最終話 異世界の民主主義って何だ!?

 ある朝、リッケンミー3世が居室で豪華な朝食を口にしていると近衛騎士団長が駆け込んできた。


「王様、宮廷前に多数の人民が集まって何やら騒いでいます!」

「それは大変だな。とりあえず迷惑行為を取り締まるのだ」

「それが、人民を指揮しているのは勇者オキタなのです」

「何だと!?」


 王が慌ててバルコニーに出ると、視界の向こうでは亜人に拡声魔法を唱えさせつつ沖田が演説を行っていた。


「ドクーサ氏を中心とする改革派の貴族により王国議会議員が選挙で選ばれるようになった今、この国の民主主義は成熟しつつあります。ついては王政を完全に廃止し、我々は立憲君主制という幼稚な政治体制からの脱却を図るべきです。余計な争いを生む前にリッケンミー3世には王位と特権を捨て、一人の貴族となることを提案します」


「戦争を終わらせた立役者とはいえ、わしに王位を捨てよとは許しがたい話だ。今すぐ騎士団を向かわせ、あの男を捕らえるのだ」

「それが憲法改正により王様の権限は大幅に制限されておりまして、今では王国議会の許可がなければ自由に騎士団を動かすこともできません。王位を捨てずに済むためには王国議会の発議により国民投票が行われた結果、国民の過半数が王政を支持すればよいのですが」

「そ、そんな……」


 それからリッケンミー3世は国民からの支持を得られる君主になるよう努め、贅沢三昧の生活を改めたことで結果的に立憲君主制は維持されることとなった。




 戦争が終わり、ダモクレス王国に健全な立憲君主制が根付いたことで勇者オキタの仕事はなくなった。


 そのはずだったのだが……



「王国議会が成立させようとしている特定魔術禁止法は政府にとって都合の悪い魔術を国民の手から奪おうとするものです。我々は民主主義を守るべく、このような暴挙を阻止します!」


 勇者オキタは今日も今日とて王国議会の前に人を集めてデモを行っていた。


 この世界がどのような政治体制になろうとも、「民主主義」を追求する彼の戦いが終わることはないのかも知れない。



 (完)

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異世界の民主主義って何だ!? 輪島ライ @Blacken

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