第7話 倒せるのか

「で、どう」

 マーガが聞いて来る。一週間ぶりの彼女だった。

 ああ、かわいい。

 と、思えるのは、やっぱり、向こうの世界に還ってすぐには、マーガにたいしてイライラしていたけど、日がたつと落ち着いてきて、で、こうして一週間ぶりに会うから、少し、マーガも顔を忘れてて、で、また会うと、ああ、記憶していたより、かわいいなあ、とか思ってしまう。

 写真より、いいし。

 なんか、リセットの呪いだ。

 それはそれとして。

「どうって」

「破壊蜘蛛、やつける方法」

 ぐい、っと笑顔を寄せてくる。

 こっちは黙ってみてやった。笑顔と、むすっと、した顔のにらめっこをしばらくした。

「みかん」

 と、オレはいった。

「みかん」

 と、マーガはいった。

 オレは近くの木に実っている、みかんの実みたいなものを指さした。

「柑橘類の汁を、蜘蛛は嫌がるんだって」

 マーガもみかんの実みたいなものを見た。

 それから、ふたりで、みかんの実みたいなのをもぎって集めて、しぼった。マーガの持っていた水漏れしない袋に入れてゆく。その中に、みかんのジュースみたいな液体が溜まってゆく。

 マーガから「これで倒せるのか」と、きかれた。

 ノーコメントにしておいた。そんなこと、わかるはずもない。

「しぼって、破壊蜘蛛にかけると、やつけられるのか」

 答えないでおいた。ただ、みかんをしぼってながす。

 しぼって、しぼって、もくもくとしぼって。

 で、それがマズかった。ずっと、同じ場所でそれをやっていたので、気がついたとき、あの破壊蜘蛛が、近くの木の上にいた。

 まあ、一か所ずっといたら、まあ、見つかるさ。

 現れた破壊蜘蛛は、口を大きくあけた。その口からは、なにか、ねばねばしたものが、糸をひいている。

 オレは声なき声で、悲鳴をあげた。マーガもあげた。

 で、ふたりして手近にあった、みかんの実を、ぽいぽい、投げまくった。

 すると、そのうちのひとつが、蜘蛛の口の中に入った。かなり、いいポイントで入ったみたいで、喉につまったのか、それとも柑橘類の効果なのか、苦しみだし、地面へ落ちた。からだも大きいし、重かったし、あと、下に丁度、石もあって、そこに急所でもぶつけたのか、蜘蛛はそのまま動かなくなる。

 そして、しばらく、すると、くもは、ジュワジュワと、煙をあげて、消えていった。あとには、謎のアワだけが残った。

 こうして、何の手柄なのかわからないまま、謎の勝利を、オレたちは手に入れた。

 そして、マーガがこっちを向いていった。

「けっか、ありがとう」

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それは、あの瞬間のまま サカモト @gen-kaku

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