第23.1話 煌きの子 前編

 やあ、君か。また来てくれて嬉しいよ。今にして思えば、君には沢山の事をお話してきたよね。


 今日お話するのは、2021年5月の出来事だ。つまり本編23話のその後の話となる。ここまで見てくれた君なら、この先のお話も楽しんでくれると思うよ。


 では、語ろう。


   * * * * * * *


 2021年5月4日。深海遠8歳、深海煌0歳1ヶ月の春。


 仔山村では朝から、翡翠と翔多と蒼穹とキニップが車に乗って都会へ出発する準備をしていた。


「今日は皆で遠の家に遊びに行きましょう」

「うん、遠くんの弟にも会えるんだよね」

「私も楽しみだよ!」

「そうだな!それに俺からも色々あるしな」


 翡翠の車は家族と友達を乗せて仔山村を出発した。


   * * * * * * *


 都会にある、遠の家。翡翠が車を止めると、そこには私、求がいた。


「あ、求ちゃん」

「私もその後の経過を見るために来たよ。聖流君は夕方迎えに来るからね」


 私も研究所から聖流の車でここに来ていた。事前に翡翠と深海家と打ち合わせした上で。


「それじゃあ、入ろうか」


 求はインターホンを押した。


ピンポーン


「私だ。お邪魔するよ」

「おお、来てくれたか、盟友達よ」

「またお邪魔しまーす」

「今日もよろしくね!」


 翡翠達は深海家に立ち入った。玄関で遠が出迎えてくれた。遠の案内で居間へと入る。


 居間では遠の両親が茶菓子を用意していた。母の腕には、先日生まれた煌が抱かれていた。


「手厚い歓迎、感謝いたします」


 翡翠が挨拶すると、遠も挨拶した。


「良く来た、我が深海家長男、遠だ」

「改めまして、遠の父の岳志たけしです」

「母の、光葉みつよです」

「こーうー……」

「ここに居られるのか深海家次男、煌だ」


 深海家は一人ずつ自己紹介をした。母の光葉の腕の中で、煌の瞳は黄色く輝いている。


「こちらも改めて自己紹介しよう。私が眼光症研究者、白部求だ」

「僕は美山蒼穹」

「私はキニップ・ベリーニ!」

「蒼穹の母の翡翠です」

「父の翔多だ」


 求達も自己紹介する。先日は色々余裕が無かったため、今回改めての自己紹介となる。


「さて、今日は我が弟、煌がこの世に降り立ち、丁度一ヶ月の記念日だ。盛大に楽しもうぞ!」


 美山家とお友達と深海家はしばらく楽しい一時を過ごしていた。


「これが我の勝利の札!!!」

「あ、ジョーカー引いちゃったね」

「ドンマイだよ!」


 子供達はカードゲームを楽しんで。


「あの時の蹴りのおかげで、俺……目が醒めました!!!」

「俺からも、あの時はやり過ぎたと思ってる。本当に、すまなかったな、岳志」

「これで本当に私達は友達同士ね。過去のわだかまりが丸く収まって良かった」

「他につるんでた奴はあの後もう会ってない。アイツラも真面目に過ごしてればいいけどな」


 大人達は過去を謝罪し合っていた。


 お昼ご飯は宅配したもので済ませると、大人達は出かける準備を始めた。


「それじゃあ私達はちょっとお買い物するので、お留守番をよろしくね」

「ああ、保護者として私が守ってみせるよ」

「お母さん達、どこ行くの?」

「みんなで、色々してくる。なるべく早く帰ってくるからね」

「それまでは煌の事を頼んだぞ」


 翡翠と翔多と岳志と光葉は翡翠の運転する車でどこかへと出発した。


 家には蒼穹とキニップと遠と煌、そして保護者として私がお留守番となった。


「みんなが帰って来るまで、煌の面倒は私達で見る事にしよう。出来るかな?」

「うむ!我が煌を守ってみせる!」

「僕も、手伝うよ」

「煌ってどんな子かな!」


「こーうー……」


 こうして、子供達と保護者により煌を見守る事になったのであった。一体何が起こるのだろうか……




……一方、翡翠達はというと……


「やっ!はあっ!!!」

「ウオオっ!ミドリィやっぱり強え!時が経ってもこの感じは色褪せねえ!!!」


 翡翠達は、あの時のゲーセンで楽しくゲームをしていた。翡翠の行きつけだったゲーセンは

今も同じ場所で営業している。事前に電話で打ち合わせをして私を保護者として留守番させる事で実現出来たという。


「あんなに楽しそうな岳志、久々に見る」

「こうしてまた、笑顔で遊べてお互い嬉しそうだな!」


 翔多と光葉も、仲良くゲームする二人を見て、清々しい笑顔を浮かべるのであった。


 後編へ続く。

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