力=感情の力?とするなら、クロムハーツの正体は?
ミスターゾディアークの研究所から見つけ出した資料には、このクロムハーツこそが全ての始まり、これを見つけたからこそゾディアークは世界征服を考えたと書かれていた。
ここに来て、その正体が想像できる、クロムハーツとは、感情変換装置つまり魔力を増幅し力に変換する。
魔力増幅装置なのだろう。
そして、それは、この世界からもたらされた物なのだろうと。
少しずつパズルのピースが埋まっていく。
何故、前の世界でクロムハーツが見つかった?何故、俺はこの世界に来たのか?
俺がこの世界に来た事に意味があるのなら…。
「カイリ、俺は魔法を使う!!今現在、この場で使うのに相応しい力を最適解してくれ!!」
「モリキュール・コントローラー発動。」カイリの声が頭に、響く。
「アナライズ!!」
「まさか、いつも使っていた力の正体が魔力だったとはね。」
魔力を解析しコントロールする。
解析した魔力に指向性を持たせ、破壊力のある光にする。
全方位の化け物達に思考と目でロックオンする。
右手を突き出し、手の平を広げる。
くたばれザコども。
「トレーサー・レイ(追跡する光)!!」
突き出された右手から現れた幾つもの光の玉が散弾の様に弾け、その一つ一つが化け物達を襲う。
光の奔流に貫かれた何十匹もの化け物達は焼け焦げた匂いを残して一匹残らず倒れた。
「何だ…、今の魔法は…。」騎士は呆然と立ち尽くす。
周りに危険が無いのを確かめてから、ゆっくりフルフェイスのヘルメットを外した。
「おっ、お前は!?」
慌てたのは、騎士ではなくヒーローの方だった。
ヘルメットを外した男が、知っている男にそっくりだったからだ。
「大地…なのか?」
傷ついた騎士は、ヘルメットを外した後、その場で倒れた。
心に正義を、マフラーに異世界の風を。 まちゅ~@英雄属性 @machu009
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