第3話 クロムハート 前編

 体全身が光に包まれ、細胞の1つ1つが変化して行くのが解る。筋肉と骨が再構成されて行く。

 再構成?人工筋肉はどうなった。人工骨格は?

 おかしい、今までの武装化とは、違う?


 意識はそのままで、体が変化して行く。


 俺は、改造人間だ。人工骨格に、人工筋肉、そして強化皮膚に、強化臓器。そのお陰で、人外を越えた行動を取る事が出来、数週間は水だけで生きる事ができる。


 人の範疇を越えた物であり、もはや人として子孫を残す事も出来はしない。


 はずなのだか、


「電子精霊!!俺のからだに異変が見受けられる!!解析を頼む。」


 武装化を一時停止する、こんな事してる余裕は無いのに。


『了解、解析始めます。』

 何が起きている?これも、最終決戦の影響なのか?


『結果出ました。』


『体成分表 酸素65%炭素18%水素10………。ほぼ人と変わりません。』


「どういう事だ?もう以前の様に無理をする事は出来ないのか?武装はどうなっている。」流石に焦る。見知らぬ地、能力の制限、新たな敵、体の異変いや、これではまるで人間に戻ってしまった様では無いだろうか。


 人に戻る憧れ、それはとうに捨てた夢だった。

 人に戻り普通の生活をして、愛すべき人達と人として生きていく。

 それは、甘美で胸をえぐる程憧れた。


「だが、今さら、いや今では無いだろう!!」

「電子精霊!!僕の戦闘力は何%低下した?」


『了解しました。現在の戦闘力は通常フォームの60%ほどと考えられます。』


「60%…攻撃と防御時に体は持つのか?」


『マスターの3つのスキルカテゴリーの内の1つブルースキルより、インビンシブルボディlevel1がマスターの肉体の内外を強化して…。』


「ストップ!!スキル?何の事だ?」


『回答、スキル、前世界における特殊能力の様なもの。』


『マスターの所持するスキルは、大まかに4つに分類されます。』


「ブルースキル、オレンジスキル、レッドスキルそしてホワイトスキルです。」

 気にはなるが、時間はあまり無いか。

「細かくは良い、インビンシブルボディの説明を!!」


『回答、インビンシブルボディ、空気中のマナを筋力、耐久力、防御力に変換、強化します。』

『levelを上げる事により、マナ変換効率の上昇が認められ、強化の上限が上がります。』


「マナ?それは何だ?マンガや物語で聞いた事のある魔法的な何かって事か?」訳の解らない事が多発している。


 まぁ、これでもマンガ大国日本の元高校生だぞ、オタク知識的な事は多少は知っているつもりだ。


『回答、マスターの想像範囲内の物と考えて問題ありません。』


「すると、魔法的な何かがあるって言うのか?」


『この世界には、魔法が存在します。』


「マジか!?」


『マジです。』


 くっ、いまいち本気か冗談か分かりにくいAIだ。

「ならlevelは?それを上げれば、以前の様に戦えるのか?」

『恐らく以前以上を目指す事が可能です。』


「だが、訳が解らない事ばかりだ、魔法的な事なんて俺は何も知らない!!」魔法に関しては割り切った。


 伊達に正義のヒーローなんてやってない。


 だが、魔法の法則なんて何も解らない。


 解らない事に対応するのは、難しい。


『回答、その為に、私がいます。』


「フッ」


 人歴16年、改造人間歴2年、計18年の人生の中で、改造人間になって、魔法を使える様になるなんて、中々いないんじゃないかな?


 面白くなって来た。




「ならばやる事は1つだな、俺は、強くなる!!」


「サポートしろ人工精霊!!」堅苦しいな、

 名前を変えるか?


「人工精霊!!お前の名前はこれからカイリだ!!良いな!!」声がそっくりなんだ、調度良い。


『了解ですマスター、今後私の事は…。』


「カイリとお呼び下さい。」急に音声が自然な物に変わる、イントネーションと良いカイリが喋っている様だ。


 流石に、この世界に来るまでの事を思いだす。


 胸に刺さる。


「きっ、急に喋り方変えるんじゃねえよ!!」


「失礼しました、マスター」

 畜生、自分で決めておいて何だが、あまりに懐かしすぎるだろう。


「マスターの解析時に、マスターの最適解に合わせたつもりでした。」


 やっべ、あいつを思い出すなぁ。


「そんなん、最適解じゃねーよ、それを名乗りたいなら、解るだろ?カイリ!?」


「…了解よ、アルト。」


「そうだ、マスターなんて呼ぶなカイリ!!もちろん、タメ口で構わない!!」あぁ、これは俺の自己満だなぁ…。


「カイリ!!最速ルートを教えろ!!」


「了解、視覚ナビゲーションを表示、一気に行くわよ!!」


「おぅ、行くぜ!!」


 目の前に浮かんだ矢印にそって走り出す!!


「距離300、視覚に入るわ。」


 現在、俺の服装は、タンクトップの上に黒いジャケットそしてジーンズにスニーカー。


 現地人に怪しまれないだろうな?


「大丈夫よ、それくらいなら多少奇抜に見られるだけだわ。」多少ねぇ。


「さぁ、ヒーローショーの始まりだ。」


 高い崖の上、眼前には襲われている馬車、襲い来る化け物、


「なぁカイリ、俺の出番だろう!!」


「私の最適解がこう言えと告げます。」


閃光ひかりアルト、貴方にはやるべき事がある。」


「成すべき事をなさい、その力で!!」


 崖から飛び降りる。


「貴方の名は!!」


 俺は叫ぶ、何千何回と叫んできたこの言葉を。


「聖なる光が悪を断つ!!」


「ホーリーアーク!!」


 光に包まれる体、飛び降りる勢いそのままに、馬車を襲う化け物の内一体を蹴り潰す!!


 上半身を吹き飛ばされた化け物は、立ったまま絶命している。


「俺の名は、ホーリーアーク!!正義の御名において、悪を断つ!!」


 ここが何処であろうと構わない、俺は、成すべき事を成す。









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