第23.2話 煌きの子 後編
遠の弟の煌に会うために、深海家に来た蒼穹達。しかし大人達は買い物に行くと称してゲーセンに行った。私が保護者として残り、煌の面倒を見る事になったのであった。
「これが煌くん……」
「かわいいね」
煌を見つめる蒼穹とキニップ。すると……
「う〜〜〜〜〜……」
何やら不機嫌そうな素振りを見せた。
「あれ?どうしたの?」
「もしかして私達を見てびっくりした?」
「どうやら喉が乾いてるみたいだな。我に任せよ」
そう言うと遠は棚から粉ミルクを取り出し調合し、慣れた手つきで煌に飲ませてあげた。
「う〜〜」
煌は落ち着いたようだ。感心する蒼穹とキニップ。
「すごいね、遠くん」
「上手に飲ませたね」
「煌はまだまだ母乳やミルクしか口に出来ない。母が忙しい時は我が調合したミルクを飲ませている。我も弟が生まれた後に備えて、乳児の育て方を勉強していた。」
「勉強熱心で良いではないか。後で翡翠に蒼穹はどんなふうに育てたかを改めて聞いておかなければな。」
感心する私を前に、ミルクを飲んだ煌は気持ちよく眠った。
「なんか子守唄歌っていい?」
「変な歌とかは聞かせるなよ。赤ちゃんは思ってる以上にデリケートだ」
「だって、キニィちゃん、また今度にしよう」
ちょっと残念そうなキニップを宥める蒼穹。
「もう少ししたら翡翠達が帰って来るだろう。煌は私が見てあげるよ」
「求殿、感謝する。では蒼穹とキニップには少しだけ我が話を聞いてもらおうではないか」
「うん、いいよ」
「どんな話かな!」
遠と蒼穹とキニップは煌から離れると、遠は二人に転校する前の話をしたのであった。
* * * * * * *
我は3歳頃から、何かと目立ちたがってた。
物心ついた時から、父の形振りを見て育ち、何かと派手な行動を好み、周りの注目を集めたがる性格だった。両親も当時なかなか手を焼いていたという。
幼稚園に通う事になってからも、その性格は変わらなかった。とにかく目立ちたい一心で、周りの子供とは違う事をして皆と合わせる事が出来ず、大人からは異端児呼ばわりされた。
それでも我は、己のやり方を変えたくなかった。小学校に入学してからもそのやり方は変わらなかった。
一年生の時は特に大きな問題が起こる事は無かったが、二年生の夏休み明けに事件は起きた。
我はある生徒と考えの違いから取っ組み合いの喧嘩になってしまったのだ。その様子はとてもじゃないが語りたくない。お互いの両親の理解もあってひとまずのケリは着いたが、我だけは転校を余儀なくされた。
転校先が、蒼穹達のいる学校だった。引っ越し数日後にこの街でモルック大会を見学し、優勝チームにいた蒼穹とキニップに我は心を奪われた。
そして我は今の学校に転校した。我はそこでも周りとは違うアピールをしようとしたのだが、かつての記憶が
翌年に煌が生まれた時も、我ら家族は蒼穹とキニップに救われる事となった。父が昔翡翠に迷惑をかけて翔多に蹴られた事もこの出会いが無かったら知る事も無く、一生解決する事は無かったかもしれない。
我は眼光症では無いものの、周りとは違うタイプの人間である事は確かだ。だからこそ、我は蒼穹達の目線で世の中を見据え、将来は世界を動かす大人になろうと思っている。
心の中の『俺』に恥じないためにもな。
* * * * * * *
蒼穹とキニップは、遠の話を聞き終えた。
「そうだったんだ」
「大変だったね」
「今はもう、お前達のような理解者もいて煌のためにも頑張れるようになった。改めて感謝の意を表す。ありがとう」
ガチャ
ドアの開く音。翡翠達が戻ってきた。
「ただいまー!」
「おお!父よ、母よ、戻ったか!」
買い物の荷物を下ろして支度を整えた後、翡翠達は深海家を出発する事にした。
「今度は煌がもう少し大きくなったらまたここに招待するとしよう」
「ミドリィ、またゲームしような!」
「今日は楽しかったです」
「こーうー……」
「本日はありがとうございました」
「また遊びに来るぜ」
「遠君も煌君も仲良くね」
「おとーさんのサンドイッチ食べようね!」
「有意義なデータが取れた。また来るよ」
翡翠達は家族の車で仔山村へ帰り、私は聖流の車で研究所に帰ったのであった。
「煌よ、将来は蒼穹やキニップのような素晴らしい人になるのだぞ」
「こーうー……ううー……」
* * * * * * *
以上が、深海家に遊びに来たときの話だ。大人達は仲直りの記念にまた遊べたし、子供達はお互いの友情を深め合う事が出来た。私としても、新たなる生命をじっくり見れてとても素晴らしい一日となった。
さて、次にお話するのは……また、あおぞらきのみ達に何かがあれば話そうと思う。それがいつになるのかは、わりとすぐかもしれないし、だいぶ後の事かもしれない。
その時はまた、この研究室に来てくれ。私も君に色々お話するのが楽しいからね。
では、また会おう。
本編第24話へ続く。
君が研究室を去った後、私は机から一冊の本を取り出した。
「今日もどこかで、新たな物語は作られる。今私が持っているこの本からも、きっと素晴らしい物語が始まる事だろう……!」
私が本を開くと、そこには青い翼を広げて、氷の結晶を散らしながら大空を飛ぶドラゴンの絵が描かれていた……!
あおぞらきのみ~APPEND EPISODE~ 早苗月 令舞 @SANAEZUKI_RAVE
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